リハビリ出社とはどういうものですか?
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リハビリ出社は法律上の制度ではなく、原則として導入義務はない リハビリ出社は法律上の制度ではなく、定義や内容が明確に決まっているものではありません。労使間の合意や就業規則等の定めがない場合、原則として、使用者にリハビリ出社制度を導入・実施する義務はありません。 |
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リハビリ出社をしたことが当然に「復職」となるわけではない リハビリ出社をしたことをもって、使用者が労働者を復職させる扱いをしたとはいえないとして、復職該当性を否定した裁判例があります(西濃シェンカー事件・東京地裁平成22年3月18日判決)。 |
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実態によっては賃金(最低賃金)の支払い義務が生じる リハビリ出社中の労務提供は不完全なものであり当然に賃金が発生するわけではありませんが、実態として使用従属関係が認められる場合には、定めがなくても最低賃金法の適用を受けることになります。 |
目次
01リハビリ出社とは
私傷病で休職していた社員が復職を目指す際に、いきなり通常勤務に戻るのではなく、段階的に職場に慣らしていくために行われるのが、いわゆる「リハビリ出社」(試し出勤、リハビリ出勤などとも呼ばれます)です。特に、メンタルヘルス不調による休職からの復職場面でよく問題になります。
もっとも、リハビリ出社は法律上の制度ではなく、定義や内容が明確に決まっているものではありません。「リハビリ出社」と一口にいっても、その内容は会社や事案によってさまざまです。具体的には、次のような形態が挙げられます。
リハビリ出社の主な形態
模擬出勤
通常の通勤時間と同様の時間帯に、短時間または通常の勤務時間、デイケア等で模擬的な軽作業を行ったり、図書館などで時間を過ごしたりする。
通勤訓練
職場近くまで出勤し、一定時間を過ごした後に帰宅する。実際の通勤に体を慣らすことを目的とする。
試験出勤(試し出勤)
本来の職場などに、試験的に一定期間継続して出勤する。
このように、リハビリ出社には、職場外で行うもの(模擬出勤・通勤訓練)から、実際の職場に出勤するもの(試験出勤)まで、さまざまな段階・形態があります。どのような内容で行うかによって、後述する復職該当性や賃金の問題の判断も変わってきます。
02リハビリ出社の導入義務はあるか
会社経営者として気になるのは、「会社にリハビリ出社の制度を設けたり、実施したりする義務があるのか」という点でしょう。
この点、労使間の合意や就業規則等の定めがない場合、例外的に使用者の配慮義務として求められることはあっても、原則として、使用者にリハビリ出社制度を導入・実施する義務はありません。リハビリ出社は法律上の制度ではないため、会社が必ず設けなければならないものではないのです。
もっとも、「例外的に使用者の配慮義務として求められることはある」という点には注意が必要です。例えば、休職していた社員が復職の意向を示し、主治医や産業医が段階的な復職(リハビリ出社)を経れば就労可能と判断しているような場合に、会社が一切の配慮をせず通常勤務への即時復帰のみを求めて復職を認めなかったときには、安全配慮義務や復職の判断のあり方との関係で、会社の対応が問題視される余地があります(私傷病休職からの復職判断については514番参照)。
したがって、制度として導入する義務は原則ないものの、復職場面での個別の対応として、リハビリ出社を含む段階的な復職への配慮が求められる場合があることは理解しておくべきです。
03リハビリ出社は「復職」に当たるか
リハビリ出社をめぐって実務上特に重要なのが、「リハビリ出社をしたことで、復職したことになってしまうのか」という問題です。これは、私傷病休職において、休職期間満了までに「復職」できなければ自動退職(または解雇)となる扱いをしている場合に、特に深刻な争点となります。
仮に、リハビリ出社をさせたことが「復職」に当たると評価されてしまうと、会社としては「まだ通常勤務ができる状態か見極めるためにリハビリ出社をさせていただけなのに、復職を認めたことになってしまった」という事態になりかねません。
復職該当性を否定した裁判例
リハビリ出社が復職に当たるか否かについては、使用者がリハビリ出社させた時点で当該労働者を復職させる扱いをしたとはいえないとして、復職該当性を否定した裁判例があります(西濃シェンカー事件・東京地裁平成22年3月18日判決)。
この裁判例は、リハビリ出社が、あくまで復職の可否を見極めるための段階的な措置であり、それ自体が「復職」を意味するものではないとの考え方を示したものといえます。
