この記事の要点

業務命令・不利益・業務上の支障がある合宿研修の時間は、食事・睡眠等を除いて労基法上の労働時間に該当する

使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるため、時間外に及ぶ部分は割増賃金の支払いが必要です

食事時間・睡眠時間等の休憩時間は、労働から完全に解放されていれば労働時間に非該当

ただし食事中に業務上の議論が義務付けられている場合などは、労働時間と評価されることがあります

カリキュラム外の討論等は、純然たる自由参加であれば労働時間に非該当

参加命令・不利益・業務上の支障がなく、本当の意味での自由参加であれば労働時間には該当しません

「自由参加」とされるカリキュラム外の討論でも、実質的な強制があれば労働時間となる

不利益がある場合や業務上の支障が生じる場合は、指揮命令下にあるものと評価されます

01合宿研修の時間管理の基本的な考え方

 合宿研修は通常の研修と異なり、複数日にわたって泊まり込みで行われるため、研修時間全体のうちどの部分が「労基法上の労働時間」に該当するかを適切に管理することが重要です。合宿研修に含まれる時間は大きく分けると、①カリキュラムに組み込まれた研修・講義等の時間、②食事時間・睡眠時間等の休憩時間、③カリキュラム外の討論・懇親等の時間——の3種類があります。それぞれについて労働時間性の判断が異なります。

 判断の基本軸は、これまでの解説(247〜251番)と同様に「実質的に指揮命令下に置かれているかどうか」です。業務命令・不利益取扱い・業務上の支障の有無が主要な判断要素となります。

02合宿研修の時間が労働時間に該当するケース

 合宿研修は、業務命令により参加が命じられたり、合宿研修に参加しないと何らかの不利益を課されたり、合宿研修に参加しないと業務遂行に必要な知識技能が習得できず業務に具体的な支障が生じるような場合は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができます。

 したがって、このような場合における合宿研修に要した時間は、食事時間等の休憩時間や睡眠時間を除き、労基法上の労働時間に該当します。研修時間が8時間を超えたり深夜に及ぶ場合は、時間外割増賃金・深夜割増賃金の支払い義務が生じます。

合宿研修の時間管理——労働時間として扱うべき時間の例
業務命令により全員参加が義務付けられた研修・講義・グループワーク等のプログラム時間、カリキュラムに組み込まれた移動時間(集合場所から合宿地への移動等)、業務上必要な資格・スキル習得のための実習時間——これらは原則として労働時間として取り扱う必要があります。

03食事時間・睡眠時間の取り扱い

 合宿研修中の食事時間・睡眠時間等は、原則として休憩時間として取り扱われ、労基法上の労働時間には該当しません。社員が労働から完全に解放されており、自由に使うことができる時間であれば、休憩時間として取り扱うことができます。

 ただし、食事中に業務上の討議が義務付けられている場合、食事の場が実質的にプログラムの一部として組み込まれている場合などは、食事時間であっても労働時間と評価されることがあります。また、睡眠時間についても、何らかの対応(緊急連絡への対応義務等)が求められる場合には、手待ち時間として労働時間と評価される可能性があります。

時間の種類 原則的な取り扱い 注意が必要な場合
カリキュラムに組み込まれた研修・講義・グループワーク等 労働時間 業務命令・不利益・業務上の支障の有無を確認
食事時間(自由に使用できる場合) 休憩時間(非該当) 食事中に業務討議が義務付けられている場合は労働時間となる可能性あり
睡眠時間 休憩時間(非該当) 緊急対応義務が課されている場合は手待ち時間として労働時間となる可能性あり
カリキュラム外の討論・懇親等(純然たる自由参加) 非該当 実質的強制がある場合は労働時間となる

04カリキュラム外の討論等——純然たる自由参加の場合

 研修カリキュラムに組み込まれていない討論等の時間は、業務命令により参加が命じられておらず、参加しなくても不利益が課されず、討論等に参加しなくても業務に具体的な支障が生じない等、本当の意味での自由参加であれば、労基法上の労働時間ではありません。

 例えば、夕食後に参加自由の懇談会が設けられており、参加しない社員に対して何の評価上の影響も生じない場合、その懇談会の時間は労働時間には該当しません。合宿研修の翌朝に任意の早朝ウォーキングが企画されている場合も同様です。

05「自由参加」の討論等でも労働時間となるケース

 しかし、自由参加と言いながらも、参加しない場合には何らかの不利益が課される場合や、討論等に参加しないと業務遂行に必要な知識技能が習得できず業務に具体的な支障が生じるような場合には、使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができますので、労基法上の労働時間となります。

「自由参加」でも労働時間と評価されるリスがある具体例

夜間の討論会に不参加だと翌日の発表評価が下がるケース
カリキュラム外とされていても、参加しないと翌日の評価に影響する場合は実質的な強制があると評価されます。

討論で得られた情報がなければ翌日の研修についていけないケース
業務遂行上必要な情報・知識を得るために討論への参加が事実上不可欠な場合は、業務上の支障が生じるとして労働時間と評価されます。

上司・幹部が全員参加しておりプレッシャーがあるケース
明示的な参加命令がなくても、参加が当然視される雰囲気のもとでは実質的な強制として評価されるリスがあります。

06まとめ——合宿研修の時間管理の実務ポイント

 合宿研修の時間管理においては、①業務命令・不利益・業務上の支障の有無、②食事・睡眠等の休憩時間の確保、③カリキュラム外の討論等に実質的強制があるかどうか——の3点を事前に整理しておくことが重要です。

 合宿研修を実施する場合には、プログラムのどの部分が労働時間に該当するかを事前に確認し、所定労働時間を超える部分については割増賃金の支払い設計を適切に行う必要があります。特に深夜(22時以降)に及ぶプログラムがある場合は深夜割増賃金の計算も必要です。合宿研修の設計・時間管理・賃金設計については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。合宿研修の時間管理・割増賃金設計・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 業務命令で参加させた合宿研修の時間(睡眠・食事除く)は全て労働時間に該当しますか。

A. 業務命令・不利益取扱い・業務上の支障があれば、特段の事情のない限り使用者の指揮命令下にあるものと評価されます。食事時間等の休憩時間や睡眠時間を除いた時間は、労基法上の労働時間に該当します。時間外・深夜に及ぶ場合は割増賃金の支払いが必要です。

Q2. 合宿研修中の食事時間・睡眠時間は労働時間に該当しますか。

A. 社員が労働から完全に解放され自由に使用できる時間であれば、休憩時間として労働時間には該当しません。ただし、食事中に業務上の討議が義務付けられている場合や、睡眠時間中に緊急対応義務が課されている場合は、労働時間と評価されることがあります。

Q3. 研修カリキュラム外の討論等に要した時間の労働時間性はどのように判断しますか。

A. 参加命令の有無・不利益取扱いの有無・業務上の支障の有無の3点で判断します。本当の意味での自由参加であれば労働時間に該当しません。しかし、不参加で評価が下がる場合や、討論での情報がなければ翌日の研修についていけない場合などは、実質的強制として労働時間と評価されます。

Q4. 合宿研修の時間管理で特に注意すべき点は何ですか。

A. 合宿研修を実施する前に、①プログラムの各時間帯の労働時間性の整理、②所定労働時間を超える部分の割増賃金設計、③深夜(22時以降)のプログラムがある場合の深夜割増賃金の計算——を確認しておくことが重要です。事前に使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年5月10日



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