労働問題458 「①事業組織への組み入れ」の有無を判断する際には、どのような事情を考慮する必要がありますか。
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4つの観点から「事業組織への組み入れ」を判断する 「契約の目的」「組織への組み入れの状況」「第三者に対する表示」「専属性」の4つの観点から考慮される事情を整理します(労使関係法研究会報告書)。 |
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これらの事情がある場合に肯定的に解されるが、ない場合でも直ちに否定されない 以下の各事情は肯定方向の考慮要素ですが、これらがないからといって直ちに「事業組織への組み入れ」が否定されるわけではありません。あくまで総合判断の一要素です。 |
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契約形式ではなく実態を重視して判断する 「業務委託契約」という形式を採っていても、実態として事業組織の不可欠な一部として機能しているかどうかが判断の中心となります。 |
01「事業組織への組み入れ」とは
「事業組織への組み入れ」とは、労務供給者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているかどうかという判断要素です(457番参照)。
以下のような事情がある場合に、事業組織への組み入れが肯定的に解されるものと考えるのが一般的です。ただし、これらの事情がない場合でも直ちに事業組織への組み入れが否定されるものではありません(労使関係法研究会報告書)。
02契約の目的
契約の形式にかかわらず、相手方と労務供給者の契約が、労働力を確保する目的で締結されている。
契約書の表題が「業務委託契約」「請負契約」であっても、その実態として労働力の確保を目的とした契約であれば、この点が肯定的に評価されます。仕事の完成ではなく労働力そのものの確保を目的としているかどうかが問われます。
03組織への組み入れの状況
業務の遂行の量的ないし質的な面において不可欠ないし枢要な役割を果たす労働力として組織内に位置付けられている(ただし、当該労務供給者が集団として存在していなくても、事業組織への組み入れが否定されるわけではない)。
評価制度や研修制度を設ける、業務地域や業務日を割り振るなど、相手方が労務供給者を管理している。
人手が不足したときは他の事業者にも委託するが、通常は労務供給者のみに委託している。
組織内での位置付けの重要性は、量的側面(業務量の大半を担っているか)と質的側面(その者がいなければ業務が回らないような中核的役割を担っているか)の両面から判断されます。また、相手方が労務供給者を評価制度や研修制度の対象とするなど、組織の構成員として管理していることも重要な考慮要素となります。
04第三者に対する表示
相手方の名称が記載された制服の着用、名刺、身分証の携行等が求められているなど、第三者に対して相手方が労務供給者を自己の組織の一部として扱っている。
社外の第三者に対して、労務供給者が相手方の組織の一員として見られるような取り扱いがされているかどうかも重要な考慮要素です。会社名入りの制服着用、名刺の携行、社員証・身分証の付与などが典型例です。
05専属性
相手方から受託している業務に類する業務を、契約上他の相手方から受託することができない(契約上の制約)。
相手方から受託している業務に類する業務を他の相手方から受託することについて、契約上設定された権利義務としては制約がないが、当事者の認識や契約の実際の運用上は制約があり困難である。
相手方から受託している業務に類する業務について、他の相手方との契約関係が全く又はほとんど存在しない(実態上の専属性)。
専属性は、契約上の制約がある場合(明示的専属性)と、契約上は自由であっても実態として他の取引先との契約がほぼない場合(実態上の専属性)の両方が考慮されます。契約書に他社との取引禁止条項がなくても、実態として特定の相手方のみに依存している状況であれば、この要素が肯定的に評価されます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 業務委託先に「他社との取引禁止」条項がなければ専属性は否定されますか。
A. 契約上の制約がなくても、実態として他の取引先との契約がほぼない場合には、実態上の専属性として肯定的に評価されます。契約書の条項だけでなく、実際の取引の状況も重要な考慮要素です。
Q2. 業務委託先が複数の取引先と契約していれば専属性は否定されますか。
A. 複数の取引先と契約していることは専属性を否定する方向に働きますが、それだけで直ちに「事業組織への組み入れ」が否定されるわけではありません。他の事情(組織内での位置付けや第三者への表示等)を含めた総合判断が必要です。
Q3. 業務委託先に会社名入りの名刺を渡すことは問題がありますか。
A. 会社名入りの名刺の付与は、「第三者に対して自己の組織の一部として扱っている」という事情として、「事業組織への組み入れ」を肯定する方向に評価されます。業務委託の実態を維持するためには、こうした取り扱いについても慎重に検討することが有益です。
最終更新日:2026年2月25日