労働問題383 賞与を支給しないことはできますか。
個別労働契約、就業規則、労働協約で一定額・割合の賞与を支給する義務が定められていない場合には、使用者には賞与を支給する義務がないため、賞与を支給しなくても法的には問題がありません。
一定額以上の賞与支給が労使慣行になっているとして賞与請求がなされることがありますが、労使慣行の成立が認められるケースは多くありません。民法92条により法的効力のある労使慣行が成立していると認められるためには、
① 同種の行為又は事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと
② 労使双方が明示的にこれによることを排除・排斥していないこと
③ 当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていること
が必要であり、使用者側においては、当該労働条件についてその内容を決定しうる権限を有している者又はその取扱いについて一定の裁量権を有する者が規範意識を有していたことが必要です(商大八戸ノ里ドライビングスクール事件最高裁平成7年3月9日第一小法廷判決、同事件大阪高裁平成5年6月25日判決参照)。
他方、一定額・割合の賞与を支給する義務が定められている場合は、賞与を支給する義務があります。就業規則の定めを変更して賞与不支給とする場合には、就業規則の不利益変更の問題となるため、就業規則変更の高度の合理性の有無が問題となります。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