労働問題277 残業代(割増賃金)の消滅時効期間を教えて下さい。
残業代の消滅時効期間は、次のとおりです。
① 2020年3月31日までの給料日に支払われるべき残業代 2年
② 2020年4月1日以降の給料日に支払われるべき残業代 当分の間は3年(いずれ5年)(労基法143条3項・115条)
ただし、内容証明郵便等による残業代請求があった場合には、その時から6か月を経過するまでの間は時効が完成しません(民法150条)。残業代請求から6か月以内に訴訟提起等(民法147条1項)がなされた場合には、消滅時効が完成しているかどうかは、内容証明郵便等による残業代請求があった時点を基準に判断されることになります。
従来は消滅時効期間が2年だったため、長期間勤務していた労働者からの残業代請求であっても、概ね2年分の残業代請求を覚悟すればよかったところです。しかし、2020年4月1日以降の給料日に支払われるべき残業代については消滅時効期間が3年に延長されていますので、2022年4月以降に2年以上勤務していた労働者から残業代請求を受けた場合は、2年を超える期間に対応する残業代請求を受けることが増えてくることが予想されます。2023年4月以降に3年以上勤務していた労働者から残業代請求を受けた場合は、概ね3年分の残業代請求を受けるリスクがあることになります。
労働者の立場からすれば、請求できる残業代の額が増えれば、残業代請求を行う費用対効果が高くなることを意味します。他方、会社の立場からすれば、従来よりも残業代請求を受けるリスクが高まり、支払額も大きくなりやすくなることを意味するといえます。多額の残業代請求を受けて、会社経営に支障が生じることがないよう、事前に対応しておきましょう。