労働問題663 事業場外労働のみなし労働時間制を適用するにあたっての注意点を教えてください。
事業場外労働のみなし労働時間制を適用したとしても、時間外・休日・深夜に労働させれば、時間外・休日・深夜割増賃金(残業代)の支払が必要なことに変わりありません。
所定労働時間内に事業場外労働が終わらない場合は、当該業務の遂行に通常必要とされる時間(例えば10時間といった時間)労働したものとみなされ、使用者には、みなされた労働時間に基づき算定された時間外割増賃金(残業代)を支払う義務が生じます。
つまり、所定労働時間内に事業場外労働が終わらず、1日8時間を超えて労働することが必要となるケースでは、事業場外労働のみなし労働時間制を適用できても適用できなくても、時間外割増賃金(残業代)を支払わなければなりませんので、事業場外労働のみなし労働時間制を適用するだけでは残業代請求対策として不十分であり、何らかの形で時間外割増賃金(残業代)を支払済みにしておく必要があります。
後になってからみなし労働時間を争われて残業代請求を受けないようにするためには、労働者代表等との間で実態に合致したみなし労働時間が何時間なのかを協議し、協議結果に基づいてみなし労働時間に関する労使協定を締結し、みなし労働時間を確定しておく必要があります。
また、時間外・休日・深夜割増賃金(残業代)を支払済みにしておく方法としては、定額(固定)残業代制度の利用も有効ですが、制度設計や実際の運用を誤ると時間外・休日・深夜割増賃金(残業代)の支払として認められなくなる可能性があります。
したがって、みなし労働時間に基づき計算された時間外割増賃金を支払済みにしておけば、万が一、事業場外労働のみなし労働時間制の適用が否定された場合であっても、使用者が追加で支払わなければならない時間外割増賃金(残業代)の金額を抑制することができます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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