もっとも、これは「リハビリ出社は絶対に復職に当たらない」ということを意味するものではありません。リハビリ出社の実態が、もはや通常勤務と変わらないようなもの(後述の使用従属関係が認められるような実態)であれば、実質的に復職したものと評価される余地もあります。リハビリ出社が復職に当たらないと整理したいのであれば、その位置付け(復職の可否を見極めるための措置であること)を就業規則やリハビリ出社に関する取り決めの中で明確にしておくことが重要です。
04リハビリ出社中の賃金と最低賃金法の適用
リハビリ出社中の賃金をどう扱うかも、重要な実務上の論点です。
まず原則として、リハビリ出社中の労務提供は、債務の本旨に従ったものとはいえず、不完全な労務提供であり、労働契約上の賃金が当然に発生するものではありません。通常勤務ができない状態で、軽作業や通勤訓練などを行っているにすぎない以上、フルタイムの通常勤務と同じ賃金が当然に発生するわけではない、ということです。
もっとも、賃金の有無や額について、労使間の合意や就業規則等で定めている場合は、その合意や就業規則等によることになります。リハビリ出社について一定の手当や賃金を支払う旨を定めていれば、それに従って支払うことになります。
実態によっては最低賃金法の適用を受ける
注意が必要なのは、リハビリ出社の実態が「労働」といえる場合です。例えば、休職前と同様に時間を拘束したり、休職前と同様の業務をさせたり、業務の諾否の自由がなかったりする場合には、労使間の合意や就業規則の規定の有無にかかわらず、リハビリ出社中の労働者と使用者の間に使用従属関係が成立します。そして、その労働者が労働基準法上の労働者に該当すれば、労使間の合意や就業規則の規定がない場合でも、最低賃金法の適用を受けることになります。
つまり、「リハビリ出社だから賃金は不要」と整理していても、実態として通常の労働と変わらないような働かせ方をしていれば、最低賃金以上の賃金を支払う義務が生じるということです。リハビリ出社を無給または低額で行わせる場合には、その実態が「労働」と評価されないように、業務内容・時間拘束・諾否の自由などに十分配慮する必要があります。
05会社経営者が押さえるべき実務上の注意点
リハビリ出社を実施する場合、会社経営者としては、その位置付けと条件を、あらかじめ明確に取り決めておくことが重要です。曖昧なまま運用すると、「復職したことになるのか」「賃金を支払うべきか」といった点で、後にトラブルになりやすいためです。
具体的には、就業規則やリハビリ出社に関する個別の取り決めの中で、(1) リハビリ出社が復職そのものではなく、復職の可否を見極めるための措置であること、(2) リハビリ出社の内容(場所・時間・作業内容)、(3) 賃金や手当の有無・金額、(4) 期間、(5) リハビリ出社の結果を踏まえて復職の可否を判断すること、などを明確にしておくことが望ましいです。
また、リハビリ出社の実態が「労働」と評価されないようにするためには、休職前と同様の業務をさせたり、ノルマを課したり、時間を厳格に拘束したりしないよう注意が必要です。あくまで復職に向けた慣らし・訓練としての位置付けを保つことが、賃金(最低賃金)の問題を避けるうえでも重要です。リハビリ出社の制度設計や個別の運用について不安がある場合は、使用者側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 休職中の社員からリハビリ出社をさせてほしいと求められました。応じる義務はありますか。
A. リハビリ出社は法律上の制度ではなく、就業規則等に定めがなければ、原則として実施する義務はありません。ただし、主治医・産業医が段階的復職を経れば就労可能と判断しているのに、会社が一切の配慮なく即時の通常勤務復帰のみを求めて復職を拒むと、復職判断のあり方や配慮義務との関係で問題となる余地があります。実施するかどうかは、医学的見解や本人の状態を踏まえて慎重に判断し、実施する場合は位置付け・条件を明確にすることをお勧めします。
Q2. リハビリ出社中に休職期間が満了してしまう場合、自動退職になりますか。
A. リハビリ出社をしていても、それが「復職」に当たらない限り、休職期間は進行し続けると整理されるのが一般的です(西濃シェンカー事件参照)。そのため、リハビリ出社中に休職期間が満了し、なお通常勤務ができる状態に至っていなければ、就業規則の定めに従い自動退職等となる可能性があります。ただし、復職可否の判断やリハビリ出社の位置付けが争点になりやすい場面ですので、休職期間満了が近い社員のリハビリ出社については、事前に弁護士に相談することをお勧めします。
Q3. リハビリ出社を無給で実施したいのですが、問題ありますか。
A. リハビリ出社中の労務提供は不完全なものであり、賃金が当然に発生するわけではないため、就業規則等で無給と定めること自体は可能です。ただし、実態として休職前と同様の業務をさせる、時間を拘束する、業務の諾否の自由がないといった「労働」と評価される働かせ方をすると、使用従属関係が認められ、定めがなくても最低賃金法の適用を受けます。無給で実施するなら、軽作業・短時間・諾否の自由を確保するなど、「労働」と評価されない形にとどめることが重要です。
最終更新日:2026年2月25日