労働問題507 基本給月額10万円、歩合給8万円(合計18万円)が最低賃金額以上かどうかを確かめるためには、どうすればいいですか。
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賃金の種類ごとに所定の方法で時間額に換算してから合計する 最低賃金との比較では、基本給(月給制)と歩合給では換算方法が異なります。それぞれを時間額に換算してから合計し、その合計額と最低賃金を比較します。 |
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基本給(月給制)は一月平均所定労働時間数で、歩合給は総労働時間数で割る 基本給10万円÷一月平均所定労働時間数160時間=625円、歩合給8万円÷総労働時間数200時間=400円。これを合計すると1,025円となり、この1,025円が最低賃金以上かどうかを確認します。 |
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18万円の合計額をそのまま比較するのは誤り 月額18万円という合計額をそのまま最低賃金と比較することはできません。賃金の種類ごとに定められた換算方法にしたがって時間額を計算することが必要です。 |
目次
01最低賃金との比較の基本的な考え方
最低賃金は「時間額」で定められていますので、支払われた賃金が最低賃金以上かどうかを確認するには、支払われた賃金を時間額に換算して比較することが必要です。
基本給のように月単位で支払われる賃金と、歩合給のように実績に応じて支払われる賃金が混在する場合は、それぞれを所定の方法で時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金を比較することになります。月額の合計(18万円)をそのまま比較することはできません。
ポイントは、賃金の種類によって換算に用いる「時間数」が異なることです。基本給(月給制)と歩合給では、割り算に使う分母(時間数)が違います。
02賃金の種類ごとの時間額換算方法
最低賃金法施行規則2条は、賃金の種類ごとに時間額への換算方法を定めています。基本給(月給制)と歩合給の換算方法は次のとおりです。
賃金種類ごとの時間額換算方法
月給制の賃金(基本給等)
月額賃金 ÷ 一月平均所定労働時間数
(年間の所定労働時間数 ÷ 12で算出)
歩合給(出来高払制その他請負制によって定められた賃金)
歩合給の額 ÷ 当該賃金計算期間の総労働時間数
(実際に労働した時間数。時間外・休日労働も含む)
基本給(月給制)は「所定労働時間数」で割るのに対し、歩合給は「総労働時間数(実際の労働時間数)」で割る点が重要です。残業等で総労働時間数が多くなると、歩合給の時間額は小さくなります。
03基本給と歩合給が混在する場合の計算例
基本給月額10万円、歩合給8万円(合計18万円)が最低賃金以上かどうかを確かめるためには、基本給月額10万円、歩合給8万円それぞれについて所定の時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額を比較することになります。
計算例
前提条件
・基本給月額:10万円(月給制)
・歩合給:8万円
・一月平均所定労働時間数:160時間
・当該賃金計算期間の総労働時間数:200時間
計算手順
① 基本給の時間額:
100,000円 ÷ 160時間 = 625円
② 歩合給の時間額:
80,000円 ÷ 200時間 = 400円
③ 合計時間額:
625円 + 400円 = 1,025円
結論:この1,025円が最低賃金以上かどうかを確かめます。
04「合計額÷所定労働時間数」という計算が誤りになる理由
「18万円÷160時間=1,125円」という計算で最低賃金を確認しようとする会社経営者の方がいますが、これは誤りです。
なぜなら、歩合給は「総労働時間数(実際の労働時間数)」で割らなければならないからです。歩合給8万円を総労働時間数200時間で割ると400円になりますが、これを所定労働時間数160時間で割ると500円になり、本来より高い時間額が算出されてしまいます。
実態よりも高い時間額で比較すれば、最低賃金を満たしているように見えても、正しい計算では満たしていないという事態が起きます。賃金の種類ごとに定められた正しい換算方法を用いることが必要です。
05実務上の注意点
時間外労働が多い月ほど総労働時間数が増えるため、歩合給の時間額は小さくなります。基本給が低く歩合給の比率が高い賃金体系では、残業が増えるほど最低賃金との比較で不利になるリスクがあります。毎月の賃金計算時に最低賃金との比較を行うことをお勧めします。
また、最低賃金との比較では、精皆勤手当・通勤手当・家族手当・残業代等は除外されます(505番・506番参照)。これらを除いた上で、基本給・歩合給等の対象となる賃金について、種類ごとに正しく換算して比較することが必要です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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Q&Aよくある質問
Q1. 「一月平均所定労働時間数」はどのように計算しますか。
A. 一月平均所定労働時間数は「年間の所定労働時間数÷12」で算出します。例えば、年間の所定労働日数が240日、1日の所定労働時間が8時間の場合、年間所定労働時間数は1,920時間となり、1,920時間÷12=160時間が一月平均所定労働時間数です。就業規則や雇用契約の所定労働日数・所定労働時間から算出してください。
Q2. 残業が多い月は歩合給の時間額が小さくなって最低賃金を下回る可能性はありますか。
A. あります。歩合給は総労働時間数(時間外労働を含む実際の労働時間数)で割りますので、残業が増えるほど分母が大きくなり、時間額は小さくなります。例えば歩合給8万円で総労働時間が240時間に増えた場合、8万円÷240時間=333円となります。基本給の時間額と合算しても最低賃金を下回る可能性がありますので、残業が多い月は特に注意して確認してください。
Q3. 基本給(月給制)の時間額算出に「総労働時間数」ではなく「所定労働時間数」を使うのはなぜですか。
A. 月給制の基本給は、所定労働日に所定労働時間働けば支払われる賃金です。残業時間が増えても基本給の額は変わりません。そのため、時間額の算出には「所定労働時間数」を用います。一方、歩合給は実際の労働(成果)に連動して決まるため、「総労働時間数」を分母として使います。最低賃金法施行規則2条がそれぞれの換算方法を定めています。
Q4. 最低賃金を下回っていた場合、どのように対処すればよいですか。
A. 最低賃金法4条1項により、最低賃金を下回る部分の合意は無効となり、最低賃金の定める賃金が適用されます。下回った分は当然に追加支払いが必要です。また、最低賃金違反は50万円以下の罰金の対象となります(最低賃金法40条)。発覚した場合は速やかに賃金体系を見直し、不足分を遡って支払うことをお勧めします。遡及期間や対応方法については弁護士または社会保険労務士に相談してください。
最終更新日:2026年2月25日