この記事の結論
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労働審判の代理人は、原則として弁護士でなければならない(労働審判法4条1項)

労働審判は権利関係を踏まえて審理・判断される手続であり、原則3回以内の期日で、早い段階から十分な主張立証を行う必要があります。そのため、法令により裁判上の行為を代理できる者のほかは、弁護士でなければ代理人となることができません。

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裁判所の許可があれば弁護士以外も代理人となり得るが、例外は限定的

裁判所が、当事者の権利利益の保護および手続の円滑な進行のため必要かつ相当と認めるときは、弁護士でない者を代理人とすることを許可できます(同項ただし書)。もっとも、これは例外的な取扱いで、認められる範囲は限られています。

 労働審判手続は、当事者間の権利関係を踏まえて労働審判を行うとされており、権利関係の審理を行うことが前提となっています。そして、原則として3回以内の期日で審理を終結しなければならず、その手続の中で争点の整理や証拠調べ等を行う必要があることから、当事者には、手続の早い段階から事実関係や法律論について十分な主張を行い、必要と考える立証を行うことが求められます。短期間にこれらを適切かつ効率的に行うためには、実体法および手続法に関する相当程度の法律知識や、主張立証の技術が必要となります。

 こうした手続の性質から、労働審判手続における代理人は、民事訴訟と同様に、原則として、法令により裁判上の行為を代理することができる者、または弁護士でなければならないとされています(労働審判法4条1項)。会社側専門の弁護士の立場から、その制度趣旨と、会社経営者が押さえておくべき実務上のポイントを解説します。

01労働審判の代理人の基本ルール(労働審判法4条)

 労働審判法4条1項は、代理人について、法令により裁判上の行為をすることができる代理人(親権者、後見人、支配人など)のほかは、弁護士でなければ代理人となることができないと定めています。これは民事訴訟における弁護士代理の原則(民事訴訟法54条)と同様の考え方に立つものです。

 もっとも、会社が労働審判の当事者となる場合、代表者自身が本人として出頭し対応することは可能です。ここで問題となるのは、本人に代わって手続を追行する「代理人」を誰に依頼できるか、という点であり、この代理人が原則として弁護士に限られている、ということです。

02なぜ原則として弁護士に限られるのか

 代理人が原則として弁護士に限られているのは、労働審判手続の性質に理由があります。労働審判は、単なる事実確認の場ではなく、解雇の有効性や賃金請求の可否など、法律に基づく権利関係を前提として結論が導かれる手続です。そのため、事実を述べるだけでは足りず、どの法律構成を採り、どの要件を満たすのかといった法的な整理が不可欠となります。

 さらに、労働審判は原則として3回以内の期日で終結する迅速な手続であり、当事者には、手続の早い段階で事実関係と法律論について十分な主張を行い、必要な立証を行うことが求められます。この短期間の中で、争点の整理・証拠の選別・主張の組み立てを的確に行うためには、実体法(労働法)と手続法の双方に関する相当程度の知識と、主張立証の技術が必要です。こうした点から、労働審判では、民事訴訟と同様に、代理人が原則として弁護士に限られているのです。

経営者が押さえておきたい視点

この弁護士代理の原則は、単なる形式的な制限ではなく、短期間で適切な結論を導くための制度設計という側面があります。裏を返せば、専門性を欠いた対応をすると、短期間のうちに不利な結論に至るリスクがあるということでもあります。代理人の選定は、自社の主張を的確に伝え、法的に適切な対応を構築できるかという観点から判断すべき経営判断といえます。

03弁護士以外を代理人とする場合(許可代理)

 もっとも、弁護士でない者がおよそ代理人になれないわけではありません。労働審判法4条1項ただし書は、裁判所が、当事者の権利利益の保護および労働審判手続の円滑な進行のために必要かつ相当と認めるときは、弁護士でない者を代理人とすることを許可できると定めています(許可代理)。

 この許可を求める場合、代理人となるべき者の氏名・住所・職業、本人との関係、申立ての理由を記載して申し立てる必要があります(労働審判法5条)。実務上は、本人と親族関係にあるなど、本人との間に特別の関係がある場合が想定されており、許可が認められる範囲は限られています。労働審判では前述のとおり高度な法律知識・主張立証技術が求められるため、許可が必ず得られるとは限らない点に注意が必要です。

04社会保険労務士・司法書士等の関与の可否

 労働問題に詳しい社会保険労務士や司法書士に、労働審判の代理人を依頼できないかと考える会社経営者もいます。しかし、社会保険労務士や司法書士等が報酬を得る目的で労働審判の代理人となることは、弁護士でない者による法律事務の取扱いを禁じる弁護士法72条との関係で認められません。

