この記事の結論
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保障給が一切ない「完全出来高払制」は労働基準法27条違反。保障給を設ければ出来高払制自体は可能

労働基準法27条は、出来高払制の労働者に労働時間に応じた一定額の賃金保障を義務付けています。保障給のない完全出来高払制は違法で、30万円以下の罰金の対象です。

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出来高払制でも残業代の支払義務あり。割増は0.25分のみ(1.0倍相当は出来高賃金に含む)

残業代の基礎時給は「総賃金額÷総労働時間数」で算出します。基礎部分の1.0倍相当は出来高賃金に含まれるため、割増分(時間外0.25等)を別途支払います。

 営業職や歩合制の仕事で、売上や成果に連動した出来高払制(請負制)の賃金体系を採用したいというご相談を受けることがあります。完全出来高払制とは、労働時間にかかわらず成果(出来高)のみで賃金を決定し、保障給を一切設けない賃金制度をいい、労働基準法27条により禁止されています。出来高払制は成果主義の観点から一定の合理性がありますが、法律上「完全出来高払制」にすることはできません。

 労働基準法27条は、出来高払制で使用する労働者についても最低限の賃金保障を義務付けています。保障給のない完全出来高払制は違法であり、30万円以下の罰金の対象となります。会社側専門の弁護士の立場から、出来高払制の法的要件と残業代リスクについて解説します。

01労働基準法27条の保障給義務

 結論:保障給が一切ない完全出来高払制は労働基準法27条違反であり、30万円以下の罰金の対象です。

 労働基準法27条は「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定めています。この規定に違反した場合、同法120条1号により30万円以下の罰金が科されます。

 つまり、保障給がまったくない完全出来高払制は違法です。出来高払制を採用する場合でも、労働時間に応じた一定額の保障給を設けることが必要です。保障給の額について法律上の具体的な数値の定めはありませんが、実態として最低賃金以上でなければならないことはいうまでもありません。

02出来高払制でも残業代の支払義務がある

 結論:出来高払制でも、法定労働時間を超える残業には割増賃金の支払義務があります。

 出来高払制を採用している場合でも、法定労働時間(週40時間・1日8時間)を超える残業については、割増賃金を支払う義務があります。ただし、出来高払制における残業代の計算方法は、月給制・時給制とは異なります。

 出来高払制の場合、残業代の算定基礎となる時給単価は「当該賃金計算期間の総賃金額÷当該期間の総労働時間数」によって算出します(労働基準法施行規則19条1項6号)。このようにして算出した時給単価に割増率を掛けて割増賃金を算出しますが、出来高部分(変動賃金)に対する割増率は、時間外労働0.25・深夜労働0.25・休日労働0.35です。基礎部分の1.0倍相当は、時間外労働の時間を含む総労働時間を稼働して得た出来高賃金の中に既に含まれているとみなされるため、割増部分のみを追加で支払えば足りることになります。

03出来高払制の設計における注意点

 結論:保障給は労働時間に応じた設計とし、最低賃金を下回らない水準で就業規則に明確に規定する必要があります。

 出来高払制を導入する際は、就業規則・賃金規程において保障給の額・出来高の算定方法・残業代の計算方法を明確に規定することが必要です。まず、保障給は「労働時間に応じ」た設計にすることが求められます。月額固定で支給するのではなく、実際の労働時間に比例した形で保障給を算出する方式が法27条の趣旨に合致します。次に、出来高部分の計算基準(単価・対象業績・算定期間)を明確にすることが必要です。曖昧な基準は労使紛争の原因となります。また、残業代の計算方法についても就業規則に記載し、給与明細で明示することが求められます。

 保障給の具体的な水準については、行政解釈上の目安があります。行政通達は、賃金構成のうち固定給の部分が賃金総額のおおむね6割程度以上を占めている場合には、労働基準法27条にいう「請負制で使用する」場合に該当しないと解しています(昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発150号)。この6割という水準は、保障給を設計する際の実務上の一つの目安として参考になります。

