労働問題276 残業代(割増賃金)の遅延損害金の利率を教えて下さい。
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在職中の残業代の遅延損害金は、営利法人(株式会社等)で年6%、非営利法人(社会福祉法人等)で年5% 賃金支払日の翌日から発生します |
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退職後の期間の遅延損害金は、年14.6%という高い利率が適用される可能性がある 民法419条1項・賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条に基づきます |
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厚生労働省令で定める除外事由に該当する場合は年14.6%の適用が外れる(賃確法6条2項) 「合理的な理由により裁判所等で争っていること」(施行規則6条4号)は特に重要な除外事由です |
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民事訴訟では弁論主義が適用されるため、除外事由は会社側が積極的に主張する必要がある 主張しなければ年14.6%がそのまま適用され、遅延損害金額が大きく膨らみます |
目次
01在職中の残業代の遅延損害金の利率
残業代(割増賃金)が支払われなかった場合、遅延損害金(遅延利息)が発生します。在職中の未払い残業代については、以下の利率が適用されます。
在職中の未払い残業代については、賃金支払日の翌日から上記の利率で遅延損害金が日々発生します。長期間にわたって未払い残業代が放置されると、遅延損害金も積み重なり、最終的な支払総額が大きく膨らむ点に注意が必要です。
02退職後の期間の遅延損害金——年14.6%の適用
ただし、退職後の期間の遅延損害金については、年14.6%という高い利率になる可能性があります(民法419条1項・賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条)。
「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃確法)6条1項は、退職した労働者に対して支払われなかった賃金(退職手当を除く)について、退職の日(または期日後に請求された場合は請求日)の翌日から支払われるまでの期間に対して、年14.6%という高率の遅延損害金を課しています。この利率は、在職中の遅延損害金(年5%または年6%)と比較して、2倍以上の高率です。
退職した社員から残業代を請求されると、在職中の期間に対しては年5〜6%、退職後の期間に対しては年14.6%の遅延損害金が発生するため、請求総額が予想以上に大きくなることがあります。
03賃確法6条2項の除外事由——年14.6%の適用を回避する方法
厚生労働省令で定める事由(除外事由)に該当する場合には、その事由の存する期間については賃確法6条1項・同施行令1条の適用はありません(賃確法6条2項)。つまり、除外事由に該当する場合は、退職後の期間についても年14.6%ではなく、通常の利率(年5%または年6%)が適用されます。
「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃確法施行規則6条4号)
この除外事由に該当する場合、年14.6%の遅延損害金ではなく通常の利率が適用されます。残業代請求を裁判所で争っている場合、会社側としてはこの除外事由の適用を積極的に主張すべきです。
従来は当該事由に該当するかどうかについて裁判で争点になることはそれほど多くなかったようですが、会社側としては、厚生労働省令で定める事由に該当する可能性があるような事案であれば、しっかり主張すべきです。
04除外事由の主張の重要性——会社側が積極的に主張すべき
民事訴訟では弁論主義が適用されますから、会社が厚生労働省令で定める事由の存在を主張しさえすれば立証が容易で割増賃金の遅延損害金の利率を下げられるような事案であっても、会社側が主張すらしなければ、そのまま年14.6%という高い利率が適用されることになってしまいます。
特に、「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃確法施行規則6条4号)に該当する場合は、それなりにあると思われます。残業代の存否や金額を合理的な理由に基づいて裁判所で争っている場合は、この除外事由を適切に主張することで、退職後の遅延損害金の利率を大きく下げることができます。
主張しなければ年14.6%がそのまま適用される
民事訴訟では弁論主義が適用されるため、除外事由の存在は会社側が積極的に主張する必要があります。除外事由に該当する事情があっても、会社側が主張しなければ裁判所は職権でこれを認定してくれません。その結果、年14.6%という高率の遅延損害金がそのまま適用され、最終的な支払総額が大きく膨らむことになります。残業代請求訴訟においては、使用者側弁護士・会社側弁護士に依頼し、除外事由の主張を含めた適切な対応を行うことが重要です。
