労働問題355 定額(固定)残業代の支給名目はどのようなものがいいでしょうか。

 定額(固定)残業代を支給する場合は、基本給の中に一定の金額・時間分の残業代が含まれる扱いにしたり、営業手当等の名目で一定額を支給する扱いにしたりするよりも、「残業手当」「時間外勤務手当」「深夜勤務手当」「休日勤務手当」等、それが残業代であることが給与明細書の記載から直ちに分かるよう記載しておくといいと思います。残業代であることが明白な名目で支給することにより、労働者の納得も得られやすくなり、それが残業代の支払であるか否かといった論争を回避することができます。
 他方、残業代の支払かどうか一見して分からない名目で残業代を支給した場合は、それが残業代の支払であることを労働条件通知書、賃金規程等に明記して丁寧に説明しておかないと、労働者の理解を得るのが難しくなりますし、訴訟でも残業代の支払として認められないリスクが高くなります。当該手当が残業代の趣旨で支払われる手当であることを労働条件通知書、賃金規程等に明記することは最低限必要であり、口頭で説明したにとどまるような場合は、負け筋の論点となってしまいます。
 当該手当が残業代の趣旨で支払われる手当であることを労働条件通知書、賃金規程等に明記されている場合であっても、給与明細書にそれが残業代の趣旨で支給される手当であることが分かる形で記載するなどして労働者の理解を促しておかないと、残業代が不払いであると誤解されて労働審判等を提起される可能性が高まりますし、事案によっては一定の敗訴リスクすら残ります。
 どういうわけか、残業代だと分かる形で賃金を支給するのを嫌がり、残業代とは分からないような名目での手当の支払の形を取りたがる経営者が、それなりの割合で存在します。残業代請求を受けると、「業務手当」「特殊手当」「特別手当」「配送手当」「長距離手当」などといった一見して残業代とは分からない手当が残業代だと説明するのですが、それらの手当が残業代だということが賃金規定や労働条件通知書に記載されているかどうか聞いてみると、どこにも記載されていないという答えが返ってくるケースは珍しくありません。かえって、賃金規程では、それらの賃金は基準内賃金に分類され、勤続年数や技能に対して支払われる手当との説明がなされていたり、残業代の計算式の基礎にも算入されていたりすることも多いところです。
 このような定め方をすれば、残業代の請求を受ける可能性が高くなりますし、訴訟でもこの論点では負けてしまうということを、よく理解しておくべきでしょう。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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