出来高払制の設計|適法な設計とNGな設計
適法・推奨される設計 違法・NGな設計
労働時間に応じた保障給を設けている 保障給が一切ない完全出来高払制にしている
総賃金の時給換算額が最低賃金以上になるよう毎月確認している 業績不振の月に時給換算額が最低賃金を下回っている
法定労働時間を超える残業に割増賃金を別途支払っている 「歩合に残業代は含まれている」として残業代を不払いにしている
保障給・出来高・残業代の計算方法を就業規則に明記している 算定基準が曖昧で、給与明細でも内訳を示していない

04出来高払制で残業代トラブルが起きやすい理由

 結論:出来高払制は算定基礎を誤りやすく、退職者からの未払い残業代請求が高額化しやすい制度です。

 出来高払制を採用している会社では、残業代をめぐるトラブルが発生しやすい傾向があります。特に多いのは、残業代の算定基礎を誤っている(出来高賃金を除いた固定給のみで計算している等)ケース、保障給と出来高の区別が不明確で未払い残業代が発生しているケース、残業時間の管理ができておらずサービス残業が常態化しているケースです。

 退職した社員から未払い残業代を請求された場合、時効期間(3年)分をまとめて請求されると、出来高払制の会社では特に大きな金額になることがあります。弁護士法人四谷麹町法律事務所の藤田進太郎弁護士は、残業代トラブルの予防策として、出来高払制の賃金規程の法的診断・整備を行っています。

05会社が取るべき実務対応

 結論:現行の保障給規定・残業代の算定方法・出来高の算定基準の3点を点検し、不備があれば就業規則を改定してください。

 現在出来高払制を採用している場合は、保障給の規定が労働基準法27条を満たしているか、残業代の算定方法が正しいか、出来高の算定基準が明確かを確認してください。問題がある場合は就業規則・賃金規程の改定が必要です。

 新たに出来高払制を導入したい場合は、法律的な要件を満たした制度設計を行ったうえで就業規則を整備し、従業員への周知・説明を行う必要があります。会社側・使用者側専門の弁護士に相談のうえ、適切な制度設計を進めることをお勧めします。

06よくある質問(FAQ)

Q. 保障給がまったくない完全出来高払制にすることはできますか。

できません。労働基準法27条は、出来高払制で使用する労働者についても労働時間に応じた一定額の賃金保障を義務付けており、保障給のない完全出来高払制は違法です。違反した場合は同法120条1号により30万円以下の罰金の対象となります。

Q. 出来高払制でも残業代を支払う義務がありますか。

あります。出来高払制であっても、法定労働時間を超える時間外労働には割増賃金の支払いが必要です。出来高払制の場合の残業代は、当該期間の総賃金額を総労働時間数で割った単価に割増率を掛けて計算します。基礎部分の1.0倍相当は出来高賃金に含まれるため、割増分を別途支払います。

Q. 保障給はどのくらいの水準に設定すればよいですか。

法律上の具体的な数値の定めはありませんが、最低賃金を下回らない水準が絶対的な前提です。行政通達は、固定給が賃金総額のおおむね6割程度以上を占める場合は27条の請負制に該当しないと解しており、この6割が設計上の一つの目安になります。

Q. 営業職を出来高払制にする場合、就業規則に何を定めればよいですか。

保障給の額・算定方法、出来高部分の計算基準(単価・対象業績・算定期間)、残業代の計算方法を明確に規定する必要があります。また、実際の労働時間を正確に把握・管理する体制を整えることも重要です。労務リスクの観点から弁護士に相談のうえ設計することをお勧めします。

経営上のポイント 保障給が一切ない完全出来高払制は、労働基準法27条違反であり30万円以下の罰金の対象です。もっとも、労働時間に応じた保障給を設ければ、出来高払制自体を採用することは可能です。設計にあたっては、保障給を最低賃金以上の水準とし、行政通達が示す固定給6割程度という目安も参考にしながら、就業規則・賃金規程に保障給・出来高・残業代の計算方法を明確に規定してください。特に見落とされやすいのが残業代です。出来高払制でも残業代の支払義務は免除されず、算定基礎の誤りは退職後の未払い残業代請求という形で高額化しがちです。出来高払制の残業代の計算方法とあわせて、賃金規程の整備について会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。出来高払制の設計や残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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