 特定社会保険労務士については、紛争解決手続代理業務として一定の民間紛争解決手続(個別労働関係紛争のあっせん等)の代理が認められていますが、この代理権は、あくまでその民間紛争解決手続に限られます。裁判所の手続である労働審判の代理人となることは認められていない点に注意が必要です。なお、社会保険労務士は、裁判所において、補佐人として弁護士である代理人とともに出頭し陳述することが認められる場合がありますが、これは代理人とは別の立場です。会社側としては、原則どおり弁護士を代理人として選任するのが合理的です。

経営者が見落としやすいポイント

「顧問社労士がいるから労働審判も任せられる」と考えてしまうケースがありますが、労働審判の代理人は原則として弁護士に限られます。特定社会保険労務士の代理権はあっせん等の手続に限られ、労働審判の代理人にはなれません。労働審判の申立書を受け取ったら、速やかに会社側弁護士に相談することが、初動対応として重要です。

05弁護士に依頼しない場合のリスク

 制度上、会社の代表者が本人として対応することは可能ですが、その難易度は想定以上に高いものです。労働審判では、初回期日から実質的な審理が始まり、早い段階で争点が整理され、労働審判委員会の心証が形成されていきます。この段階で適切な主張や証拠提出ができなければ、その後に挽回することは容易ではありません。

 また、同じ事実関係であっても、どの法律構成を採るかによって結論が変わるため、適切な法律論を選択できないこと自体が不利な結果を招く原因となります。さらに、期日での発言の内容やタイミングによって、意図しない不利な評価につながることもあります。こうしたリスクは短期間で顕在化し、修正が難しいため、弁護士に依頼するかどうかは、単なるコストの問題ではなく、リスク管理の観点から慎重に判断する必要があります。労働審判の代理人選任や、弁護士以外を代理人とする要件については、労働審判の代理人は弁護士が原則かおよび弁護士以外を代理人とする要件もあわせてご覧ください。

06よくある質問(FAQ)

Q. 労働審判は、弁護士を立てずに社長本人が対応することはできますか。

本人が対応すること自体は禁止されていません。もっとも、労働審判は初回期日から実質的な審理が始まり、早い段階で心証が形成される迅速な手続です。労働法の理解と迅速な主張立証が求められるため、弁護士なしでの対応は不利益を被るリスクが高いといえます。

Q. 社会保険労務士に労働審判の代理人を頼むことはできますか。

できません。労働審判の代理人は原則として弁護士に限られ、社会保険労務士等が報酬を得て代理人となることは弁護士法72条との関係で認められません。特定社会保険労務士の代理権もあっせん等の民間紛争解決手続に限られ、労働審判の代理人にはなれません。会社側は、代表者が出席するか、弁護士を代理人に選任して臨む必要があります。

Q. 会社の総務部長や法務担当者が代理人になることは認められますか。

原則として認められません。労働審判の代理人は弁護士に限られており、裁判所が許可した場合(許可代理)を除き、従業員が代理人として手続を追行することはできません。会社側は、代表者が出席するか、弁護士を代理人に選任して臨むことになります。

Q. 弁護士以外を代理人にしたい場合、どうすればよいですか。

裁判所の許可を得る必要があります。当事者の権利利益の保護および手続の円滑な進行のため必要かつ相当と認められる場合に限り許可されます(労働審判法4条1項ただし書)。許可申立てには、代理人となるべき者の氏名・住所・職業、本人との関係、申立ての理由を記載します(同5条)。実務上、本人と特別の関係がある場合などに限られ、必ず許可されるわけではありません。

経営上のポイント 労働審判の代理人が原則として弁護士に限られるのは(労働審判法4条1項)、権利関係を踏まえた審理が原則3回以内で行われ、手続の早い段階から高度な法律判断と主張立証が求められるためです。裁判所の許可があれば弁護士以外も代理人となり得ますが(同項ただし書・5条)、認められる範囲は限られています。社会保険労務士や司法書士が報酬を得て代理人となることは弁護士法72条との関係で認められず、特定社会保険労務士の代理権もあっせん等の手続に限られ、労働審判の代理人にはなれません。労働審判は初動対応の質が結果を大きく左右する手続ですので、申立書を受領したら速やかに会社側弁護士へ相談することをお勧めします。労働審判への対応については、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判の代理人選任・対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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