労働問題276 残業代(割増賃金)の遅延損害金の利率を教えて下さい。

 株式会社、有限会社等の営利を目的とした法人の場合、残業代(割増賃金)の遅延損害金の利率は、賃金支払日の翌日から年6%です。
 社会福祉法人、信用金庫等の営利を目的としない法人の場合、残業代(割増賃金)の遅延損害金の利率は、賃金支払日の翌日から年5%です。
 ただし、退職後の期間の遅延損害金については、年14.6%という高い利率になる可能性があります(民法4191項・賃金の支払の確保等に関する法律61項・同施行令1条)。
 厚生労働省令で定める事由に該当する場合には、その事由の存する期間については賃金の支払の確保等に関する法律61項・同施行令1条の適用はありませんが(賃金の支払の確保等に関する法律62項)、従来は当該事由に該当するかどうかについて裁判で争点になることはそれほど多くなかったようです。しかし、会社側としては、厚生労働省令で定める事由に該当する可能性があるような事案であれば、しっかり主張すべきではないでしょうか。特に、「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則64号)に該当する場合は、それなりにあるように思えます。民事訴訟では弁論主義が適用されますから、会社が厚生労働省令で定める事由の存在を主張しさえすれば立証が容易で割増賃金の遅延損害金の利率を下げられるような事案であっても、会社側が主張すらしなければ、そのまま年14.6%という高い利率が適用されることになってしまいます。
 私が使用者側代理人を務めた事案の東京地裁平成2399日判決は、賃確法施行規則64号にいう「合理的な理由」の存在について以下のとおり緩やかに解釈して「賃確法62項、同法施行規則64号にいう「合理的な理由」には、裁判所又は労働委員会において、事業主が、確実かつ合理的な根拠資料が存する場合だけでなく、必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部又は一部の存否を争っている場合も含まれているものと解するのが相当である。」と結論付けており、当該事案における未払割増賃金に対する遅延損害金の利率も、商事法定利率(年6分)によるべきものとしています。
 「そもそも賃確法61項の趣旨は、退職労働者に対して支払うべき賃金(退職手当を除く。)を支払わない事業主に対して、高率の遅延利息の支払義務を課すことにより、民事的な側面から賃金の確保を促進し、かつ、事前に賃金未払が生ずることを防止しようとする点にあるが、ただ、それは、あくまで金銭を目的とする債務の不履行に係る損害賠償について規定した民法4191項本文の利率(民法404条又は商法514条に規定する年5分又は年6分である。)に関する特則を定めたものにとどまる。」
 「以上によると上記(1)の賃確法62項、同法施行規則6条は、遅延利息の利率に関する例外的規定である同法61項の適用を外し、実質的に原則的利率(民法404条又は商法514条)へ戻すための要件を定めたものであると解することができ、そうだとすると賃確法施行規則6条所定の各除外事由の内容を限定的に解しなければならない理由はなく、むしろ上記原則的利率との間に大きな隔たりがあること及び賃確法施行規則65号が除外事由の一つとして「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由」を定め、その適用範囲を拡げていることにかんがみると、同条所定の除外事由については、これを柔軟かつ緩やかに解するのが同法62項及び同法施行規則6条の趣旨に適うものというべきである。」

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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