労働問題503 最近読んだ本に「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」と書かれていたのですが、仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せていいものでしょうか。
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「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」は正しいのか 社員を信じて仕事を任せても失敗することがあるし、裏切られることもあります。任せた仕事が上手くいくよう配慮したり、不正行為が行われないよう対策を取ることが、会社経営者としての仕事です。 |
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「コツ」に依存すると思考停止に陥りやすくなる 「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」といった言葉に依存すると思考停止に陥り、失敗することが多くなります。自分の頭で考えて結論を出すことが、会社経営者に相応しい態度です。 |
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不安な社員に仕事を任せるかどうかは個別に判断する フォローを加えれば上手くいくかどうかを基準に判断すべきです。上手くいく可能性が低くても任せるのは、社員に経験を積ませる目的がある場合や、他に選択肢がないやむを得ない場合などに限定されます。 |
目次
01「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」は正しいのか
会社経営者から問題社員対応等のご相談をお受けしていると、「社員を信じて仕事を任せたのに裏切られた」と嘆く会社経営者の姿を見ることがよくあります。どうやら、単純に「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」というものではなさそうです。しかし、仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せてトラブルになる事案は、思いの外多いものです。
この問題に正解があるようなわけではありませんが、現時点での私の考えをお伝えします。
02仕事を任せるのが不安な社員に任せるとどうなるか
実際には、「仕事を任せるのが不安な社員」に仕事を任せれば、失敗する可能性が高いです。仕事をさぼったり、急に退職してしまうことも珍しくありません。「仕事を丸投げされて、誰も助けてくれなかった。ブラック企業だ」などと非難されることもあります。ひどい場合は、業務上横領等の不正行為を行い、会社が多額の損失を被ることもあります。
こうした事態が生じてしまう背景には、いくつかの典型的なパターンがあります。
03「倫理的に正しい」という思い込みの落とし穴
「社員を信じて仕事を任せたのに裏切られた」と嘆いている会社経営者の多くは、社員を信じて仕事を任せることは倫理的に正しいと考えていることが多いように見えます。「性善説で考えていました」という日本語表現もよく聞きます。自分は正しいことをしているのだから、不安があったとしても仕事を任せるべきだし、社員の側も信頼を裏切るべきではないというわけです。
その結果、信じて仕事を任せた社員が会社に損害を与えたり、仕事を投げ出してあっさり退職してしまったり、「ブラック企業」と非難してきたり、慰謝料請求をしてきたりということになれば、やりきれない気持ちになることはよく理解できます。
しかし、実際には、社員を信じて仕事を任せても失敗することがあるし、裏切られることもあるのです。社員を信じて仕事を任せれば上手く行くというものではありません。社員に任せた仕事が上手くいくよう配慮したり、不正行為が行われないよう対策を取ることなどが必要です。そういった対策を取らずに仕事を任せたのでは、会社経営者としての仕事を怠っているように見えますし、倫理的に正しいことだとも思えません。
04「自分の頭で考えさせるために任せる」という考え方について
「いちいち指示して仕事をさせたのでは、いつまで経っても自分の頭で考えて仕事をすることができるようにはならない」ことから、仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せていることもあります。
この言葉には真実が含まれています。しかし、それは考慮要素の一つに過ぎず、直ちに「仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せていい」という結論に結びつくものではありません。社員の成長を促すという目的があるとしても、会社が被るリスクや損失との兼ね合いで判断する必要があります。
05思考停止が会社経営者の一番の敵
「自分の頭で考えて結論を出す」のが会社経営者に相応しい態度です。自分の頭で考えて結論を出した結果であれば、たとえ失敗したとしても、そこから学び、その後の成功につなげることができます。アドバイスをもらうことは大事ですが、最終的には自分の頭で考えて結論を出してください。
「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」といった「コツ」のようなものに依存すると、思考停止に陥りやすくなります。思考停止に陥ったのでは、失敗することが多くなりますし、たまたま成功することがあったとしても、運が良かっただけということになってしまいます。「裸の王様」の寓話を思い出してください。「裸の王様」のようになりたい会社経営者はいないでしょう。思考停止は、会社経営者の一番の敵なのです。
会社経営者として
◯ 自分の頭で考えて結論を出す
✕ 思考停止
06仕事を任せるかどうかの判断基準
仕事を任せるのが不安な社員に仕事を任せるかどうかは、基本的には、その社員を一定程度フォローするなどすれば上手くいく仕事かどうかを判断して決めるべき問題です。
上手くいく可能性が低くても仕事を任せるのは、社員に経験を積ませることを目的としているような場合や、他に選択肢がなくやむを得ない場合などに限定されると思います。
判断のポイント
仕事を任せてよい場合
フォローを加えれば上手くいく仕事である場合。
上手くいく可能性が低くても任せることがある場合
①社員に経験を積ませることを目的としている場合。
②他に選択肢がなくやむを得ない場合。
任せるべきでない場合
フォローを加えても上手くいく見込みが低く、会社が被るリスクが大きい場合。
「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」という言葉に乗っかって思考停止するのではなく、目の前の社員・仕事・状況を自分の頭で考えて判断することが、会社経営者の本来の役割です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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Q&Aよくある質問
Q1. 仕事を任せるのが不安な社員かどうか、どうやって見極めればよいですか。
A. 過去の仕事ぶり・実績・言動から総合的に判断するしかありません。「以前の仕事で約束を守れなかったことがあるか」「責任感をもって業務に取り組んでいるか」「問題が起きたときの対応はどうだったか」といった具体的な行動実績が判断材料になります。採用直後や経験が少ない社員の場合は、まず小さな仕事から任せて様子を見ながら段階的に信頼を積み重ねていくことが現実的です。
Q2. 「フォローを加えれば上手くいく」かどうかは、どうやって判断すればよいですか。
A. 仕事の難易度・重要性・影響範囲と、その社員の能力・経験・現時点での状態を照らし合わせて判断します。フォローの体制(上司・先輩が確認できるか、進捗を把握できる仕組みがあるか)も重要な考慮要素です。また、万が一失敗した場合のダメージ(会社への損失・顧客への影響・法的リスク等)の大きさも勘案してください。ダメージが大きい仕事ほど、慎重な判断が必要です。
Q3. 不正行為(業務上横領等)のリスクを防ぐために有効な対策はありますか。
A. 不正行為は「機会」「動機」「正当化」の三つの要素が揃ったときに起きやすいとされます。対策としては、①業務の承認プロセスや確認者を複数にする(一人に権限を集中させない)、②定期的な業務確認・報告の仕組みを設ける、③帳簿・通帳・現金等の管理を担当者以外もチェックできる体制にする、などが有効です。「任せたから信じる、信じるから確認しない」という姿勢が不正行為を生むリスクを高めます。
Q4. 社員が「ブラック企業だ」と主張してきた場合、どう対応すべきですか。
A. まず事実確認を冷静に行ってください。具体的にどのような点がブラックだという主張なのかを整理し、法的な問題(残業代・ハラスメント・解雇等)が含まれているかどうかを確認します。感情的な主張と法的な問題点を切り分けたうえで、法的リスクのある部分については使用者側弁護士に相談することをお勧めします。また、「ブラック企業」という主張が外部に発信されないよう、早期に適切な対応をとることが重要です。
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最終更新日:2026年2月25日