労働問題489 「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則の作成届出義務があるとされていますが(労基法89条)、労働者の人数は企業単位・事業場単位のどちらで考えればいいのでしょうか。
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「常時10人以上」は事業場単位で判断するのが一般 就業規則の作成届出義務における「常時10人以上の労働者を使用する」かどうかは、事業場単位で判断するのが一般的です。企業全体の人数ではなく、各事業場ごとの人数で判断します。 |
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A事業場7名・B事業場7名の場合、どちらにも作成届出義務はない 各事業場がそれぞれ独立した事業場であり、いずれも常時10人未満(7名)である場合には、どちらの事業場にも就業規則の作成届出義務はありません。 |
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義務がなくても就業規則を作成・整備しておくことが重要 作成届出義務がない事業場でも、労務管理の基準を明確にするために就業規則を整備しておくことは実務上重要です。 |
01就業規則の作成届出義務の概要
労基法89条は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければならないと定めています。
この「常時10人以上の労働者を使用する」という要件が、企業全体で判断するのか、それとも各事業場ごとに判断するのかという問題が生じます。特に、複数の事業場を持つ企業において、企業全体の合計は10人以上であるが各事業場は10人未満である場合に問題となります。
02事業場単位で判断する理由
反対説もありますが、常時使用する労働者の人数は事業場単位で考えるのが一般です。その主な理由は以下の通りです。
事業場単位で判断する理由
① 労基法は事業に使用される労働者に適用されるものであること
労基法の適用単位は「事業場」であり、企業全体ではなく各事業場を基準としています。
② 労基法90条が意見聴取を事業場単位で行うものとしていること
就業規則の作成・変更の際の労働者代表への意見聴取(労基法90条)は事業場単位で行うものとされており、就業規則に関する手続全体が事業場単位を基準としています。
03具体例による解説
具体例
ある企業が、A事業場で7名、B事業場で7名の労働者を常時使用している場合。
A事業場とB事業場がそれぞれ独立した事業場の場合、いずれの事業場についても常時使用する労働者は7名であり、「常時10人以上」の要件を満たしていません。
したがって、この事例では、A事業場・B事業場のいずれについても、就業規則の作成届出義務はないことになります。企業全体では14名であっても、事業場単位で判断されるため、各事業場が10人未満であれば義務は生じません。
逆に言えば、企業全体では10人未満であっても、特定の事業場が常時10人以上の労働者を使用していれば、その事業場については就業規則の作成届出義務が生じます。
04義務がない場合でも就業規則を整備すべき理由
作成届出義務がない事業場(常時10人未満)であっても、就業規則を作成・整備しておくことは実務上重要です。
就業規則は、賃金・労働時間・休日・休暇・懲戒処分などの労働条件と職場のルールを明確にするものです。義務がない場合でも、就業規則が整備されていないと、労使間でルールを巡るトラブルが生じた際に、会社が不利な立場に立たされることがあります。特に、懲戒処分(解雇・減給等)を行うためには、就業規則にその根拠が必要とされる場合がほとんどです。
10人未満の小規模事業場でも、問題社員への対応や労働条件の明確化のために、就業規則を整備しておくことをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 「常時10人以上」の「常時」とはどういう意味ですか。
A. 「常時」とは、一時的・臨時的に10人以上になる場合を除いた、通常の状態として10人以上の労働者を使用していることを意味します。繁忙期だけ10人以上になる場合や、臨時雇用のスポット採用で一時的に10人以上になる場合は含まれません。パート・アルバイトも人数に含まれます。
Q2. 就業規則を届け出なかった場合はどうなりますか。
A. 就業規則の作成・届出義務に違反した場合、30万円以下の罰金刑が規定されています(労基法120条1号)。また、届出がなくても就業規則が実質的に存在し周知されていれば、労働契約の内容として効力を持つ場合があります。
Q3. 複数の事業場がある場合、各事業場で別々の就業規則を作成する必要がありますか。
A. 各事業場が独立した事業場であれば、それぞれの事業場の就業規則を作成し、各事業場を管轄する労働基準監督署に届け出る必要があります。同一内容の就業規則を各事業場に適用する場合でも、届出は各事業場ごとに行うことが求められます。
最終更新日:2026年2月25日