この記事の要点

社員との合意で「休日なし」にすることはできない——労基法35条は強行規定

社員が同意していても「休日なし」の合意は労基法13条により無効となり、法定休日を与えなければなりません

連続勤務が必要な場合は、法定休日を定めた上で休日出勤させるという扱いになる

「休日なし」ではなく「法定休日に出勤させる」という適法な対処法があります

法定休日に出勤させる場合は36協定の締結・届出と休日割増賃金(35%以上)の支払が必要

36協定なしに法定休日労働をさせることはできません

違反した場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条)のリスがある

「社員が了解している」「忙しかった」という理由は免責事由になりません

01労基法35条の強行規定性——なぜ合意で休日なしにできないのか

 休日を与えることは労基法35条により使用者に義務付けられています。同条は強行規定であり、使用者と社員の合意によってもこの規制の適用を排除することはできません。

 256番(休憩時間)で解説したのと同じ構造ですが、休日についても同様に、「社員が同意しているのだから問題ない」という考えは法的に通用しません。労働基準法の多くの規定は、労働者保護のための強行規定として設けられており、社員が不利益を受ける方向での合意は無効とされます。休日に関する規制もこの強行規定の一つです。

02社員との合意による「休日なし」は無効(労基法13条)

 休日をなしにする旨社員と合意したとしても当該合意は無効となり、労基法35条で定められた休日(法定休日)を与えなければならないことになります(労基法13条)。したがって、社員との合意により休日をなしにすることはできません。

 労働基準法13条は、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」と定めています。これにより、就業規則・雇用契約・口頭の合意等、いかなる形で「休日なし」を定めても、その部分は無効となり、代わりに労基法35条が定める週1回以上の休日が当然に適用されます。

よくある誤解——これも全て違法です

「本人が『休みはいらない』と言っているから問題ない」
社員の同意があっても、法定休日を与えない状態は労基法35条違反となります。強行規定である以上、社員の意思で適用を排除することはできません。

「雇用契約書に『休日なし』と明記している」
雇用契約書にそのような記載があっても、労基法13条により無効となります。有効な就業規則・雇用契約として機能せず、法定休日の付与義務が残ります。

「繁忙期だけ休日をなくしている」
繁忙期であっても法定休日の付与義務は消えません。繁忙期の連続勤務が必要な場合は、別途適法な対処法(次節参照)を取る必要があります。

03違反した場合のリスク

 法定休日を与えなかった場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰の対象となります(労基法119条1号)。また、法定休日に働かせたことになれば休日割増賃金(35%以上)の支払義務が生じる場合があります。さらに、長期間にわたって法定休日のない連続勤務を強いることは、安全配慮義務違反による損害賠償請求(心身の健康被害・うつ病等)のリスにもつながります。

 「社員が了解していた」「本人が希望していた」「繁忙期だったから仕方がなかった」という事情は、これらの法的責任を免れる理由にはなりません。

04連続勤務が必要な場合の適法な対処法

 休日なしの連続勤務が業務上どうしても必要な場合は、法定休日を廃止するのではなく、法定休日を定めた上で休日出勤させるという扱いになります。これが法律上適法な唯一の方法です。

適法な連続勤務の手順
①就業規則に法定休日(週1日)を明記する(263番参照)
②36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る
③法定休日に出勤させる都度、業務命令を発する
④法定休日に出勤させた分の休日割増賃金(35%以上)を支払う

 この方法では「休日なし」という状態にはなりませんが、法定休日を定めた上で法定の手続きを踏んで出勤させるという形で、業務上必要な連続勤務を実現することができます。ただし、長期間にわたる連続勤務は安全配慮義務の観点からも問題が生じやすいため、できる限り休日を実際に取得させる運用に努めることが重要です。

05法定休日労働に必要な手続——36協定と休日割増賃金

手続の種類 内容・注意点
36協定の締結・届出 法定休日に労働させるためには、事前に36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要。届出のない状態での法定休日労働は労基法32条・35条違反となる
休日割増賃金の支払 法定休日に出勤させた場合、35%以上の休日割増賃金(労基法37条1項)の支払が必要。深夜(22時〜翌5時)に及ぶ場合は深夜割増(25%以上)も加算。時間外割増賃金(25%以上)とは性質が異なるため注意
振替休日との区別 あらかじめ法定休日を別の日に振り替える(振替休日)ことで、法定休日における労働を発生させない方法もある。この場合、振替えた日の労働は法定休日労働ではなく通常の労働日扱いとなる(割増率が異なる場合あり)
安全配慮義務への配慮 連続勤務が続く場合、過労死・メンタルヘルス不調との関連が問題となるリスがある(244番参照)。法的手続きを踏んでも、安全配慮義務違反による損害賠償請求のリスは残る点に注意

06まとめ

 社員との合意により休日をなしにすることはできません。休日を与えることは労基法35条により使用者に義務付けられた強行規定であり、社員との合意は労基法13条により無効となります。法定休日を与えなかった場合は刑事罰・残業代請求・安全配慮義務違反による損害賠償請求のリスがあります。

 業務上どうしても連続勤務が必要な場合は、法定休日を就業規則に定めた上で、36協定の締結・届出を行い、法定休日に出勤させる際には休日割増賃金(35%以上)を支払うという適法な対処法を取る必要があります。36協定の締結・届出方法・休日割増賃金の計算・振替休日の設計については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。36協定の締結・届出・休日割増賃金の計算・連続勤務への対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 社員が「休みはいらない」と言っていれば、休日なしにできますか。

A. できません。労基法35条は強行規定であり、社員の同意があっても法定休日の付与義務は免除されません。「休日なし」の合意は労基法13条により無効となり、法定休日(週1回以上)を与えなければなりません。

Q2. 就業規則や雇用契約書で「休日なし」と定めた場合はどうなりますか。

A. その部分は労基法13条により無効となります。無効となった部分には自動的に労基法35条が定める休日の基準(週1回以上)が適用されます。就業規則や雇用契約書に「休日なし」と定めていても、実際に休日を与えなければ労基法35条違反となります。

Q3. 連続勤務が業務上必要な場合はどのように対処すればよいですか。

A. 法定休日を廃止するのではなく、就業規則に法定休日を定めた上で、36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)を締結・届出し、法定休日に出勤させる形をとることが適法な対処法です。この場合、法定休日に出勤させた分の休日割増賃金(35%以上)の支払が必要です。

Q4. 法定休日に出勤させる場合に必要な手続きは何ですか。

A. ①就業規則に法定休日を明記すること、②36協定(休日労働に関する部分も含む)を締結し労働基準監督署に届け出ること、③法定休日に出勤させた社員に休日割増賃金(35%以上)を支払うこと——の3点が必要です。振替休日を設定する方法もあります。具体的な手続きについては使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年5月10日



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