この記事の結論
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歩合給は除外賃金に該当せず、出来高払制でも残業代の支払義務がある

歩合給は労働基準法37条5項・施行規則21条の除外賃金に当たりません。「歩合給に残業代が含まれる」という理解は誤りで、時間外・休日・深夜労働には別途割増賃金が必要です。

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基礎時給=歩合給の総額÷総労働時間数。割増は0.25分(1.0倍は歩合給に含む)

出来高払制の残業代は施行規則19条1項6号に基づき、月給制と異なり「総労働時間数」で割って基礎時給を算出します。時間外は0.25分を別途支払います。

 営業職や配送業などで出来高払(歩合給)制を採用している会社から、「歩合給で支払っているから残業代は別途不要では」というご質問を受けることがあります。しかし、この理解は誤りです。出来高払(歩合給)制とは、労働の成果や売上に応じて賃金額を算定する賃金制度をいい、法定労働時間を超える残業には別途割増賃金(残業代)の支払義務があります。

 ただし、出来高払制の場合の残業代の計算方法は、月給制・時給制の場合とは異なります。法律に基づく正しい計算方法を把握していないと、過少支給による未払い残業代トラブルが発生するリスクがあります。会社側専門の弁護士の立場から、出来高払制における残業代の計算方法を解説します。

01出来高払制でも残業代の支払義務がある理由

 結論:歩合給は施行規則21条の除外賃金に当たらないため、出来高払制でも残業代の支払義務があります。

 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金(歩合給)は、労働基準法37条5項および同施行規則21条が定める除外賃金には該当しません。したがって、出来高払(歩合給)制で賃金を支払っている場合であっても、法定労働時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働に対しては、別途割増賃金を支払う義務があります。

 「歩合給には残業代が含まれる」という誤解をお持ちの経営者の方もいらっしゃいますが、歩合給は労働の成果に対して支払われる賃金であり、時間外労働に対する対価(割増賃金)とは性質が異なります。出来高払制を採用している会社でも、残業代の法的義務は免除されません。

02残業代の基礎賃金(時給単価)の計算方法

 結論:出来高払制の残業代の基礎時給は、歩合給の総額を総労働時間数で割って算出します(施行規則19条1項6号)。

 出来高払(歩合給)制における残業代算定の基礎となる通常の労働時間・労働日の賃金は、労働基準法施行規則19条1項6号に基づき、以下の計算式で算出します。

基礎となる時給単価 = 歩合給によって計算された賃金の総額 ÷ 当該賃金算定期間における総労働時間数

 この計算方法の特徴は、月給制の場合に使用する「一月平均所定労働時間数」ではなく、時間外労働を含む「総労働時間数」で除する点にあります。これにより、残業が多い月ほど時給単価が下がる構造となっています。なお、割増賃金として支払うべきは割増部分のみです。時間外労働の時間を含む総労働時間を稼働して得た歩合給の中に、通常の労働時間の賃金(1.0倍相当)が既に含まれているとみなされるため、時間外労働は0.25、深夜労働は0.25、休日労働は0.35の割増分を別途支払えば足りることになります。

03計算の具体例

 結論:総労働時間200時間・歩合給40万円なら基礎時給は2,000円、時間外40時間分の割増賃金は2万円です。

 たとえば、所定労働時間内に160時間働き、40時間の時間外労働をした月の場合、総労働時間数は160時間+40時間=200時間となります。この月の出来高払(歩合給)の総額が40万円であった場合の計算は、次のとおりです。

計算例|歩合給40万円・総労働時間200時間・時間外40時間の場合
総労働時間数 160時間 + 40時間 = 200時間
基礎となる時給単価 40万円 ÷ 200時間 = 2,000円
時間外40時間分の割増賃金 2,000円 × 0.25 × 40時間 = 2万円

 このように、出来高払制の場合は通常の月給制と異なり、残業時間が多くなるほど時給単価が逓減する構造となっています。そのうえで、割増部分(0.25倍相当)を別途支払うことになります。

