労働問題682 管理監督者に対する労働時間の自由裁量は必須か・勤怠管理の実務と懲戒処分【会社側弁護士が解説】

この記事の結論
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「規制になじまない」は出退勤完全自由を意味しない。管理監督者も労働者

通達(昭和22年基発17号・昭和63年基発150号)の「労働時間等の規制になじまない」は、厳格な時間管理が業務の性質上なじまないという趣旨であり、出退勤の時間が完全に自由であることを意味しません。管理監督者も労基法が適用される労働者です。

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著しく不良な勤怠への懲戒は可能。遅刻等の賃金カットは避けるべき

管理監督者の著しく不良な勤怠に対しては注意・指導・懲戒処分が可能ですが、遅刻等を理由とした賃金カット(時間給控除)は管理監督者性を否定する要素となり得るため避けるべきです。

01管理監督者に対する労働時間規制の考え方

 労基法41条2号に定める「管理監督者」については、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用が除外されます。そのため、「管理監督者は何時に出勤・退社しても自由である」と誤解されることがありますが、これは正確ではありません。

 管理監督者に関する基本通達(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)は、「労働時間等の規制になじまない」と表現しているにとどまります。この「規制になじまない」とは、厳格な時間管理をすることが業務の性質上なじまないという趣旨であり、出退勤の時間が完全に自由であることを意味するわけではないと考えるべきです。

 管理監督者も労基法が適用される「労働者」であることに変わりはありません。フレックスタイム制のフレキシブルタイムの範囲内でなければ、出社時刻も退社時刻も完全に自由な労働者というのは、労基法上存在しないと考えるべきです。

通達の「労働時間等の規制になじまない」≠「出退勤は完全自由」

02管理監督者と取締役の違い

 管理監督者と取締役(会社法上の役員)を混同することは誤りです。純然たる取締役は、会社と委任関係にあり、毎日出勤することが予定されておらず、労働時間に関する拘束は基本的にありません。

 これに対して管理監督者は、あくまでも労基法上の「労働者」であり、雇用契約に基づいて使用者の指揮命令下に置かれています。したがって、管理監督者についても、業務上の必要から出退勤の時間帯に一定の制約が生じることは当然であり、取締役と同等の完全な自由は認められません。

03勤怠管理と懲戒処分の可否

 例えば、始業時刻9時・終業時刻18時の会社において、管理監督者が毎朝11時に出勤し、毎日16時に退社するという状況が常態化している場合はどうでしょうか。

 管理監督者であっても、勤怠が著しく不良であれば、使用者はこれを問題とし、注意・指導を行うことができます。それでも改善が見られない場合には、懲戒処分(戒告・減給・降格等)を検討することも選択肢となります。

 ただし、管理監督者の遅刻・早退を理由に「賃金カット(時給控除)を行うこと」については、管理監督者性を否定する方向の要素(平成20年4月1日通達)となり得るため、慎重な対応が求められます。

・著しく不良な勤怠に対しては、注意・指導・懲戒処分は可能
・遅刻等に対する賃金カット(時給控除)は管理監督者性を否定する要素となり得る
・降格・降職は、本人が管理監督者の地位を失う結果、残業代支払義務が生じる点に注意

04実務における管理監督者の勤怠管理のポイント

✔ 就業規則において、管理監督者に対する勤怠管理・注意指導の根拠規定を整備する
✔ 管理監督者であっても出退勤記録(タイムレコード等)を取ることは法的に否定されない(健康管理・深夜割増賃金把握のためにも必要)
✔ 著しく不良な勤怠に対しては、まず口頭注意→書面注意→懲戒処分の順で段階的に対応する
✔ 遅刻・早退を理由とした賃金カット(時間給控除)は避ける(管理監督者性否定の要素となるため)
✔ 深夜労働の実態把握は、深夜割増賃金の支払義務のために別途行う必要がある
経営上のポイント 管理監督者の「労働時間等の規制になじまない」は出退勤の完全自由を意味しません。著しく不良な勤怠には懲戒処分が可能ですが、遅刻等の賃金カットは管理監督者性を否定する要素となります。管理監督者であっても深夜割増賃金の把握・支払いと安全配慮義務(健康管理)のために出退勤記録の取得が必要です。管理監督者制度の適切な運用について弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。就業規則・変形労働時間制の導入・整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 管理監督者には出退勤の時間を自由にする義務がありますか。

A. 法律上、管理監督者に対して出退勤の時間を完全に自由にしなければならないという義務はありません。ただし、管理監督者として認定されるためには、出退勤時間に一定の自由度が認められていることが要素のひとつとなります。完全な時間管理を行い、一般従業員と全く同様の出退勤管理をしている場合には、管理監督者性が否定される一因となることがあります。

Q2. 管理監督者が毎日11時出勤・16時退社を繰り返している場合、懲戒処分はできますか。

A. 可能と考えられます。管理監督者であっても、勤怠が著しく不良であり業務に支障が生じている場合には、使用者は注意・指導を行い、改善がなければ就業規則に基づく懲戒処分を検討できます。ただし、遅刻等を理由とした時給控除等の賃金カットは避けた方が無難です(管理監督者性を否定する方向の要素となる可能性があるため)。

Q3. 管理監督者の出退勤記録を取る必要はありますか。

A. 法律上否定されるものではなく、実務上は取ることをお勧めします。深夜割増賃金の支払義務(労基法37条4項)は管理監督者にも及ぶため、深夜労働の有無を把握するために出退勤記録は必要です。また、健康管理(安全配慮義務)の観点からも、労働時間の実態把握は重要です。

Q4. 管理監督者を降格・降職させた場合、残業代の問題は生じますか。

A. 降格・降職により管理監督者の地位を失った場合、その時点以降は一般労働者として労働時間規制が適用されることになります。降格後は時間外・深夜・休日労働に対する割増賃金の支払義務が生じますので、降格後の賃金体系・業務内容・労働時間管理の見直しが必要です。降格前後の処遇設計について不安がある場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年3月1日

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