労働問題830 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」における労働時間の考え方を教えてください。

この記事の結論
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労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間

ガイドラインは、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に該当するとしています。

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労働時間該当性は、契約書等の定めにかかわらず客観的に判断される

労働時間に該当するか否かは、労働契約・就業規則・労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか否かにより客観的に定まります。

 829の記事で解説したガイドラインの適用対象を踏まえ、本稿では、そもそも「労働時間」とは何かという、より根本的な考え方を解説します。772・773の記事で解説した個別の裁判例を理解するうえでも、この基本的な考え方を押さえておくことが重要です。

 会社側専門の弁護士の立場から、労働時間適正把握ガイドラインにおける労働時間の考え方を解説します。

01労働時間の基本的な定義

 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に該当するとしています。この「指揮命令下」というキーワードが、労働時間該当性を判断する際の基本的な物差しになります。

02労働時間として扱うべき3類型

 ガイドラインは、次のような時間は、労働時間として扱わなければならないこととしています。

労働時間として扱わなければならない3類型
使用者の指示による業務に必要な準備行為(着替え等)や後始末(清掃等)を事業場内で行った時間
即時に業務に従事することを求められ、労働からの解放が保障されていない待機時間(いわゆる「手待時間」)
参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、指示による業務に必要な学習等の時間

 これらは、772の記事で解説した三菱重工業長崎造船所事件(準備行為)、773の記事で解説した大星ビル管理事件(手待時間・仮眠時間)など、これまでの裁判例の考え方を踏まえて整理されたものです。

033類型以外でも労働時間となり得る

 ただし、これら以外の時間についても、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱うこととされています。上記の3類型は、あくまで代表的な例示であり、これに含まれない時間であっても、実質的に指揮命令下にあると評価されれば、労働時間として扱う必要があります。

04契約書等の定めによらない客観的判断

 労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであるとされています。つまり、就業規則や契約書に「この時間は労働時間に含まない」と書いてあっても、実態として指揮命令下にあると評価されれば、労働時間として扱われるということです。

 客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるものであるとされています。

05会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、就業規則や賃金規程で「休憩時間」「準備時間」などと定めているだけでは、労働時間該当性の判断を確定させることはできない点に注意が必要です。実際の運用として、着替え・準備・後始末を事業場内で義務づけている場合、研修参加を実質的に強制している場合、休憩中でも即応対応を求めている場合等には、これらが労働時間としてカウントされるリスクがあることを認識しておく必要があります。

 残業代トラブルを予防するためには、こうした「グレーゾーン」の時間について、業務上の義務づけの有無を明確にし、真に自由な時間として運用することが重要です。逆に、業務上必要な行為であれば、労働時間として適切に管理・支給する体制を整えることが求められます。

06よくある質問(FAQ)

Q. 就業規則で「準備時間は労働時間に含まない」と定めておけば、労働時間扱いを避けられますか。

避けられません。労働時間該当性は、契約書や就業規則の定めにかかわらず、実態として指揮命令下に置かれているかどうかで客観的に判断されます。

Q. 休憩時間中でも、すぐ対応できるよう待機させている場合、労働時間になりますか。

なる可能性が高いです。労働からの解放が保障されていない待機時間(手待時間)は、労働時間として扱わなければならないとされています。

Q. 任意参加の研修時間も、労働時間に含める必要がありますか。

参加が業務上義務づけられている研修は労働時間ですが、真に任意参加であれば、原則として労働時間には含まれません。参加を事実上強制していないかが重要です。

経営上のポイント ガイドラインは、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間と定義し、①事業場内での準備行為・後始末、②手待時間、③義務的な研修・学習時間を、労働時間として扱うべき代表例として挙げています。これら以外の時間でも、指揮命令下にあると評価されれば労働時間となります。労働時間該当性は、労働契約・就業規則等の定めにかかわらず、実態に基づき客観的に判断されます。会社側としては、就業規則の記載だけで労働時間該当性を確定できると考えず、着替え・準備・後始末の義務づけの有無、休憩中の即応対応の有無、研修参加の実質的強制の有無等を精査し、グレーゾーンの時間の運用実態を見直すことが重要です。労働時間管理体制の整備は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働時間管理体制の整備でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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