高年齢者雇用確保措置を取らない場合、会社にはどのようなリスクがあるか
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高年法9条違反は、助言・指導・勧告を経て企業名が公表される可能性がある(高年法10条) 団体交渉要求や社会的評価の低下・人材確保への悪影響というリスクも生じます。 |
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高年法9条には私法的効力がなく、根拠規定がない限り再雇用等を命じる判決は得られない ただし継続雇用制度の基準を満たす者を恣意的に拒否した場合は、雇止め法理の類推適用により再雇用が認められることがあります。 |
目次
高年齢者雇用確保措置を取らない場合のリスクとは、高年法9条に違反して定年の引上げ・継続雇用制度の導入・定年制の廃止のいずれの措置も講じなかった事業主が直面する、行政指導・企業名公表等の行政上のリスクと、労働組合対応・社会的評価低下等の経営上のリスクをいいます。「うちは高年齢者雇用確保措置を整えていないが、実際にどんなリスクがあるのか」というご相談を受けることがあります。
本ページでは、高年齢者雇用確保措置を取らない場合の行政上・経営上のリスクと、高年法9条の私法的効力の限界について、会社側専門の弁護士が解説します。
01高年法9条違反の行政上のリスク
結論:高年齢者雇用確保措置を取らないことは高年法9条に違反し、厚生労働大臣から公共職業安定所を通じて必要な指導及び助言を受けたり、措置を講ずべきことを勧告されたりする可能性があり、勧告に従わなかった場合はその旨を公表される可能性があります(高年法10条)。行政対応は、指導・助言→勧告→公表という段階を踏んで進みます。
企業名が公表されるという事態は、対外的な信用に直結する重大なリスクです。行政からの指導・助言があった段階で、速やかに是正することが望ましいです。
02企業の社会的評価・団体交渉のリスク
結論:高年齢者雇用確保措置を取らない会社は、合同労組などの労働組合から団体交渉を申し入れられるリスクがあるほか、コンプライアンス意識の低い会社であると社会一般から評価され、優秀な人材が集まりにくくなるリスクもあります。定年退職を控えた社員本人や、その社員が加入した合同労組から、高年齢者雇用確保措置を講じるよう団体交渉を要求されるケースは珍しくありません。
さらに、高年齢者雇用確保措置を取らない会社は、コンプライアンスの意識が低い会社であると公言しているようなものですから、どうしても社会一般からの評価が低くなりがちです。結果として、採用活動において優秀な人材が集まりにくくなるという間接的な不利益も生じ得ます。
03高年法9条には私法的効力がない
結論:もっとも高年法9条には、これに違反した場合に定年の定めを無効としたり再雇用等を義務付けたりする私法的効力はないと考えられており(NTT西日本事件・大阪高裁平成21年11月27日判決)、使用者に再雇用等を義務付ける就業規則等の根拠規定がない限り、定年退職した高年齢者は訴訟で再雇用等を命じる判決を獲得することはできません。同判決は、「高年雇用安定法9条に私法的効力のないことは、原判決のとおりであり、同法の性格・構造・文理・違反の制裁の規定、法改正の経緯及び立法者の意思、並びに私法的効力の違反の効果が不確定であることからして」私法的効力を否定する解釈が相当であると判示しています。
したがって、高年法9条に違反して高年齢者雇用確保措置を取らなかったとしても、使用者に再雇用等を義務付ける就業規則等の根拠規定がない限り、定年退職した高年齢者は、訴訟で再雇用等を命じる判決を獲得することはできないことになります。ただし、この場合でも、継続雇用の期待的利益の侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)は認められ得る点に留意が必要です。
04例外|継続雇用制度の基準を満たす者を拒否した場合
結論:ただし、継続雇用制度を導入しながら、その基準を満たす労働者からの継続雇用を客観的合理的理由なく拒否した場合は、雇止め法理の類推適用により再雇用契約の成立が認められることがあります(津田電気計器事件・最高裁第一小法廷平成24年11月29日判決)。同判決は、事業主が高年法9条に基づき継続雇用制度に関する規程を定めて周知していた事案において、労働者が当該規程所定の基準を満たしていたにもかかわらず事業主が継続雇用を拒否したことについて、「他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」として、雇用契約終了後も規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているとみるのが相当であると判断しました。
つまり、「高年法9条に私法的効力がない」ことと、「自社で導入した継続雇用制度の基準を満たす社員を恣意的に拒否できる」ことは別問題です。継続雇用制度を導入する場合は、基準を明確にした上で、その基準に該当する社員については適切に継続雇用を行う必要があります。高年齢者雇用確保措置の整備・継続雇用制度の運用リスクについては、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。会社側専門の弁護士として、会社側の立場から実務的なアドバイスを提供しています。
対応の比較|適切な対応/NGな対応
| ○ 適切な対応 | ✕ NGな対応(行政指導・再雇用義務のリスク) |
|---|---|
| 継続雇用制度を導入し客観的な基準を明確に定める | 高年齢者雇用確保措置を全く講じないまま放置する |
| 基準を満たす労働者の継続雇用は適切に行う | 基準を満たす労働者を恣意的な理由で拒否する |
| 行政からの指導・勧告には真摯に対応する | 指導・勧告を無視し企業名公表のリスクを高める |
| 制度設計・運用の適法性を弁護士に確認する | 私法的効力がないことを理由に対応を怠る |
05よくある質問(FAQ)
Q. 高年齢者雇用確保措置を取らないと、必ず企業名が公表されますか。
直ちに公表されるわけではありません。まず厚生労働大臣(公共職業安定所を通じて)から指導・助言が行われ、それでも改善されない場合に勧告がなされ、勧告に従わなかった場合に初めて企業名が公表される可能性があります(高年法10条)。ただし、行政対応を放置すること自体が企業イメージの低下につながるため、早期の是正が望ましいです。
Q. 継続雇用制度の基準を満たす社員を会社の判断で拒否することはできますか。
客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ、拒否することは難しいと考えられます。津田電気計器事件最高裁判決は、基準を満たす労働者の継続雇用を合理的理由なく拒否した事案について、雇止め法理の類推適用により再雇用契約の成立を認めています。継続雇用を拒否する場合は、就業規則の解雇事由・退職事由に該当する等の客観的な事情が必要です。
Q. 高年齢者雇用確保措置を導入していない会社は、今からでも整備すべきですか。
はい、可能な限り早期に整備することをお勧めします。高年法9条違反の状態を放置することは行政指導・企業名公表・労働組合対応等のリスクを高めるだけでなく、人材確保の観点からも不利益となります。自社の実情に合った措置(継続雇用制度・定年引上げ・定年廃止)を検討し、就業規則を整備することが重要です。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。高年齢者雇用確保措置のリスク管理でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年7月10日