Q506 会社の機密情報を持ち出した元従業員に対する損害賠償請求訴訟において,訴訟準備に時間を費やしたために他の仕事ができなかったことによる損害について請求することはできますか。

 会社の機密情報を持ち出した元従業員に対する損害賠償請求訴訟において,機密情報の持ち出しが違法と判断された場合,機密情報の持ち出しと相当因果関係のある損害については請求することができます。
 もっとも,訴訟準備に時間を費やしたために他の仕事ができなかったことによる損害が機密情報の持ち出しと相当因果関係のある損害であることを主張立証することは必ずしも容易ではありません。
 通常は,訴訟準備に時間を費やした時間数やその具体的作業内容,当該訴訟準備がなければ利益を得られるはずだった他の仕事の具体的内容等の主張立証をすることになりますが,一般的にはハードルが高いように思います。

 レガシィ事件東京地裁平成27年3月27日判決においても,原告会社は,情報漏洩行為により代表取締役らが調査を行ったり,和解交渉や準備書面作成のため代理人と打ち合わせしたり,各種資料作成をするなどして時間を費やしたことにより,本来の税務・営業活動等に従事することができなくなった時間が生じ,その時間に業務を行うことができなくなって利益を喪失したと主張しましたが,認められませんでした。
 民事訴訟法248条では,「損害が生じたことが認められる場合において,損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは,裁判所は,口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき,相当な損害額を認定することができる。」と定めており,一定の場合に損害の立証の負担の軽減が図られていますが,同判決では,原告会社主張の損害は,民事訴訟法248条にいう「損害が生じたことが認められる場合」という程度に立証されておらず,また,そもそも「損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとき」に当たるものでもないから,同条による相当な損害の認定もできないとして,同条の適用を否定しています。

 なお,会社の機密情報を持ち出した元従業員に対する損害賠償請求訴訟において請求すべき損害としては,機密情報持ち出しにより顧客を喪失したなどの事情があればその損害の請求をすることが考えられますし,そのような損害が立証できない場合であっても慰謝料の請求をすることが考えられると思います。


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