労働問題494 賃金債権の相殺に対する労働者の同意の有効性の判断基準を教えて下さい。

 日新製鋼事件最高裁平成21126日第二小法廷判決は、「労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの。以下同じ。)241項本文の定めるいわゆる賃金全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものというべきであるから、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであるが、労働者がその自由な意思に基づき右相殺に同意した場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定に違反するものとはいえないものと解するのが相当である(最高裁昭和44年(オ)第1073号同48119日第二小法廷判決・民集27127頁参照)。もっとも、右全額払の原則の趣旨にかんがみると、右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行わなければならないことはいうまでもないところである。」と判示しています。
 したがって、賃金債権の相殺に対する労働者の同意が有効であるというためには、労働者がその自由な意思に基づき相殺に同意していることが必要であり、労働者がその自由な意思に基づき相殺に同意しているか否かは、労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かにより判断されるものと考えられます。そして、賃金債権の相殺に対する同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われることになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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