この記事の結論
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みなし労働時間が法定労働時間を超える部分にのみ、残業代が発生する

専門業務型裁量労働制の適用が認められた場合、実労働時間にかかわらず、労使協定で定めたみなし労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超える場合に限り、その超過分について残業代が発生します。

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深夜労働・法定休日労働は、裁量労働制でも別途割増賃金が必要

専門業務型裁量労働制は、あくまで労働時間をみなす制度であり、深夜(22時〜5時)や法定休日の労働については、みなし労働時間の外側の問題として、通常の労働者と同様に割増賃金の支払いが必要です。

 専門業務型裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、労使協定で定めたみなし労働時間を労働したものとみなす制度です。もっとも、「裁量労働制を導入すれば残業代が一切発生しない」というのは誤解であり、一定の場面では割増賃金の支払いが必要になります。

 会社側専門の弁護士の立場から、専門業務型裁量労働制における残業代(割増賃金)の考え方を解説します。

01残業代が発生する場面(みなし労働時間の超過)

 専門業務型裁量労働制の適用が認められた場合、対象労働者は、実際に何時間働いたとしても、労使協定で定めたみなし労働時間だけ労働したものとみなされます。したがって、みなし労働時間が法定労働時間(原則1日8時間)以内であれば、実労働時間がこれを超えても、残業代は発生しません。

 残業代が発生するのは、労使協定で定めたみなし労働時間そのものが、法定労働時間を超えている場合です。たとえば、みなし労働時間を1日9時間と定めた場合、法定労働時間を1時間超えているため、この1時間分について、時間外労働の割増賃金が発生することになります。これは、実際に何時間働いたかにかかわらず、協定で定めた時間数を基準に、毎日一律に発生するという点が特徴です。

02時間外部分の割増率と基礎賃金の考え方

 法定労働時間を超えるみなし労働時間の部分について、乗じる割増率をどう考えるかは、会社の賃金規程における基本給とみなし労働時間の関係づけ方によって異なります。基本給が、みなし労働時間分の労働(たとえば9時間分)を前提に設定されている場合には、8時間を超える部分の賃金(100%部分)は、既に基本給に含まれていると考えることができます。この場合、8時間を超える部分について別途上乗せすべきは、割増分の25%のみで足りるという考え方が成り立ちます。

 この場合の1時間あたりの基礎賃金は、「月額賃金÷当該月のみなし労働時間数」で算定する方法が考えられます。もっとも、この算定方法は、あくまで基本給がみなし労働時間分の労働を前提として設計されていることを前提とするものであり、会社の賃金規程や労使協定の内容によって結論が変わり得る点に注意が必要です。基本給が所定労働時間(8時間)分の対価としてのみ位置づけられている場合には、通常の時間外労働と同様、125%の割増率で計算するという考え方もあり得ます。

経営者が見落としやすいポイント

割増率をどう扱うべきかは、賃金規程や労使協定にみなし労働時間と基本給の関係がどう定められているかによって変わります。就業規則・賃金規程・裁量労働制に関する労使協定の内容を確認しないまま「25%で足りる」と一律に判断するのは危険です。制度設計の段階で、この関係を明確にしておくことがトラブル防止につながります。

03深夜労働に対する割増賃金

 専門業務型裁量労働制の適用が認められた場合であっても、深夜(22時から翌5時まで)に労働させた場合は、別途、深夜労働の割増賃金(25%以上)を支払わなければなりません。裁量労働制は、あくまで1日の労働時間をみなす制度であり、深夜に労働することそのものを許容したり、深夜割増を免除したりする制度ではないためです。

 みなし労働時間の中に深夜の時間帯が含まれていたとしても、実際に深夜に労働した時間については、実労働時間に基づいて深夜割増賃金を算定する必要があります。裁量労働制のもとでは、時間外労働としての取扱いは受けないため、結果として、深夜割増分の25%のみを追加で支給すればよいことになります。

04法定休日労働に対する割増賃金

 法定休日に労働させた場合も、専門業務型裁量労働制の適用対象者であることを理由に、割増賃金の支払いを免れることはできません。法定休日の労働については、みなし労働時間の考え方は適用されず、実労働時間に基づいて労働時間数を算定したうえで、休日労働の割増率(35%以上)で計算した賃金を支払う必要があります。深夜に及ぶ休日労働であれば、休日割増(35%)と深夜割増(25%)をあわせて、135%の割増率で計算することになります。

05会社側が押さえておくべき視点

 専門業務型裁量労働制は、時間外労働の管理を簡素化できる制度ですが、「導入すれば残業代の問題が解消する」という理解は誤りです。深夜労働と法定休日労働については、裁量労働制の適用対象者であっても、実労働時間の記録に基づいた割増賃金の支払い義務が残ります。したがって、対象労働者についても、出退勤時刻や実際の労働状況を適切な方法で記録しておくことが不可欠です。

 また、みなし労働時間と実労働時間との乖離が著しい場合には、安全配慮義務違反が問題となるおそれもあります。裁量労働制は「何時間働かせてもよい」制度ではなく、労働者の裁量を尊重しつつ、健康管理の観点からの記録・把握義務は残る点にも留意が必要です。制度の適用要件や運用方法については、導入前に専門的な確認を行うことをお勧めします。

06よくある質問(FAQ)

Q. 専門業務型裁量労働制を導入すれば、残業代は一切発生しませんか。

一切発生しないわけではありません。みなし労働時間が法定労働時間を超えている場合は、その超過分について時間外労働の割増賃金が発生します。また、深夜労働や法定休日労働については、実労働時間に基づいた割増賃金の支払いが別途必要です。

Q. 深夜まで働いた場合、時間外労働と深夜労働の両方の割増を支払う必要がありますか。

深夜労働の部分は、裁量労働制の適用により時間外労働としての取扱いは受けないため、通常は深夜割増分の25%のみを追加で支給すれば足ります。ただし、みなし労働時間の設計内容によって扱いが変わり得るため、賃金規程の確認が必要です。

Q. 法定休日に働かせた場合も、みなし労働時間で処理してよいですか。

よくありません。法定休日の労働には、みなし労働時間の考え方は適用されず、実労働時間に基づいて算定した労働時間数に、休日労働の割増率(35%以上)を乗じて賃金を計算する必要があります。深夜に及ぶ場合は、深夜割増と合わせて135%の割増率になります。

経営上のポイント 専門業務型裁量労働制の適用が認められた場合、みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間)を超える部分についてのみ、時間外の割増賃金が発生します。この超過部分の割増率は、賃金規程における基本給とみなし労働時間の関係づけ方によって、25%で足りる場合と、125%で計算すべき場合があり、制度設計の確認が必要です。深夜(22時〜5時)や法定休日の労働については、裁量労働制の適用の有無にかかわらず、実労働時間に基づいて別途割増賃金(深夜25%以上、休日35%以上、深夜に及ぶ休日労働は135%)を支払わなければなりません。「裁量労働制=残業代不要」という理解は誤りであり、対象労働者についても実労働時間の記録と、みなし時間との乖離の把握が不可欠です。制度の運用方法や賃金計算については、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。裁量労働制の運用や残業代計算でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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