労働問題838 労働基準法9条の「労働者」と労働組合法3条の「労働者」の範囲が異なるのはなぜですか。

この記事の結論
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2つの法律は目的が異なる

労基法は、労働者が生活を営むために必要となる最低限の労働条件を規律して労働者を保護する目的の法律であり(労基法1条)、労組法は、労働組合による団体交渉によって労働者の地位を向上させること等を目的とする法律です(労組法1条1項)。

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労組法の「労働者」は労基法より広く解される

労組法3条の「労働者」は、労使間の力関係を対等にするべく団体交渉を保障されるべき者という観点から、労基法の「労働者」よりも広い意味で考えられています。

 業務委託契約を締結しているフリーランスや個人事業主から、労働組合を通じた団体交渉の申入れを受けた際、「労働者ではないから対応しなくてよい」と考える会社もありますが、これは正確な理解とはいえません。労基法上の労働者と労組法上の労働者は、範囲が異なる場合があるためです。

 会社側専門の弁護士の立場から、労基法と労組法で労働者の範囲が異なる理由を解説します。

01労基法9条の「労働者」の考え方

 労働基準法9条の「労働者」と労働組合法3条の「労働者」の範囲が異なる理由は、労働基準法と労働組合法の目的が異なるからです。労働基準法は、労働者が生活を営むために必要となる最低限の労働条件を規律して労働者を保護する目的の法律であり(労基法1条)、同法9条の「労働者」は、最低限の保障を及ぼす必要がある者という観点から考えられています。この観点から、指揮監督下の労働、報酬の労務対償性等を中心とした「使用従属性」の要素が重視されます。

02労組法3条の「労働者」の考え方

 これに対して、労働組合法は、労働組合による団体交渉によって労働者の地位を向上させること等を目的とする法律であり(労組法1条1項)、同法3条の「労働者」は、労使間の力関係を対等にするべく団体交渉を保障されるべき者という観点から、労基法の「労働者」よりも、広い意味で考えられています。事業組織への組み入れの有無、契約内容の一方的・定型的決定の有無、報酬の労務対価性、業務の依頼に応ずべき関係の有無等、より多様な要素から労働者性が判断される傾向にあります。

03範囲が異なる理由(目的の違い)

 この2つの法律の「労働者」概念の違いは、単なる技術的な相違ではなく、法律の目的そのものの違いに由来します。労基法は、最低賃金・労働時間規制等、生活の基盤となる最低限の労働条件を保障するための法律であるため、「労働者」の範囲を、使用従属性が明確な者に限定する傾向があります。一方、労組法は、対等な交渉力を確保するための団体交渉権を保障する法律であるため、契約形式上「労働者」でなくても、実質的に交渉力の不均衡が生じている者を広く保護する必要があるのです。

04会社側が押さえておくべき視点

 会社側にとって重要なのは、業務委託契約を締結している個人事業主やフリーランスであっても、労組法上の「労働者」に該当し、団体交渉を求められる可能性があるという点です。「雇用契約ではなく業務委託契約だから、労働組合との交渉には応じなくてよい」という理解は、誤りであるリスクがあります。

 実際に労働組合から団体交渉の申入れがあった場合、契約形式のみで判断せず、業務の実態(指揮監督の程度、業務依頼への諾否の自由の有無、報酬の性質等)を精査したうえで、労組法上の労働者に該当する可能性があるかを慎重に検討する必要があります。誤って交渉を拒否すると、不当労働行為(団体交渉拒否)として問題になるリスクがあります。

05よくある質問(FAQ)

Q. 業務委託契約の個人事業主でも、労働組合との団体交渉に応じる必要がありますか。

応じる必要がある場合があります。労組法上の「労働者」は労基法よりも広く解されるため、業務委託契約であっても、実態によっては労組法上の労働者に該当し得ます。

Q. なぜ、労基法と労組法で「労働者」の範囲が違うのですか。

両法律の目的が異なるためです。労基法は最低労働条件の保護、労組法は団体交渉の保障を目的としており、それぞれの観点から「労働者」の範囲が考えられています。

Q. 団体交渉を誤って拒否すると、どのようなリスクがありますか。

相手方が労組法上の労働者に該当する場合、団体交渉拒否は不当労働行為として問題になるリスクがあります。契約形式のみで判断せず、業務の実態を精査する必要があります。

経営上のポイント 労基法9条の「労働者」と労組法3条の「労働者」の範囲が異なるのは、両法律の目的が異なるためです。労基法は最低限の労働条件を保障する目的から、使用従属性が明確な者を「労働者」と考えます。労組法は団体交渉を保障し労使間の力関係を対等にする目的から、労基法よりも広い意味で「労働者」を考えます。会社側としては、業務委託契約の個人事業主やフリーランスであっても、労組法上は「労働者」に該当し、団体交渉を求められる可能性があることを理解しておく必要があります。契約形式のみで判断せず、業務の実態を精査したうえで対応方針を検討することが、不当労働行為リスクの回避につながります。労働者性の判断や団体交渉対応は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。団体交渉への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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