労働問題450 労働事件において民事調停はどのように利用されていますか。


この記事の結論
1

民事調停は話し合いによる解決を図る手続

民事調停では、調停委員の関与のもとで当事者双方が話し合い、合意による解決を目指します。裁判所の判断が示されるわけではなく、双方の合意が前提です。

2

弁護士なし・少額・法的権利が不明確な事案で多く利用される

弁護士が代理人についていない事案、請求金額が少額な事案、法的権利があるとは言いにくい事案などに利用されています。

3

東京では労働問題専門の調停委員による労働調停が行われている

東京簡易裁判所では、労働問題についての知識経験が豊富な調停委員による労働調停が試みられており、良好な成果を上げているとされています。

01民事調停とはどのような手続か

 民事調停とは、調停委員の関与のもとで当事者双方が話し合い、合意による解決を目指す手続です。裁判所(簡易裁判所)が関与しますが、裁判所が判断を下すわけではなく、あくまで双方の合意が前提となります。

 調停が成立した場合、調停調書が作成されます。調停調書は確定判決と同一の効力を持ち、強制執行の対象にもなります。一方、調停が不成立となった場合には、手続は終了し、その後は訴訟などの別の手続を選択することになります。

 民事調停は、訴訟と比べて費用が低廉で手続も比較的簡易です。当事者双方が合意に至ることを前提とするため、柔軟な解決が可能な反面、一方当事者が応じない場合には成立しません。

02労働事件で民事調停が利用される場面

 労働事件において民事調停は、次のような場面で利用されています。

民事調停が利用される主な場面

① 弁護士が代理人についていない事案:労働審判や訴訟と異なり、民事調停は手続が簡易なため、弁護士なしで申立てを行うケースがあります。
② 請求金額が少額な事案:わずかな未払賃金や退職金の差額など、少額の請求については、費用対効果の観点から調停が選択されることがあります。
③ 法的権利があるとは言いにくい事案:明確な法的根拠があるとはいえないものの、何らかの解決を求めるケースでは、話し合いによる調停が活用されることがあります。

 労働事件では、労働審判や訴訟が主な紛争解決手段として広く利用されていますが、事案の内容や当事者の状況によって、民事調停が選択されることもあります。

03東京における労働調停の取り組み

 東京簡易裁判所では、労働問題についての知識経験が豊富な調停委員による労働調停が試みられており、良好な成果を上げているとされています。

 労働調停とは、労働問題の専門知識を持つ調停委員が関与する形で行われる民事調停の一形態です。労働法や実務の知識を持つ調停委員が当事者間の調整を行うことで、より適切な解決が期待されます。

 将来的には、労働調停が全国の簡易裁判所にも広まっていく可能性があります。使用者側としても、民事調停の手続やその特性を理解しておくことは、労働紛争対応の幅を広げることにつながります。

04会社側(使用者側)として注意すべき点

 民事調停は当事者の合意が前提であるため、会社側が調停に応じる義務があるわけではありません。ただし、調停に応じない場合は相手方が別途訴訟を提起することもあり得ます。

 調停に応じる場合には、調停の場での発言や提示した条件が後の訴訟において影響を与えることがある点に注意が必要です。調停の場だからといって安易な発言や提案をすることは避け、使用者側弁護士に相談したうえで対応方針を定めることをお勧めします。

 また、法的権利があるとは言いにくい事案であっても、調停で合意した内容は法的効力を持つ調停調書として成立します。合意内容を慎重に検討することが重要です。

経営上のポイント 民事調停の申立書が届いた場合には、調停に応じるかどうかも含めて、使用者側弁護士に相談することをお勧めします。調停での発言や合意内容は、その後の対応に影響することがあります。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

労働問題でお悩みの会社経営者の方はご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 民事調停に呼ばれた場合、会社は出頭しなければなりませんか。

A. 民事調停の期日に出頭することは法律上求められますが、調停に合意する義務はありません。正当な理由なく出頭しない場合には過料の制裁を受ける可能性があります。出頭したうえで調停に応じないという対応は可能です。

Q2. 民事調停が成立した場合、後から覆すことはできますか。

A. 調停調書は確定判決と同一の効力を持ちます。原則として後から覆すことはできません。調停に応じる前に内容を慎重に確認し、合意内容に不明点や問題がある場合は応じないことが重要です。

Q3. 民事調停と労働審判はどのように違いますか。

A. 労働審判は、調停不成立の場合に審判(裁判所の判断)が示される制度であり、専門的な審理が行われます。民事調停は、あくまで当事者の合意を前提とする手続であり、合意できなければ手続は終了するだけで判断は示されません。労働事件における主要な解決手段は労働審判ですが、民事調停が選択されることもあります。

最終更新日:2026年2月25日

労働問題FAQカテゴリ


Return to Top ▲Return to Top ▲