労働問題503 最近読んだ本に「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」と書かれていたのですが、仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せていいものでしょうか。

 会社経営者から問題社員対応等の相談を受けていると、会社経営者が「社員を信じて仕事を任せたのに裏切られた。」と嘆く姿を見ることがよくあります。どうやら、単純に「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」というものではなさそうです。しかし、仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せてトラブルになる事案は、思いの外多いものです。
 実際には、「仕事を任せるのが不安な社員」に仕事を任せれば、失敗する可能性が高いですし、仕事をさぼったり、急に退職してしまうことも珍しくありません。「仕事を丸投げされて、誰も助けてくれなかった。ブラック企業だ。」などと非難されることもあります。ひどい場合は、業務上横領等の不正行為を行い、会社が多額の損失を被ることもあります。
 どうして、このようなことになってしまうのでしょうか。正解があるような問題ではないかもしれませんが、現時点の私の考えをお伝えします。

 「社員を信じて仕事を任せたのに裏切られた。」と嘆いている会社経営者の多くは、社員を信じて仕事を任せることは倫理的に正しいと考えていることが多いように見えます。「『性善説』で考えていました。」という日本語表現もよく聞きます。自分は正しいことをしているのだから、不安があったとしても仕事を任せるべきだし、社員の側も信頼を裏切るべきではないというわけです。その結果、信じて仕事を任せた社員が会社に損害を与えたり、仕事を投げ出してあっさり退職してしまったり、「ブラック企業」と非難してきたり、慰謝料請求をしてきたりということになれば、やりきれない気持ちになることはよく理解できます。
 しかし、実際には、社員を信じて仕事を任せても失敗することがあるし、裏切られることもあるのです。社員を信じて仕事を任せれば上手く行くというものではありません。社員に任せた仕事が上手く行くよう配慮したり、不正行為が行われないよう対策を取ることなどが必要です。そういった対策を取らずに仕事を任せたのでは、会社経営者としての仕事を怠っているように見えますし、倫理的に正しいことだとも思えません。

 「いちいち指示して仕事をさせたのでは、いつまでたっても自分の頭で考えて仕事をすることができるようにはならない」ことから、仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せていることもあります。この言葉には真実が含まれていますが、それは考慮要素の一つに過ぎず、直ちに仕事を任せるのが不安な社員にまで仕事を任せていいという結論に結びつくものではありません。

 「自分の頭で考えて結論を出す」のが会社経営者に相応しい態度です。自分の頭で考えて結論を出した結果であれば、たとえ失敗したとしても、そこから学び、その後の成功につなげることができます。アドバイスをもらうことは大事ですが、最終的には自分の頭で考えて結論を出して下さい。
 「社員を信じて仕事を任せれば上手く行く」といった「コツ」のようなものに依存すると、思考停止に陥りやすくなります。思考停止に陥ったのでは、失敗することが多くなりますし、たまたま成功することがあったとしても、運が良かっただけということになってしまいます。「裸の王様」の寓話を思い出して下さい。「裸の王様」のようになりたい会社経営者はいないでしょう。思考停止は、会社経営者の一番の敵なのです。
 〇 自分の頭で考えて結論を出す
  思考停止

 仕事を任せるのが不安な社員に仕事を任せるかどうかは、基本的には、その社員を一定程度フォローするなどすれば上手く行く仕事かどうかを判断して決めるべき問題です。
 上手く行く可能性が低くても仕事を任せるのは、社員に経験を積ませることを目的しているような場合や、他に選択肢がなくやむを得ない場合などに限定されると思います。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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