労働問題477 年次有給休暇を使い切らずに退職した社員が退職日を1か月程度先に変更した上で年次有給休暇を取得したいと言ってきた場合、これに応じる必要はありますか。

この記事の結論
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退職後の年休取得はできない

年次有給休暇は在職中の労働者に対し有給で労働義務を免除するものです。退職日を以て労働契約は終了しており、労働契約が終了した時点で年休を取得する権利は消滅します。

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退職日の変更要求に応じる法的義務はない

退職した社員が退職日を1か月程度先に変更したいと言ってきた場合、法的にこの申し出に応じる義務はありません。退職の撤回を認めるかどうかは会社の判断です。

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退職の撤回を認めて年休取得を認めることはお勧めできない

理屈では退職の撤回を認めたうえで年休取得を認めることもできなくはありませんが、法的にも実務的にもこのような対応はお勧めできません。

01年次有給休暇は在職中の労働者のための制度

 年次有給休暇は、あくまでも在職中の労働者に対し、有給で労働義務を免除するものです。労働契約が存続していることを前提とした制度であり、労働契約が終了した後に年休を取得する余地はありません。

 「有給で労働義務を免除する」という制度の性質上、労働義務が存在しなければ(すなわち労働契約が終了していれば)、免除すべき労働義務が存在しないため、年休という概念自体が成り立ちません。

02退職後に年休を取得する余地はない

 年次有給休暇を使い切らずに退職した社員は、退職日をもって労働契約が終了しています。労働契約が終了した時点で年休を取得する権利は消滅していますので、退職した社員が「まだ年休が残っているから取りたい」と言ってきたとしても、法的に年次有給休暇を取得する余地はありません。

 退職前に年休を消化しきれなかったことは、退職した社員にとって残念なことではありますが、退職後に年休を取得する権利が発生するわけではありません。なお、退職時に消化しきれなかった年休の買い上げについては、当事者間の合意があれば例外的に許容されます(476番参照)。

03退職の撤回・退職日変更に応じるべきか

 退職した社員が「退職日を1か月程度先に変更したうえで年次有給休暇を取得したい」と言ってきた場合、理屈では退職の撤回を認めたうえで年休取得を認めることもできなくはありません。

 しかし、法的にはこのような申し出に応じる必要はありませんし、応じることはお勧めできません。退職の撤回を認めると、退職の効力を巡って争いになる可能性があるほか、年休消化のためだけに在籍する期間が発生し、社会保険料等の負担が生じることにもなります。

 退職は、使用者が承諾した時点(合意退職の場合)又は退職届が使用者に到達した時点(辞職の場合)で効力が生じます。いったん効力が生じた退職を撤回するためには、使用者の同意が必要です。この同意を与えるかどうかは会社の判断であり、応じる義務はありません。

04会社経営者としての実務上の対応

 退職した社員からこのような申し出があった場合は、「退職日をもって労働契約は終了しており、退職後に年次有給休暇を取得することはできない」旨を明確に伝えるのが適切な対応です。

 なお、退職前にこのような問題を防ぐためには、退職の意思表示を受けた段階で、残りの年休日数と退職日までの勤務日数を確認し、年休の消化について本人と事前に調整しておくことが重要です。退職日を決める前に年休消化の計画を立てておけば、退職後に年休を巡るトラブルが生じることを防げます。

経営上のポイント 退職した社員が退職日を変更して年休を取得したいという申し出に応じる法的義務はありません。退職後は年休を取得する権利が消滅しています。退職前の段階で年休消化について本人と調整しておくことが、トラブル防止の最善策です。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 退職した社員から「消化しきれなかった年休を買い取ってほしい」と言われました。応じるべきですか。

A. 退職時の未消化年休の買い上げは例外的に許容されますが、会社に買い取る法的義務はありません。応じるかどうかは会社の判断です。なお、退職前に年休の消化について調整しておくことが、このような事態を防ぐ最善策です。

Q2. まだ退職日前ですが、社員が退職日を後ろにずらして年休を消化したいと言っています。応じるべきですか。

A. 退職日がまだ到来していない段階であれば、退職の意思表示の撤回または退職日の変更に応じるかどうかは会社の判断です。合意退職の場合、使用者が承諾する前であれば退職の撤回も可能ですが、すでに承諾済みであれば撤回には使用者の同意が必要です。

Q3. 退職の撤回を認めた場合、どのようなリスクがありますか。

A. 退職の撤回を認めると、年休消化のためだけの在籍期間が生じ、社会保険料の負担が発生します。また、その期間中に別の問題(傷病、事故等)が発生した場合に会社が責任を負うリスクもあります。退職の撤回を安易に認めることはお勧めできません。

最終更新日:2026年2月25日

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