労働問題870 労働者が始末書を提出しない場合の対処法を教えてください。
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謝罪・反省の強制はできない 謝罪や反省を強制することはできませんので、始末書を提出しない労働者に対して、業務命令という形で提出を強要することや不提出を理由として不利益的な取扱いをすることはできないと考えられています。 |
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事実報告を求める書面であれば業務命令として提出させられる 謝罪の趣旨や反省の弁を求めるものではなく、事実経過について報告を求める性質の書面であれば、個人の意思の自由との関わりはなくなり、業務命令として提出を求めることができます。 |
懲戒処分に付随してよく求められる始末書の提出ですが、対象労働者がこれを拒否した場合、どこまで会社が強制できるのかは、実務上悩ましい問題です。単純な「業務命令違反」として処理できない特殊性がこの問題にはあります。
会社側専門の弁護士の立場から、労働者が始末書を提出しない場合の対処法を解説します。
01謝罪・反省の強制ができない理由
謝罪や反省を強制することはできませんので、始末書を提出しない労働者に対して、業務命令という形で提出を強要することや不提出を理由として不利益的な取扱いをすることはできないと考えられています。これは、謝罪・反省という内心の表明を強制することが、憲法が保障する思想・良心の自由(内心の自由)を侵害するおそれがあるためです。始末書に「深く反省し、二度と繰り返しません」といった謝罪文言を含めるよう強制することは、この観点から問題があります。
02事実報告書であれば業務命令で求められる
しかし、謝罪の趣旨や反省の弁を求めるものではなく、事実経過について報告を求める性質の書面であれば、個人の意思の自由との関わりは無くなります。つまり、「何がいつ、どこで、なぜ起きたのか」という客観的な事実関係の報告を求めるだけであれば、内心の自由の問題は生じないため、業務命令として提出を求めることができるということです。
03報告義務の法的根拠(信義則)
労働者は雇用契約における信義則上の義務として、労働提供の過程で企業に損害を及ぼすことのないようにする義務を負うことから、企業運営上の支障となるような行為をした場合、当事者としてその具体的内容や事情についての調査に応じ、報告する義務があると考えますので、労働者が始末書を提出しない場合は、業務命令として、書面での事実報告を求めることをお勧めします。この報告義務は、労働契約に付随する信義則上の義務として、労働者が当然に負っているものと理解されています。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側が始末書の提出を求める際には、「始末書」という名称にこだわらず、その実質的な内容が謝罪・反省文なのか、事実報告書なのかを意識することが重要です。労働者が「始末書」という形式での提出を拒否する場合には、名称を「事実報告書」「経緯報告書」等に変更し、内容を客観的な事実経過の記載に限定した書面の提出を求めることで、業務命令としての実効性を確保することができます。
こうして得られた事実報告書は、789の記事で解説した懲戒処分の判断基準(懲戒事由の該当性)を検討する際の重要な証拠にもなります。労働者が真の反省を示さない場合でも、事実関係を客観的に記録化しておくことは、その後の懲戒処分や監督上の対応を検討するうえで有用です。
05よくある質問(FAQ)
Q. 労働者が始末書の提出を拒否した場合、業務命令違反として処分できますか。
謝罪・反省を含む始末書の提出強制はできません。ただし、事実経過の報告書であれば、業務命令として提出を求めることができ、これに応じない場合は業務命令違反となり得ます。
Q. なぜ謝罪・反省の強制ができないのですか。
謝罪や反省の表明を強制することは、内心の自由への介入となり得るためです。事実経過の報告であれば、内心の自由の問題は生じません。
Q. 「始末書」の提出を拒否された場合、どう対応すればよいですか。
名称を「事実報告書」等に変更し、内容を客観的な事実経過の記載に限定した書面の提出を業務命令として求めることをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。始末書・懲戒処分の運用でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年7月13日