労働問題821 雇止め法理とはどういうものですか。
|
1
|
有期契約でも、一定の場合は解雇権濫用法理が類推適用される 民法上は期間満了により契約関係が当然に終了しますが、判例は、一定の場合に解雇権濫用法理を類推適用し、合理的理由のない雇止めを無効と判断してきました。この「雇止め法理」は労働契約法19条として条文化されています。 |
|
2
|
2つの類型のいずれかに該当し、拒絶に合理性がなければみなし承諾となる ①実質的に無期契約と同視できる場合、②更新への合理的期待がある場合のいずれかに該当し、使用者の更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないときは、従前と同一の労働条件で申込みを承諾したものとみなされます。 |
目次
819・820の記事で解説した有期労働契約は、契約期間の満了により当然に終了するのが原則ですが、実務上、この原則がそのまま適用されない場面があります。それが本稿で解説する「雇止め法理」です。
会社側専門の弁護士の立場から、雇止め法理の基本的な仕組みを解説します。
01民法の原則と判例法理の展開
民法上の原則では、有期労働契約は定められた期間が満了すれば、契約を更新しない限り契約関係が終了し、使用者は更新しないことについて特段の理由を必要としていません。しかし、裁判では、有期労働契約であっても、一定の場合には解雇権濫用法理が類推適用され、合理的理由のない雇止めが無効と判断されてきました。この判例法理を「雇止め法理」といいます。
02労働契約法19条の条文構造
この判例法理は、法改正により、労働契約法19条として条文化されました。同条は、次の2つの類型のいずれかに該当する有期労働契約について、労働者が契約期間満了までに更新の申込みをした場合(または満了後遅滞なく締結の申込みをした場合)、使用者の申込み拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす、と定めています。
03類型①(実質無期契約型)
1つ目の類型は、当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められる場合です。反復更新によって、実質的に無期契約と変わらない状態になっていると評価される場合を指します。
04類型②(更新への合理的期待型)
2つ目の類型は、当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる場合です。実質的な無期契約化までは至らなくても、労働者が更新を期待することに客観的な合理性がある場合を指します。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側が有期契約労働者との契約更新・不更新を検討する際には、まず、対象労働者の契約が、この2つの類型のいずれかに該当していないかを確認することが重要です。更新回数が多い、更新手続が形式的である、契約更新への期待を抱かせる言動があった、といった事情があれば、実質的に無期契約と同視されるリスクや、更新への合理的期待が認められるリスクが高まります。
822の記事で解説する不更新条項・更新限度特約は、このような更新への合理的期待の発生を、あらかじめ抑制するための実務的な工夫として重要な意味を持ちます。契約更新のたびに更新の有無・条件を明確にし、形式的な手続にとどまらない実質的な確認を行うことが、雇止め法理のリスクを軽減するために有効です。
06よくある質問(FAQ)
Q. 有期労働契約は、期間満了で当然に終了するのではないのですか。
民法上の原則はそのとおりですが、一定の場合には解雇権濫用法理が類推適用され、合理的理由のない雇止めは無効となります(労働契約法19条)。
Q. どのような場合に雇止め法理が適用されますか。
実質的に無期契約と同視できる場合、または更新への合理的期待が認められる場合のいずれかに該当する場合に適用されます。
Q. 雇止め法理が適用されると、どうなりますか。
使用者の更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合、従前と同一の労働条件で申込みを承諾したものとみなされ、契約が更新されたのと同じ結果になります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。有期契約労働者の雇止め対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日