労働問題658 労働時間規制の適用除外について、どのようなことが問題になりやすいですか?
労働基準法41条では、次の3種類の労働者について、法定労働時間や休憩・休日の規制の適用除外を認めています。
① 農業、畜産業、養蚕業、水産業に従事する者(林業は含まれません)
② 管理監督者の地位にある者または機密の事務を取り扱う者
③ 監視または断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた者
ところが、②の管理監督者の意味を誤解し、「役付の社員だから残業代は支払わなくてもいい」と考え、割増賃金(残業代)を支払わないケースが散見されます。労基法における管理監督者とは、企業内における地位・役職の名称ではなく、実質的な職務内容・待遇などから判断されるため、役付社員を一律に管理監督者とするべきではありません。
裁判例及び通達(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)では、管理監督者の判断基準として、以下の3点をあげています。
ア 経営者と一体的な立場にあること
イ 勤務時間について厳格な制限を受けていないこと
ウ 賃金等の待遇について、一般労働者と比べ管理職手当等の優遇措置が講じられていること
したがって、営業政策上の理由で、セールス担当社員に「課長」といった肩書を付けている場合や、「管理職手当」は支払われているが、労働時間が完全に拘束されていて出退勤の自由がない場合には、管理監督者には該当しません。
また、法制当時はあまり見られなかった、人事、総務、企画、財務部門において経営者と一体となって判断を行うような専門職、いわゆる「スタッフ職」について、通達(昭和63年3月14日基発150号)では、以下のとおり、一定の限度で管理監督者に該当するとしています。
〈スタッフ職の取扱い〉
法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、同法41条第2号該当者に含めて取り扱うことが妥当であると考えられること。
管理監督者かどうかの判断について、以下の裁判例が参考になります。
(1) レストラン「ビュッフェ」事件(大阪地裁昭和61年7月30日判決)
(2) 医療法人徳洲会事件(大阪地裁昭和62年3月31日判決)
(3) 日本マクドナルド事件(東京地裁平成20年1月28日判決)
(4) 風月荘事件(大阪地裁平成13年3月26日判決)
(5) アクト事件(東京地裁平成18年8月7日判決)
(6) 東建ジオテック事件(東京地裁平成14年3月28日判決)
(7) 橘屋割増賃金請求事件(大阪地裁昭和40年5月22日判決)
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