05東京地裁平成23年9月9日判決——当事務所が使用者側代理人を務めた事案
当事務所が使用者側代理人を務めた事案における東京地裁平成23年9月9日判決は、賃確法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」の存在について以下のとおり緩やかに解釈しています。
「合理的な理由」の解釈(東京地裁平成23年9月9日判決)
同判決は、賃確法6条2項・同法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」について、「確実かつ合理的な根拠資料が存する場合だけでなく、必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部又は一部の存否を争っている場合も含まれているものと解するのが相当である」と判示しました。そして、当該事案における未払割増賃金に対する遅延損害金の利率も、商事法定利率(年6分)によるべきものとしています。
また同判決は、賃確法6条2項・施行規則6条の趣旨について、次のように述べています。「遅延利息の利率に関する例外的規定である同法6条1項の適用を外し、実質的に原則的利率(民法404条又は商法514条)へ戻すための要件を定めたものであると解することができ、そうだとすると賃確法施行規則6条所定の各除外事由の内容を限定的に解しなければならない理由はなく、むしろ上記原則的利率との間に大きな隔たりがあること及び賃確法施行規則6条5号が除外事由の一つとして『その他前各号に掲げる事由に準ずる事由』を定め、その適用範囲を拡げていることにかんがみると、同条所定の除外事由については、これを柔軟かつ緩やかに解するのが同法6条2項及び同法施行規則6条の趣旨に適うものというべきである。」
この判決は、除外事由の適用範囲を柔軟に解釈することで年14.6%の適用を回避した事例として、会社側の立場から参考となる重要な裁判例です。残業代請求訴訟において除外事由の主張を検討されている場合は、当事務所にご相談ください。
06まとめ
残業代(割増賃金)の遅延損害金の利率は、在職中は営利法人で年6%・非営利法人で年5%(賃金支払日翌日から)ですが、退職後の期間については年14.6%という高率が適用される可能性があります(賃確法6条1項)。ただし、厚生労働省令で定める除外事由(特に施行規則6条4号「合理的な理由による裁判所等での争い」)に該当する場合は、年14.6%の適用が外れます(賃確法6条2項)。
民事訴訟では弁論主義が適用されるため、除外事由は会社側が積極的に主張する必要があります。主張しなければ年14.6%がそのまま適用され、遅延損害金総額が大きく膨らみます。残業代請求訴訟における除外事由の主張・遅延損害金の計算については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代請求への対応・遅延損害金の争い・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 在職中の残業代の遅延損害金の利率はどのくらいですか。
A. 株式会社・有限会社等の営利を目的とした法人の場合は年6%、社会福祉法人・信用金庫等の営利を目的としない法人の場合は年5%です。いずれも賃金支払日の翌日から発生します。
Q2. 退職後の残業代の遅延損害金の利率はどのくらいですか。
A. 退職後の期間については、賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)6条1項・同施行令1条により、年14.6%という高い利率が適用される可能性があります。ただし、厚生労働省令で定める除外事由に該当する場合は、年14.6%の適用が外れ、通常の利率(年5%または年6%)に戻ります(賃確法6条2項)。
Q3. 退職後の年14.6%の遅延損害金を回避できる場合はありますか。
A. あります。厚生労働省令(賃確法施行規則6条)で定める除外事由に該当する場合は、年14.6%の適用が外れます。特に「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争っていること」(施行規則6条4号)に該当する場合は、それなりにあります。東京地裁平成23年9月9日判決は、この「合理的な理由」を緩やかに解釈しています。
Q4. 賃確法の除外事由は裁判でどのように主張すればよいですか。
A. 民事訴訟では弁論主義が適用されるため、除外事由の存在は会社側が積極的に主張する必要があります。除外事由に該当する事情があっても、会社側が主張しなければ裁判所は職権でこれを認定しません。残業代請求訴訟においては、早期に使用者側弁護士・会社側弁護士に相談し、除外事由の主張を含めた対応方針を検討することをお勧めします。
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最終更新日:2026年5月10日