労働問題619 労働時間等設定改善委員会とは?メリットと設置要件・労使協定代替の注意点を弁護士が解説
|
1
|
5分の4以上の決議で労使協定に代わる効力が認められる 労働時間等設定改善委員会(労時法6条)は、委員の5分の4以上の多数による決議がなされた場合、変形労働時間制・裁量労働制・36協定等の労使協定に代わる効力が認められます。 |
|
2
|
委員構成・議事録・運営規程の整備が有効性の前提 有効な委員会として認められるには、委員の半数を適法に選出された過半数代表者等の推薦で指名し、議事録を3年間保存し、運営規程を整備することが必要です。 |
|
3
|
36協定(時間外・休日労働)の届出義務は免除されない 委員会決議で代替した場合でも、時間外・休日労働(36協定)についての行政官庁への届出義務は残ります。変形労働時間制・裁量労働制等は届出が免除されるものもあります。 |
目次
01労働時間等設定改善委員会とは(法的根拠・設置単位)
労働時間等設定改善委員会とは、企業における労働時間等の定め方を、労働者の健康や生活に配慮しつつ多様な働き方に対応したものへと改善していくために設けられる労使協議機関です。法的根拠は、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)6条にあります。
同法は、事業主に対して直ちに委員会設置を義務付けるものではなく「努力義務」としています。しかし、後述するとおり、一定の要件を満たした委員会は労使協定に代わる効力を持ち得るため、実務上大きな意義を持ちます。
委員会は、全社で一つ設置することも事業場ごとに設置することも可能です。業種・勤務形態が事業場ごとに大きく異なる企業では各事業場単位での設置が、制度設計を本社主導で統一する企業では全社横断型が合理的な場合があります。
02労使協定に代わる効力と5分の4要件
本委員会の最大の実務的意義は、法定要件を満たした場合に、労基法上の労使協定に代わる効力が認められる点にあります(労時法7条)。
委員の5分の4以上の多数による決議がなされた場合、次のような労働時間制度について労使協定に代替することができます。
5分の4以上の決議で代替できる主な制度
・1か月単位・1年単位・1週間単位の各変形労働時間制
・フレックスタイム制
・時間外・休日労働(36協定)
・事業場外みなし労働時間制
・専門業務型裁量労働制
・時間単位年休・計画年休 など
もっとも、この代替効は無条件に認められるものではありません。委員構成、議事録作成、運営規程の整備など厳格な要件を満たしていなければなりません。また、制度によって届出義務の有無が異なります(後述)。
03有効な委員会と認められるための要件
労使協定に代わる効力が認められるためには、次の3つの要件を満たす必要があります(労時法7条)。
有効な委員会に必要な3要件
① 委員構成の適法性
委員の半数は、過半数労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づいて指名されなければなりません。会社側が労働者側委員を直接指名することは許されません。
② 議事録の作成・3年間の保存
開催の都度、議事録を作成し、3年間保存していなければなりません。議事録がない場合、後に決議の有効性を立証することが困難になります。
③ 運営規程の整備
委員の任期・招集方法・定足数・議事手続等を定めた運営規程を整備しておく必要があります。形式的な設置だけでは足りず、制度としての実体が求められます。
特に①の委員選出については、過半数代表者(617番参照)の選出手続と同様の厳格な要件が問われます。会社側が候補者を実質的に指名したり、管理監督者を労働者側委員にしたりすることは、委員会決議全体を無効とするリスクがあります。
04行政官庁への届出義務との関係
委員会の決議が労使協定に代替する場合でも、すべての制度について届出義務が免除されるわけではありません。「委員会決議=すべて届出不要」と誤解すると、制度が無効と評価される重大なリスクがあります。
| 制度 | 届出義務 |
|---|---|
| 時間外・休日労働(36協定の代替決議) | 残る(届出必要) |
| 1年単位の変形労働時間制 | 免除(届出不要) |
| 専門業務型裁量労働制 | 免除(届出不要) |
| 事業場外みなし労働時間制 | 免除(届出不要) |
時間外・休日労働に関する委員会決議については、委員会決議があっても所轄労働基準監督署長への届出義務は免除されません。届出を怠れば、制度の適法性が否定されるだけでなく、行政指導や是正勧告の対象となる可能性があります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 努力義務であれば、無理に設置する必要はないでしょうか。
A. 法律上の義務ではありませんが、変形労働時間制や裁量労働制など複数の制度を導入している企業にとっては、毎年の労使協定締結の手間を省き、労使コミュニケーションを一本化できるため活用のメリットが大きいです。ただし、委員構成等の要件に不備があると決議が無効となり、未払残業代問題に発展するリスクもあります。活用を検討する場合は、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
Q2. 委員会で決議すれば、36協定の届出も不要になりますか。
A. いいえ。36協定(時間外・休日労働)については、委員会決議があっても労働基準監督署への届出が必要です。一方、専門業務型裁量労働制や1年単位の変形労働時間制など、一部の制度については届出が免除されます。制度ごとに届出の要否を確認してください。
Q3. 経営者側が労働者側委員を指名してもよいですか。
A. 絶対に避けてください。労働者側委員は、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の推薦に基づいて指名されなければなりません。会社が実質的に指名した委員による決議は法的に無効とされるリスクが極めて高く、導入した労働時間制度全体の有効性に関わります。過半数代表者の適法な選出(617番参照)と同様の慎重な対応が必要です。
最終更新日:2026年3月1日