労働審判の調書には何が記載される?会社経営者が知るべき記録の限定性と実務リスク
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労働審判は原則3回以内。4回目は「特別の事情」がある例外的な場合に限られる 労働審判は、特別の事情がある場合を除き、原則として3回以内の期日で審理を終結しなければなりません(労働審判法15条2項)。4回目の期日が設けられるのは、参考人の出頭不能や調停成立が目前といった例外的な場合に限られます。 |
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会社側は「次がある」と考えず、初回期日までに主張と証拠を出し切る準備が重要 準備不足を理由に4回目の期日が認められることは基本的にありません。「追って証拠を出す」という訴訟的な対応は通用しにくく、初動の準備不足がそのまま不利な心証につながります。3回以内での終結を前提に準備することが重要です。 |
目次
労働審判は、特別の事情がある場合を除き、原則として3回以内の期日で審理を終結しなければならない制度です(労働審判法15条2項)。「4回目の期日」が設けられるのは、参考人の出頭不能や、調停成立が目前に迫っている場合など、例外的な場面に限られます。したがって会社側としては、「次の期日がある」という前提ではなく、原則として3回以内で結論に至ることを前提に、初回期日までに必要な主張と証拠を出し切る準備をしておくことが重要です。
会社側専門の弁護士の立場から、労働審判の期日回数のルールと、4回目の期日が認められる例外的な場面、そして会社が取るべき実務対応を解説します。
01労働審判は原則3回以内で終結する(労働審判法15条2項)
労働審判法15条2項は、「労働審判手続においては、特別の事情がある場合を除き、三回以内の期日において、審理を終結しなければならない」と定めています。これは、労働紛争を迅速に解決するという制度趣旨を実現するための中核的なルールです。通常の民事訴訟とは異なり、長期間にわたる審理は想定されておらず、短期間で結論を導くことが前提とされています。
実務上も、当事者は第1回期日において主張および証拠書類の提出を行い、遅くとも第2回期日が終了するまでにはこれを終えなければならないとされています(労働審判規則27条)。初回期日から実質的な審理が行われ、早い段階で労働審判委員会の心証が形成されるため、初動対応の質が結果を大きく左右します。この「3回以内」という枠は、単なる回数の問題ではなく、短期間で集中的に主張立証を行うことを求める制度設計であることを理解しておく必要があります。
02「特別の事情」とは
4回目の期日が行われるのは、労働審判法15条2項にいう「特別の事情」がある場合に限られます。この「特別の事情」は条文で列挙されているわけではありませんが、実務上は限定的に解釈されると考えられています。
労働審判は3回以内で終結することが制度の基本であるため、単に「審理が不十分に感じる」「もう少し検討したい」といった理由では、4回目の期日は認められません。通常の進行では対応できない例外的な事情がある場合に限られる、という点を押さえておく必要があります。
034回目の期日が設けられる典型例
「特別の事情」として実務上想定される典型例としては、次のような場面が挙げられます。いずれもあくまで例示であり、これらに該当すれば必ず4回目が設けられるというものではありません。
前者は、事実認定に直結する審尋等がやむを得ず実施できなかったケースです。ただし、単なる都合ではなく、予測が困難で回避もできない事情であることが前提となります。後者は、労働審判が調停による合意解決を重視する制度であることを踏まえ、円満な解決を確実にするために例外的に期日が追加される場面です。「話し合いが続いている」という程度では足りず、具体的かつ現実的に調停成立が見込まれる段階に至っていることが必要です。
04「特別の事情」が厳格に解釈される理由
「特別の事情」が厳格に解釈されるのは、制度の根幹である迅速な紛争解決を確保するためです。この要件が緩やかに運用されれば、期日が安易に延長され、制度本来の目的が損なわれてしまいます。労働審判は、あらかじめ「原則3回以内」という明確な枠を設けることで、審理の集中化と効率化を制度的に担保しており、この枠組みを維持するためには、例外である「特別の事情」を限定的に解する必要があります。
また、当事者間の公平性の観点も重要です。一方当事者の都合で期日が延びることを容易に認めると、相手方に不必要な負担を課すことになり、手続の公平性が損なわれるおそれがあります。会社側としては、この厳格な運用を前提に、「追加の期日があるかもしれない」という期待に依存せず、すべての主張・証拠を3回以内で出し切ることを前提に準備を進めるべきです。
経営者が見落としやすいポイント
「まずは第1回で様子を見て、必要なら次回以降で反論すればよい」という対応は、労働審判では通用しにくいものです。回数が限られているからこそ、初期段階での主張の不備は「反論なし」と受け止められ、会社側に不利な心証につながりかねません。第1回期日までに、答弁書と証拠を整えて臨むことが重要です。
05会社経営者への影響と実務対応
期日が4回目に延びることは例外的とはいえ、会社にとっては時間的・人的コストの増加や、紛争が長引くことによる不確実性の継続といった影響が生じ得ます。もっとも、4回目の期日が設けられる場合には、調停成立が目前であるなど、解決に近づいている局面であることも少なくありません。そのため、単なる負担として捉えるのではなく、解決に向けた最終局面として位置づける視点も必要です。実務対応のポイントは次のとおりです。
労働審判は、限られた期日の中で最適な結論を導くための手続です。単なる事務対応としてではなく、期限が厳格に設定された経営課題として、初動から期日ごとの見通しを立てて対応することが重要です。早い段階で会社側専門の弁護士が関与することで、争点整理や証拠の選別を適切に進め、限られた期日を有効に活用しやすくなります。
06よくある質問(FAQ)
Q. 労働審判で4回目の期日が指定されるのはどのようなケースですか。
労働審判法15条2項の「特別の事情」がある場合に限られます。実務上は、重要な参考人が急病等で出頭できなくなった場合や、もう1回の期日を設ければ確実に調停が成立すると見込まれる場合などが典型例として想定されており、いずれも例外的な場面です。
Q. 準備が間に合わないという理由で4回目をお願いすることはできますか。
原則として認められません。労働審判は迅速な解決を目的とした制度であり、当事者の準備不足は「特別の事情」には該当しません。むしろ、初回期日に十分な反論ができないことは、会社側にとって不利な心証につながるおそれがあります。
Q. 3回で終わらず4回目も実施されない場合、どうなりますか。
審理を尽くしても解決に至らない場合、労働審判委員会が労働審判(判断)を行うか、事案の性質に照らし労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判事件を終了させ、訴訟へ移行することになります(労働審判法24条)。いずれにせよ、期日が際限なく延びることはありません。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判の期日対応・答弁書作成でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日