労働問題487 労基法39条の年次有給休暇はいつまで繰り越さなければならないのでしょうか。

この記事の結論
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年次有給休暇の消滅時効は2年(労基法115条)

労基法上の年次有給休暇の消滅時効は2年と考えられています(労基法115条)。当該年度に消化できなかった年休は翌年度(2年間)まで繰り越す義務があります。

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就業規則で繰越禁止は定められない

2年の時効は労基法上の最低基準であり、就業規則で「繰越禁止」と定めても労基法13条により無効となります。逆に就業規則で2年超の繰越を認めることは可能です。

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繰越分から先に消化させる管理が重要

繰越分(古い年休)を先に消化させることで時効消滅を防げます。発生日・時効日を台帳や勤怠システムで正確に管理することが重要です。

01年次有給休暇の消滅時効は2年

 労基法上の年次有給休暇(労基法39条)の時効は2年(労基法115条)と考えられています。労基法115条は「この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から2年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」と規定しており、年休取得権は賃金請求権とは異なり2年の時効に服すると解されています。

 したがって、当該年度に消化しきれなかった年休は翌年度(2年間)の経過により消滅時効にかかります。翌年度まで繰り越す義務が使用者にあります。

02繰越の上限と計算例

 勤続6年6か月以上の正社員には年20日の年休が付与されます。毎年度これを全部消化しない場合、理論上の最大繰越日数は40日(前年度20日+当年度20日)になります。実際には年5日の取得義務化(労基法39条7項)もありますので、毎年最低5日は消化することになりますが、管理が不十分な職場では未消化年休が積み上がるケースがあります。

計算例

・第1年度(4月1日〜翌3月31日):10日付与→4日消化→6日が翌年度へ繰越
・第2年度(4月1日〜翌3月31日):11日付与→繰越6日+新規11日=計17日保有
・第2年度末(翌3月31日)に繰越6日が未消化の場合、2年経過により時効消滅

 上記例の第2年度末に繰越6日が消滅するのは、第1年度に付与された年休が発生から2年(第3年度4月1日)で時効にかかるためです。時効消滅日は「付与日から2年後」であり、基準日(付与日)を正確に把握することが必要です。

03就業規則で繰越期間を変えることはできるか

 2年の消滅時効は労基法上の最低保護基準です。これより短い期間を就業規則で定めること(例:「当年度に消化できなかった年休は翌年度に繰り越さず消滅する」)は、労基法13条により無効となります。労働者の不利益となる形での変更はできません。

 逆に、2年を超える繰越期間(例:3年繰越)を就業規則で定めることは可能です。年休の繰越期間を延ばすことは労働者に有利な変更であり、法律上の制限はありません。ただし、繰越期間が長くなると未消化年休が膨大に積み上がり、退職時に一括消化を求められるなどの問題が生じる可能性があります。

04年5日取得義務と繰越分の関係

 労基法39条7項は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して使用者が年5日以上の年休を取得させる義務を定めています。この義務は、各基準日(付与日)から1年以内に5日以上取得させることが必要です。

 重要なのは、前年度から繰り越した年休の消化は、当年度の「年5日取得義務」の履行としてはカウントされないという点です。前年度分の繰越年休を消化させたとしても、当年度新たに付与した年休のうち5日以上を別途取得させなければなりません。

 例えば、前年度から10日を繰り越した社員が当年度に10日を消化したとしても、その10日の全てが繰越分であれば、当年度付与分5日の取得義務は未履行のままとなります。年5日取得義務の管理は、繰越分と当年度付与分を明確に区別して行う必要があります。

05実務上の年休管理の方法

 実務では、繰越分(前年度付与分)と当年度付与分が混在します。基本的な方針として、古い年休(繰越分)から先に消化させることで時効消滅を防ぐことができます。

 管理のためには、以下の情報を社員ごとに記録することが必要です。①年休の付与日(基準日)、②付与日数、③消化日数・消化日、④残日数、⑤時効消滅日(付与日から2年後)。これらを年休台帳や勤怠管理システムで管理してください。

 また、時効消滅が迫っている年休がある社員には事前に通知し、取得を促すことが重要です。時効消滅前に取得を促す仕組みを作ることで、社員とのトラブルも防げます。

経営上のポイント 年次有給休暇は2年間繰り越す義務があり、就業規則でこれを短くすることはできません。繰越分から先に消化させる管理ルールを設け、付与日・消化日・時効消滅日を台帳や勤怠システムで管理してください。また、繰越年休の消化は当年度の「年5日取得義務」のカウントにはなりませんので、両者を区別した管理が必要です。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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Q&Aよくある質問

Q1. 就業規則に「当年度中に消化できなかった年休は消滅する」と定めています。これは無効ですか。

A. 無効です。労基法上の2年の消滅時効はこれより短い期間を定める就業規則を排除します(労基法13条)。当該規定は無効となり、2年の繰越が適用されます。速やかに就業規則を修正するとともに、過去に消滅させた年休の扱いについて弁護士に相談することをお勧めします。

Q2. 社員が退職する際に「年休を消化しきれなかった」と言ってきました。残った年休はどうなりますか。

A. 退職日までに消化できなかった年休は、退職によって消滅します。退職後に年休を取得することはできません(477番参照)。もっとも、退職前に十分な日数がない場合には、退職前に年休消化が進まなかった事情によっては使用者として対応を求められる場合もあります。退職の意思を受けた段階で、残余の年休日数と退職日を確認し、消化可能かどうかを話し合うことが重要です。買い上げに応じるかどうかも含め弁護士に相談することをお勧めします。

Q3. 未消化年休が多数ある社員への対応で困っています。計画的に消化させるよい方法はありますか。

A. 計画的付与制度(労基法39条6項)の活用が有効です。労使協定を締結することで、会社が計画的に年休取得日を指定することができ、一定期間(夏季・年末等)に計画的に年休を消化させる仕組みを作れます。ただし、計画的付与できるのは各社員の年休残日数のうち5日を超える部分に限られます。社員ごとの年休残日数の状況を把握したうえで、活用を検討してください。

Q4. 勤続年数が長い社員ほど未消化年休が多くなりがちです。上限を設けることはできますか。

A. 2年の時効によって自動的に上限が設けられる仕組みになっています(前年度分は翌年度末に消滅)。ただし就業規則で2年超の繰越を認めている場合は、未消化年休が増え続けます。就業規則の繰越規定を2年に設定しておくことが基本的な管理の起点です。なお、2年以内の繰越でも未消化が多い場合は、計画的付与制度の活用が有効です。

最終更新日:2026年2月25日

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