この記事の結論
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懲戒処分の有効要件は3つ

懲戒処分の有効要件は、①就業規則の懲戒事由に該当すること、②処分が相当であること、③手続が相当であることの3つです。これらを満たさない懲戒処分は無効となります。

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不当に重い処分は権利の濫用として無効になる

処分の内容は使用者の裁量に委ねられていますが、行為の態様・動機・影響・処分歴等に照らして不当に重い処分を選択した場合、懲戒権の濫用として無効となります(労契法15条)。

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規定の有無を問わず、本人に弁明の機会を与えるのが妥当

手続の相当性として、本人への弁明機会の付与などが問題となります。懲戒処分が制裁罰としての性格を持つことに鑑みれば、規定の有無を問わず本人に弁明の機会を付与するのが妥当です。

01懲戒処分の有効要件(3要件)

 懲戒処分の有効要件は、①就業規則の懲戒事由に該当すること、②処分が相当であること、③手続が相当であることです。これらの要件をすべて満たす必要があり、いずれかを欠く懲戒処分は、懲戒権を濫用したものとして無効となります(労契法15条)。

 なお、懲戒処分をするためには、その前提として、就業規則に懲戒事由と懲戒の種類が定められ、これが労働者に周知されていることが必要です(532番参照)。以下では、3つの有効要件を順に説明します。

02①懲戒事由への該当

 第一の要件は、労働者の行為が、就業規則に定められた懲戒事由に該当することです。懲戒事由には、経歴詐称、業務命令違反、職場規律違反、無断欠勤、会社物品の私用、私生活上の非行、二重就職・兼業規制などがあります。

懲戒事由の例

・経歴詐称
・業務命令違反
・職場規律違反
・無断欠勤
・会社物品の私用
・私生活上の非行
・二重就職・兼業規制違反 など

 ここで重要な注意点があります。懲戒処分時に使用者が認識していなかった非違行為は、原則として、当該懲戒処分が有効であることの理由にはできません。つまり、懲戒処分を行った後に発覚した別の問題行為を、後付けで「あの処分はこの行為も理由だった」として処分の正当化に用いることはできないということです。懲戒処分は、その時点で会社が認識していた非違行為を理由として判断されます。

03②処分の相当性

 第二の要件は、選択した処分が、懲戒事由とされた行為に照らして相当であることです。前提として、懲戒処分の種類を就業規則に明確に定める必要があります。懲戒処分の種類としては、けん責、減給、降格、出勤停止、懲戒解雇等が考えられます。

 懲戒処分の内容をどのようにするかは使用者の裁量に委ねられていますが、使用者が不当に重い処分を選択した場合、権利の濫用として無効となります。例えば、軽微な違反に対していきなり懲戒解雇を行うようなケースは、相当性を欠くとして無効とされる可能性が高くなります。

処分の相当性を判断する際の考慮要素

・懲戒事由とされた行動の態様
・動機
・業務に及ぼした影響
・企業の置かれている状況
・損害の程度
・労働者の態度
・処分歴
・使用者側の原因 など

 これらの事情を総合的に考慮して、選択した処分が相当か否かが判断されます。懲戒処分は段階的・比例的に行うことが原則であり、処分の重さが行為に見合っているかを慎重に判断する必要があります(出勤停止の日数設計については522番も参照)。

04③手続の相当性

 第三の要件は、懲戒処分に至る手続が相当であることです。手続の相当性としては、本人への弁明機会の付与、賞罰委員会の開催、労働組合等の手続的保障をしていたかが問題となります。

 就業規則や労働協約に、懲戒処分の手続(賞罰委員会の開催・弁明機会の付与等)が定められている場合には、その手続を履践することが必要です。定められた手続を踏まずに行った懲戒処分は、手続の相当性を欠くとして無効となるおそれがあります。

 さらに、就業規則等に手続の定めがない場合であっても、懲戒処分が刑罰に類似する制裁罰としての性格を有することや、懲戒処分が労働者に対し与える不利益を鑑みると、規定の有無を問わず本人に弁明の機会を付与するのが妥当といえます。本人に言い分を述べる機会を与え、その内容を記録しておく(始末書の活用については535番参照)ことが、手続の相当性を確保するうえで重要です。

経営上のポイント 懲戒処分の有効要件は、①就業規則の懲戒事由への該当、②処分の相当性、③手続の相当性の3つです。処分の内容は使用者の裁量に委ねられていますが、不当に重い処分は権利の濫用として無効になります。また、就業規則に手続の定めがなくても、本人に弁明の機会を付与するのが妥当です。懲戒処分時に認識していなかった非違行為は処分の理由にできない点にも注意し、処分を検討する際は弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 懲戒処分の後に、別の重大な問題行為が発覚しました。これを処分の理由に追加できますか。

A. 懲戒処分時に使用者が認識していなかった非違行為は、原則として、その懲戒処分が有効であることの理由にすることはできません。後から発覚した行為を後付けで処分の正当化に用いることはできないということです。新たに発覚した行為について処分が必要であれば、それを理由とする別個の懲戒処分を、改めて手続を踏んで検討することになります。ただし、同一の行為に対して二重に処分すること(二重処分)は原則として認められない点にも注意が必要です。

Q2. 就業規則に弁明の機会に関する定めがありません。弁明の機会を与えなくてもよいですか。

A. 就業規則に弁明の機会に関する定めがない場合でも、本人に弁明の機会を付与することをお勧めします。懲戒処分が制裁罰としての性格を持ち、労働者に大きな不利益を与えることに鑑みると、規定の有無を問わず弁明の機会を与えるのが妥当と考えられます。弁明の機会を与えずに行った懲戒処分は、手続の相当性を欠くとして無効と判断されるリスクがあります。本人の言い分を聞き、その内容を記録しておくことが重要です。

Q3. 同じ違反行為でも、処分の重さは社員によって変えてよいですか。

A. 処分の相当性の判断では、過去の同種事案に対する処分との均衡(処分の公平性)も考慮されます。過去に同程度の違反を軽い処分にとどめていたにもかかわらず、特定の社員だけを重く処分すると、相当性を欠くとして無効とされたり、恣意的・差別的な処分と評価されるリスクがあります。行為の態様・動機・影響・処分歴等に違いがあれば処分に差を設けることも許されますが、合理的な理由なく処分に差をつけることは避けるべきです。

最終更新日:2026年2月25日


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