04月給制と出来高払制を併用している場合の計算

 結論:固定給部分と歩合給部分は別々に時給単価を算出し、合計した単価に割増率を掛けて計算します。

 実務上は、月給制(固定給)と出来高払(歩合給)を組み合わせた賃金体系を採用している会社も多くあります。この場合、月給部分は月給制の計算方法(月額÷一月平均所定労働時間数)、歩合給部分は出来高払制の計算方法(歩合給総額÷総労働時間数)でそれぞれ時給単価を算出し、合計した時給単価に割増率を掛けて残業代を計算します。

 この計算方法は複雑になるため、誤りが生じやすい点です。特に時間外労働が多い業種(タクシー・トラック・訪問介護等)では、算定誤りによる未払い残業代リスクが高くなります。定期的に計算方法の適正性を確認することをお勧めします。

よくある誤解

誤解 「歩合給をたくさん払っているのだから、残業代はその中に含まれている。別途支払う必要はない」

正しい理解 歩合給は成果に対する対価であり、時間外労働に対する割増賃金とは性質が異なります。歩合給は除外賃金にも当たらないため、時間外・休日・深夜労働には別途割増分(時間外0.25等)の支払いが必要です。「歩合給に残業代込み」とする運用は、退職後の未払い残業代請求の火種になります。

05会社が取るべき実務対応

 結論:就業規則の計算方法・毎月の計算式・労働時間の把握体制の3点を点検してください。

 出来高払(歩合給)制を採用している場合は、就業規則・賃金規程に残業代の計算方法(総労働時間数で除する方法)が明記されているか、毎月の給与計算において正しい計算式を使用しているか、時間外労働の時間数を正確に把握・管理しているかを確認してください。

 出来高払制は計算が複雑なため、社会保険労務士・弁護士に定期的にチェックしてもらうことをお勧めします。弁護士法人四谷麹町法律事務所の藤田進太郎弁護士は、残業代トラブルの予防・解決に取り組む会社側の弁護士として、出来高払制の賃金規程整備と残業代計算の適正化をサポートしています。

06よくある質問(FAQ)

Q. 歩合給(出来高払)で支払っているので残業代は不要ですか。

不要ではありません。出来高払(歩合給)は除外賃金に該当しないため、法定労働時間を超える残業に対しては別途割増賃金を支払う義務があります。歩合給は成果に対する対価であり、時間外労働に対する割増賃金とは性質が異なります。

Q. 出来高払制の残業代はどのように計算しますか。

残業代の基礎となる時給単価は「当該期間の歩合給の総額÷当該期間の総労働時間数(時間外労働を含む)」で算出します。月給制の一月平均所定労働時間数ではなく総労働時間数で割る点が特徴です。この単価に割増率0.25を掛けて割増賃金を計算します。

Q. 月給制と歩合給を組み合わせている場合の残業代計算はどうなりますか。

月給部分は「月額÷一月平均所定労働時間数」、歩合給部分は「歩合給総額÷総労働時間数」でそれぞれ時給単価を算出し、合計した時給単価に割増率を掛けて残業代を計算します。計算が複雑になるため、弁護士や社会保険労務士にチェックしてもらうことをお勧めします。

Q. 出来高払制において就業規則に定めるべき事項は何ですか。

出来高払制の計算基準(単価・対象業績・算定期間)、保障給の額と計算方法、残業代の計算方法(総労働時間数で除する方法)を明記することが必要です。また、実際の労働時間を正確に把握・管理する体制を整えることも重要です。

経営上のポイント 「歩合給で払っているから残業代は不要」という理解は誤りです。歩合給は除外賃金に該当せず、出来高払(歩合給)制であっても、時間外・休日・深夜労働には別途割増賃金を支払う義務があります。計算方法は月給制と異なり、基礎となる時給単価を「歩合給の総額÷総労働時間数」で算出し(施行規則19条1項6号)、割増分を支払うのが特徴です。固定給と歩合給を併用している場合や、タクシー・トラック・訪問介護など時間外労働が多い業種では計算誤りが起きやすく、退職後の未払い残業代請求として高額化しがちです。完全出来高払制ができない理由と保障給義務とあわせて、賃金規程の整備と計算の適正化について会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。出来高払・歩合給制の残業代計算や賃金規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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