この記事の結論
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主治医の「就労可能」の診断書があっても、会社が直ちにその内容に拘束されるわけではない

主治医は患者の立場に近く、職場の実情を十分に把握していないまま診断書を出すことがあります。主治医面談・産業医の意見を組み合わせた慎重な判断が必要です。

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会社独自の判断のみで就労拒絶を繰り返すことは「不当な就業排除」のリスクがある

診断内容に疑問がある場合は、医学的な手順(主治医面談・産業医の意見聴取)を経て反証を積み重ねることが重要です。

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 就業可否の判断とは、精神疾患の発症が疑われる社員が「債務の本旨に従った労務提供」をできる状態にあるかどうかを、医学的根拠に基づいて会社が評価するプロセスをいいます。会社の管理職が主観的に「まだ働けるはずだ」と判断したり、逆に主治医の「就労可能」という診断書を無条件に信用したりすることは、どちらも大きなリスクをはらんでいます。

 適切な判断を行うためには、専門医の診断・産業医の意見・主治医との連携という3つの柱を組み合わせた対応が求められます。本ページでは、会社側専門の弁護士の視点から、就業可否の判断に際して会社が取るべき対応を解説します。

01就業可否の判断には専門医の診断が必要です

 結論:精神疾患の発症が疑われる場合の就業可否の判断は、医学的な根拠に基づいて行う必要があり、管理職や人事担当者の主観的な判断のみに頼ることはできません。会社の管理職や人事担当者が医学的根拠なく「まだ働けるはずだ」「診断書は大げさだ」と判断することは、安全配慮義務違反のリスクを高めます。

 反対に、社員が提出した主治医の診断書に「就労可能」と書かれているからといって、会社が直ちにその内容に拘束されるわけでもありません。主治医は患者の立場に近い傾向があり、職場の実情を十分に把握していないまま就労可能の診断書を出すことがある点を、会社側は理解しておく必要があります。就業可否の判断においては、主治医・産業医・会社の三者が連携しながら、医学的な根拠に基づいて慎重に判断することが求められます。

02主治医の診断書の信用性を確認する方法

 結論:診断内容に疑問がある場合は、社員の同意を得たうえでの主治医面談と、産業医の意見の活用という2つの方法で信用性を確認することが重要です。本人が提出した主治医の診断書の内容に疑問がある場合(例えば、明らかに就労困難な状態なのに「軽作業なら可能」と書かれている等)は、以下の方法で確認します。

 まず、主治医への面談(照会)を実施することが考えられます。社員の同意を得た上で、主治医に対して職場の実際の業務内容・作業環境・業務負荷を伝え、その状況下での就労可否についての意見を求めます。主治医が職場環境を踏まえた意見を改めて述べることで、診断の精度が上がります。次に、産業医の意見を活用することも有効な方法です。精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医に、主治医の診断書・職場環境・業務内容を踏まえた就業上の配慮事項についての意見を聴きます。産業医は会社と社員の双方の事情を把握できる立場にあり、中立的な観点から就業可否を評価することができます。

03会社独自の判断で就労拒絶することのリスク

 結論:主治医が「就労可能」と判断しているにもかかわらず会社が独自の判断で就労拒絶を繰り返すことは、「不当な就業排除」として損害賠償請求を受けるリスクがあります。会社が独自の判断で就労を拒絶・帰宅命令を繰り返す場合、社員側から損害賠償請求を受けるリスクがあります。

 主治医の診断内容に疑問がある場合は、会社独自の判断で行動するのではなく、上述のような医学的な手順を経て反証を積み重ねることが重要です。また、産業医や指定医への受診を業務命令として命じる場合も、就業規則にその根拠規定が必要となります。就業規則の整備についても、早い段階で会社側専門の弁護士に相談することをお勧めします。

04「就労可能」の診断書を鵜呑みにすることの危険性

 結論:主治医が「就労可能」と判断していても、実際に職場環境に戻った際に症状が再発するケースは珍しくないため、産業医の意見や試し出勤制度を組み合わせた段階的な復職対応が必要です。特に精神疾患の場合は、症状が一時的に安定したように見えても、職場のストレス環境に戻ると再び悪化することがあります。

 復職を認める前には、産業医の意見を踏まえた復職可否の判断・試し出勤制度の活用・職場環境の調整など、段階的な対応が求められます。復職後の就業制限やフォローアップ体制についても、あらかじめ主治医・産業医・会社の三者で共有しておくことが重要です。就業可否の判断・主治医面談の進め方・産業医との連携・復職対応など、精神疾患社員への対応は多くの法的問題が絡み合っています。初期段階から会社側専門の弁護士に相談することが、後のトラブルを防止する上で最も効果的です。

診断書の取扱いの比較|適切な対応/NGな対応

○ 適切な対応 ✕ NGな対応(法的リスク)
主治医面談・産業医の意見を組み合わせて判断する 主治医の診断書のみを鵜呑みにして即座に復職させる
職場の実情を正確に主治医へ伝えたうえで意見を求める 職場環境を伝えないまま診断内容のみで判断する
疑問がある場合は医学的手順を踏んで反証を積み重ねる 会社独自の判断で就労拒絶を繰り返す
試し出勤制度・段階的復帰計画を活用する 診断書一枚で機械的に通常勤務へ復帰させる

05よくある質問(FAQ)

Q. 主治医の診断書に疑問がある場合、会社はどのように対応すべきですか。

社員の同意を得た上で主治医への面談を実施し、職場の業務内容・作業環境を正確に伝えた上での就労可否の意見を求めることが有効です。また、産業医に主治医の診断書・職場環境を踏まえた就業上の配慮事項についての意見を聴くことも重要な対応です。会社独自の判断で就労拒絶することは「不当な就業排除」として損害賠償請求を受けるリスクがありますのでご注意ください。

Q. 産業医がいない中小企業はどのように対応すればよいですか。

産業医の選任義務は常時50人以上を使用する事業場に生じます。50人未満の中小企業では産業医の選任義務はありませんが、地域産業保健センター(産保センター)の産業医サービスを利用することができます。また、会社が指定する医療機関への受診を命じることも、就業規則に根拠規定があれば可能です。具体的な対応方法は弁護士に相談することをお勧めします。

Q. 主治医の「就労可能」の診断書があれば復職を認めなければなりませんか。

主治医の就労可能の診断書は復職判断の一要素にすぎません。産業医の意見・職場環境・業務への適応可能性など、総合的に判断することが求められます。主治医の診断書だけで機械的に復職を認めることは、再発リスクの見落としや職場環境の悪化につながる可能性があります。復職判断のプロセスについては、あらかじめ就業規則に定めておくことが重要です。

経営上のポイント 主治医の「就労可能」の診断書があっても、会社が直ちにその内容に拘束されるわけではありません。主治医面談・産業医の意見を組み合わせて慎重に判断し、診断内容に疑問がある場合は医学的な手順を経て反証を積み重ねることが、「不当な就業排除」のリスクを避ける実務対応です。労務提供可否の判断基準となる業務の選び方とあわせて、就業可否の判断プロセス・産業医との連携について会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労務提供の可否判断・主治医との連携でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月9日


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