労働問題273 6協定の締結・届出の概要|時間外・休日労働の限度時間と特別条項

この記事の要点

36協定は締結するだけでは不十分——労基署への届出が効力発生要件

届出をして初めて「時間外・休日労働をさせても労基法32条・35条違反の罪が成立しない」という効果が生じます

時間外労働の限度時間は1か月45時間・1年間360時間等が原則(1日当たりの限度時間は定められていない)

限度時間を超える特別の事情がある場合は、特別条項付協定を締結・届出することができます

所定労働時間が8時間未満の事業場で「所定時間超・法定時間以内」の残業は36協定不要

週40時間・1日8時間を超えない範囲の残業は、36協定の対象となる「時間外労働」に該当しません

法定休日以外の休日(祝日等)の労働で週40時間・1日8時間を超えない場合も36協定は不要

祝日労働が「時間外労働」に該当するかどうかは、その週の労働時間合計が40時間を超えるかで判断します

0136協定の締結・届出の必要性(労基法36条)

 労基法32条で規制する労働時間を超えて労働させる場合、または労基法35条の法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し、労基署に届け出る必要があります(労基法36条)。

 272番で解説したとおり、「36協定」とは、労働基準法36条に基づく「時間外労働・休日労働に関する労使協定」の通称です。36協定を締結・届出することにより、使用者は労基法32条・35条違反の罪が成立しないという効果が生じます。

02届出が効力発生要件——締結だけでは不足

 36協定を締結しただけでは足りず、届出が効力発生要件です。36協定の届出により、使用者は労基法32条違反の犯罪が成立しないという効果が生じます。

 労使間で36協定を締結しても、労働基準監督署に届け出ていない場合は、36協定の効力が生じません。この状態で時間外・休日労働をさせると、36協定がない状態と同じく労基法32条・35条違反となります。36協定を締結した後は、速やかに管轄の労働基準監督署に届け出ることが必要です。

注意——締結と届出の両方が必要

36協定は①締結(書面による合意)だけでは効力が生じず、②労基署への届出が効力発生要件です。締結から届出まで時間的な空白ができると、その間に時間外・休日労働をさせた場合は労基法違反となります。締結と同時または速やかに届出を行うことが重要です。

03時間外労働の限度時間——告示が定める基準

 36協定については、「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成10年12月28日労働省告示第154号)」が定められています(労基法36条2項)。時間外労働の限度時間は以下のとおりです。なお、1日当たりの限度時間は定められていません。

期間 時間外労働の限度時間(原則)
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1か月 45時間
2か月 81時間
3か月 120時間
1年間 360時間

 なお、1日当たりの限度時間は告示上定められていません。ただし、実際の残業代(時間外割増賃金)は、1日8時間を超えた時間についても発生しますので、1日当たりの時間外労働時間の把握・管理は残業代計算上も重要です。

04特別条項付協定——限度時間を超える場合

 限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じた時に限り、限度時間を超えて時間外労働を延長することができるものとする協定(特別条項付協定)を締結し、届け出ることもできます。

 特別条項付協定を締結した場合、272番の上限規制表で示したとおり、月100時間未満(かつ2〜6か月の平均が80時間以内)、年720時間(月45時間超は年6か月まで)が絶対的上限となります。これらの絶対的上限は、いかなる特別の事情があっても超えることができません。

特別条項を使えるのは「臨時的な特別の事情」がある場合のみ
特別条項は「通常予見できない業務量の大幅な増加等の臨時的な特別の事情」がある場合にのみ適用できます。毎年繰り返される繁忙期や、慢性的な人員不足を理由に常態的に特別条項を適用することは認められません。特別条項の適用状況の記録・管理を適切に行うことが重要です。

0536協定が不要な場合

 次の2つのケースでは、事前の36協定の締結・労基署長への届出は必要とされていません。

①所定労働時間が8時間未満の事業場で所定時間を超えるが週40時間・1日8時間以内の残業

 所定労働時間が8時間に満たない事業場において所定労働時間を超えて労働させた場合であっても、週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)・1日8時間を超えていない場合は、36協定は不要です。

