労働問題668 事業場外労働のみなし時間制を採用している事業所において、事業場外で労働する労働者が、みなし規定の適用に反対し、自分で計算した時間を労働時間として認めてほしいと言ってきました。使用者は応じなければなりませんか?
1. 定義
事業場外労働のみなし時間制(労基法38条の2)とは、常態的な事業場外労働や出張などの臨時的な事業場外労働に労働者が従事する場合、使用者の具体的な指揮命令が及ばず、労働時間の把握が困難となることが多いため、所定労働時間または当該業務の遂行に必要とされる時間労働したものとみなす制度です。
2. 労働者の意見への対応
事業場外労働のみなし時間制を採用している事業所で、労働者が、「自分は細かいメモや報告書を作成して労働時間を申告したい」「自分はみなし規定には反対なので、一般労働者と同様に実労働時間をもって計算してほしい」等と言ってきた場合、使用者は応じる必要があるかが問題になります。
3. 国会での議論
国会では、「時間算定をやるということになりました場合、どうしても自分は嫌だ、自分で算定した労働時間を申告することが許されてしかるべきだと思ってもどうしてもそうしたいという人は、することができますか。」との質問に対し、労働省の審議官は「事業場外労働の場合には絶対的に算定できないわけでございますので、嫌だと、こう言われましても、算定できない以上はみなし労働時間制ということになると思います。」と答弁しています。
4. 適用の解釈
その業務が事業場外労働で、労働時間が算定できない業務の遂行に該当する場合には、労働者がみなし規定の適用に反対したとしても、労働時間の計算方法としてみなし労働時間制度適用になると解されます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
勤務弁護士作成