労働問題627 所定労働時間7時間30分で、固定給と歩合給両方を支払っている場合の残業代はどのように計算すればいいですか?

 就業規則上の所定労働時間が7時間30分の企業において、7時間30分を超えて残業させた場合、8時間までの30分間は法内時間外労働となり、8時間を超えた部分は法定時間外労働となります。
 法定時間外労働は、労基法37条1項において、一定の割増率以上の割増賃金(残業代)を支払わなければならないとされています。
 法内時間外労働については、労基法では特段の定めを設けていないため、法定時間外労働と同様の割増賃金(残業代)を支払う必要はなく、就業規則や個別合意で定めた賃金を払えば足りるとされています。もっとも、「労働契約は労働者の労務提供と使用者の賃金支払に基礎を置く有償双務契約であり、労働と賃金の対価関係は労働契約の本質的部分を構成しているというべきであるから、労働契約の合理的解釈としては、労基法上の労働時間に該当すれば、通常は労働契約上の賃金支払の対象となる時間としているものと解するのが相当である」(大星ビル管理事件最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決)と考えるのが一般的ですから、法内残業時間の賃金額について何の定めもないからといって、直ちに賃金を支払わなくていいことにはなりません。

 固定給と歩合給(出来高払)の両方がある場合、固定給部分の計算と歩合給部分の計算を別々に行います。
 固定給の場合、時間外労働分の時間単価は固定給に含まれていないため、時間単価に相当する部分も支払う必要があり、時間外労働をさせた場合、通常の労働時間の時間単価に1.25を掛けて時間外労働の賃金の時間単価を算出していました。
 これに対して、歩合給の場合は、時間を延長したことによって成果が上がっているという面があり、時間単価に相当する部分は既に歩合給に含まれていると考えられることから、支払うべき割増賃金(残業代)は、時間単価の125%ではなく、25%で足りるとされています。
 所定労働時間7時間30分で、固定給、歩合給両方を支払っている場合の残業代の計算例は、次のとおりです。

1 企業、労働者の労働状況の確認
企業A社
 ① 1日の所定労働時間:7時間30分
 ② 所定休日:土、日、祝日、年末年始12月28日~1月5日、夏季休暇6日
 ③ 就業規則上の法内時間外労働の賃金の定め:基本給の通常の労働時間の賃金を支払う
労働者B氏
 ① 当月の賃金:基本給25万円、歩合給5万円
 ② 当月の総労働時間数:208時間
 ③ 当月の残業時間:法内時間外労働数10時間、時間外労働時間数25時間、休日労働時間数15時間、深夜(午後10時~午前5時)労働時間数6時間

2 月によって定められた賃金の時間単価(小数点以下四捨五入)
 ① 通常の労働時間の賃金の時間単価
  年間所定労働日数=365日-休日135日=230日
  年間の所定労働時間数=1日の所定労働時間7時間30分×230日=1725時間
  1月平均所定労働時間数=1725時間÷12か月=143.75時間
  通常の労働時間の賃金の時間単価=月給25万円÷143.75時間≒1739円/時
 ② 時間外労働の時間単価=1739円/時×1.25≒2174円/時
 ③ 休日労働の時間単価=1739円/時×1.35≒2348円/時
 ④ 深夜労働の時間単価=1739円/時×0.25≒435円/時

3 出来高払い制によって定められた賃金の時間単価(小数点以下四捨五入)
 ① 通常の労働時間の賃金の時間単価=歩合給5万円÷総労働時間数208時間≒240円/時
 ② 時間外労働の時間単価=240円/時×0.25=60円/時
 ③ 休日労働の時間単価=240円/時×0.35=84円/時
 ④ 深夜労働の時間単価=240円/時×0.25=60円/時

4 残業代単価
 ① 法内時間外労働の時間単価=1739円/時
 ② 時間外労働の時間単価=2174円/時+60円/時=2234円/時
 ③ 休日労働の時間単価=2348円/時+84円/時=2432円/時
 ④ 深夜労働の時間単価=435円/時+60円/時=495円/時

5 法内時間外労働、法定時間外労働の賃金
 ① 法内時間外賃金=1739円/時×10時間=1万7390円
 ② 時間外割増賃金=2234円/時×25時間=5万5850円
 ③ 休日割増賃金=2432円/時×15時間=3万6480円
 ④ 深夜外割増賃金=495円/時×6時間=2970円

6 当月の残業代
 B氏の当月の残業代=1万7390円+5万5850円+3万6480円+2970円=11万2690円

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