 例えば、所定労働時間が1日7時間の事業場において、7時間を超えて最大8時間まで働かせることは、法定労働時間の範囲内であるため、36協定なしで行うことができます。ただし、この場合も所定労働時間(7時間)を超えた部分は所定外労働として時間外割増賃金の対象となる可能性がありますので(就業規則の定めによる)、残業代の取り扱いには注意が必要です。

②法定休日でない休日の労働で週40時間・1日8時間を超えない場合

 法定休日ではない休日(祝日等、所定休日)に労働させた場合で、週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)・1日8時間を超えて労働させていない場合は、36協定は不要です。

 例えば、祝日に出勤させた場合でも、その週の実労働時間の合計が40時間を超えない場合は、法定労働時間の範囲内であるため、36協定は不要です。ただし、週40時間を超えた時点で36協定の対象となる「時間外労働」が発生しますので、祝日労働が多い場合は週の累計時間の管理が重要です。

状況 36協定の要否 割増賃金
所定7時間の事業場で7〜8時間労働(週40時間以内) 不要 割増なしの場合あり(就業規則による)
所定7時間の事業場で8時間超の労働(週40時間超) 必要 8時間超・週40時間超の部分に時間外割増
祝日(所定休日)に出勤・週40時間以内 不要 休日割増なし(所定休日のため)
祝日(所定休日)に出勤・週40時間超 必要 週40時間超の部分に時間外割増
法定休日(日曜日等)に出勤 必要 休日割増賃金(35%以上)

06まとめ

 36協定は締結するだけでは足りず、労基署への届出が効力発生要件です。届出後に初めて、使用者は労基法32条・35条違反の罪が成立しないという効果が生じます。時間外労働の限度時間は、1週間15時間・1か月45時間・1年間360時間等(1日当たりの限度時間は定められていません)であり、特別の事情がある場合には特別条項付協定を締結・届出することもできます。

 所定労働時間が8時間未満の事業場で所定時間を超えるが週40時間・1日8時間以内の場合、または法定休日でない休日(祝日等)に労働させて週40時間・1日8時間を超えない場合は、36協定は不要です。36協定の設計・締結・届出については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。36協定の締結・届出・労働時間管理・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 36協定を締結するだけで効力がありますか(届出は不要ですか)。

A. 届出が必要です。36協定は締結するだけでは効力が生じません。労働基準監督署への届出が効力発生要件であり、届出をして初めて「時間外・休日労働をさせても労基法32条・35条違反の罪が成立しない」という効果が生じます。締結後は速やかに管轄の労基署に届け出ることが必要です。

Q2. 時間外労働の限度時間は1日単位でも定められていますか。

A. 告示では1日当たりの限度時間は定められていません。1週間・2週間・4週間・1か月・2か月・3か月・1年間の単位で限度時間が定められています(最短で1週間15時間、最長で1年間360時間)。ただし、1日8時間を超えた時間は実際の残業代計算において時間外労働となりますので、1日当たりの時間外労働時間の管理は重要です。

Q3. 特別条項付協定とは何ですか。

A. 通常の36協定の限度時間(月45時間・年360時間等)を超えて時間外労働をさせる必要がある特別の事情が生じた場合に限り、限度時間を超えることができる旨を定める協定です。特別条項付協定の絶対的上限は月100時間未満・年720時間(月45時間超は年6か月まで)です。常態的な繁忙や人員不足を理由に適用することはできません。

Q4. 所定労働時間が6時間の会社が残業させた場合、36協定は必要ですか。

A. 1日の残業が8時間以内かつその週の合計労働時間が40時間以内であれば、36協定は不要です。所定6時間の会社で最大8時間まで働かせることは、法定労働時間の範囲内であるため36協定なしで可能です。ただし、8時間を超えた部分や週40時間を超えた部分については36協定が必要となります。

最終更新日:2026年5月10日


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