労働問題995 出向と労働者派遣は、どのように違いますか。

この記事の結論
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出向は出向先とも労働契約があるが派遣は派遣先と労働契約がない

出向では出向元及び出向先企業と労働者との間で労働契約を締結しているのに対し、労働者派遣では派遣先企業と労働者との間には労働契約関係が存在しない点が異なります。

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派遣法違反があれば派遣先に直接雇用義務が生じることがある

労働者派遣法違反があった場合に、派遣労働者から派遣の時と同じ条件で雇用契約を締結してほしいと申し込まれたような場合、派遣先の事業主に労働者との間で直接雇用義務が生じることがあります。

 843・844の記事で解説した労働者派遣法上の講ずべき措置とも関連しますが、そもそも「出向」と「労働者派遣」は、どちらも労働者が自社以外の企業の指揮命令を受けて働くという点で似ているため、しばしば混同されます。しかし、法的な扱いは大きく異なります。

 会社側専門の弁護士の立場から、出向と労働者派遣の違いを解説します。

01出向の定義

 出向とは、労働者を自己の企業に在籍させたまま、他の企業の従業員として相当期間にわたって当該他企業に従事させることをいいます。

02労働者派遣の定義

 労働者派遣とは、労働者派遣法で、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないとする」と定義されています。

03出向と労働者派遣の決定的な違い(労働契約の所在)

 労働者が出向先または派遣先企業の指揮命令に従う点については出向と労働者派遣は似ていますが、出向では、出向元及び出向先企業と労働者との間で労働契約を締結しているのに対し、労働者派遣では、派遣元企業と派遣先企業との間で労働者派遣契約が締結されるものの、派遣先企業と労働者との間では労働契約関係が存在しない点が異なります。

 つまり、出向は「二重の労働契約関係」(出向元との労働契約+出向先との労働契約)が成立するのに対し、労働者派遣は、あくまで派遣元企業と労働者との労働契約関係が基本であり、派遣先企業との間には契約関係(労働者派遣契約)はあっても、労働契約関係は生じないという構造上の違いがあります。

04派遣先に直接雇用義務が生じる例外

 ただし、一定の要件(労働者派遣法違反があった場合に、派遣労働者から派遣の時と同じ条件で雇用契約を締結してほしいと申し込まれたような場合)を満たす場合、派遣先の事業主に労働者との間で直接雇用義務が生じる場合があります。これは、いわゆる労働契約申込みみなし制度(労働者派遣法40条の6)と呼ばれる仕組みであり、無許可・無届の派遣の受入れ、いわゆる偽装請負、期間制限違反等の一定の違法派遣があった場合に適用されます。

05会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、自社が受け入れている人材が「出向」なのか「労働者派遣」なのかを正確に区別しておく必要があります。この区別を誤ると、920の記事で解説した労組法上の使用者性の問題や、労働者派遣法上の各種義務(843・844の記事で解説した派遣元・派遣先の講ずべき措置)の適用関係を見誤るリスクがあります。

 特に、契約書の名称が「業務委託」「請負」であっても、実態として他社の指揮命令下で労務を提供させている場合には、偽装請負として労働者派遣法違反となり、直接雇用申込みみなし制度が適用されるリスクがあります。人材活用の形態を検討する際には、契約書の名称だけでなく、実態としての指揮命令関係・契約構造を正確に整理しておくことが重要です。

06よくある質問(FAQ)

Q. 出向と労働者派遣の最も大きな違いは何ですか。

出向先企業と労働者との間に労働契約関係があるかどうかです。出向では出向先とも労働契約がありますが、労働者派遣では派遣先と労働者の間に労働契約関係は生じません。

Q. 派遣先が違法な派遣を受け入れていた場合、どうなりますか。

一定の要件を満たす場合、派遣先に直接雇用義務が生じることがあります(労働契約申込みみなし制度)。

Q. 「業務委託」という契約名称であれば、労働者派遣法の規制を受けませんか。

受けないとは限りません。実態として他社の指揮命令下で労務を提供させていれば、偽装請負として労働者派遣法違反となるリスクがあります。

経営上のポイント 出向とは、労働者を自己の企業に在籍させたまま他の企業の従業員として従事させることをいい、出向元及び出向先双方と労働契約を締結する点に特徴があります。労働者派遣は、自己の雇用する労働者を雇用関係の下で他人の指揮命令を受けて労働に従事させるものであり、派遣先企業との間には労働契約関係が存在しません。ただし、労働者派遣法違反があった場合には、派遣先に直接雇用義務が生じることがあります(労働契約申込みみなし制度)。会社側としては、契約書の名称にかかわらず、実態としての指揮命令関係・契約構造を正確に整理し、偽装請負に当たらないかを確認することが重要です。出向・派遣・業務委託の制度設計は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。出向・派遣・業務委託の制度設計でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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