労働問題633 自宅での待機時間や携帯電話対応時間は労働時間に該当しますか?

1.労働時間とは
 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと判断できるか否かによって、客観的に決まります。
 たとえば、手待ち時間のように、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならず、そのような作業場の指揮監督下に置かれた時間は労働時間になります。 

2.自宅での待機時間の労働時間性
 緊急対応のための待機時間は、それが使用者の指揮命令下に置かれているか否かにより、労働時間性を判断することになります。
 たとえば、待機場所が自宅の場合は、待機中に制服の着用を求められていたり、仮眠を禁止されていたりするなど、待機中の過ごし方について強く拘束されている場合や、緊急対応の頻度が多いような場合でなければ、労働時間に該当しないのが通常です。
 裁判例では、ガス管からガスが漏出した際に復旧工事を担当する会社が、修理依頼がある場合に備えて雇用する労働者に対し、シフト制により工事対応を義務付けていたところ、シフト担当の労働時間性が争われ、シフト担当時間に比較して実稼働時間が極めて少なかったこと、労働者はシフト担当時間に寮の自室でテレビを見たりパソコンを操作したりするなどし、外出の規制もなかったことなどの事実を認め、「原告ら従業員は高度に労働から解放されていたとみるのが相当である」と判示し、労働時間性を否定したものがあります(大道工業事件東京地裁平成20年3月27日判決)。
 一方、大星ビル管理事件では、「本件仮眠時間中、労働契約に基づく義務として、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられている」と、「(作業)の必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しない」ことから、本件仮眠時間が労働時間と認められました(最高裁第一小法廷平成14228日判決)。

3.携帯電話対応時間の労働時間性
 社員に仕事用の携帯電話を持たせ、夜間や休日でも問い合わせに対応してもらう場合、実際に問い合わせに対応している時間と、携帯電話を持って問い合わせがあった場合に備えて待機している時間の労働時間性が問題となります。
 実際に問い合わせに対応している時間は、使用者が指示した業務に従事していると考えられますので、労働時間として取り扱う必要があります。その際の労働時間の把握については、使用者が労働者に対して労働時間の実態を正しく記録し適性に自己申告を行うことの説明をした上で、自己申告の労働時間が実際の労働時間と合致しているか着信履歴と突き合わせるなどして確認することをお勧めします。
 携帯電話を持たせ問い合わせがあった場合に備えて待機している時間については、頻繁に携帯電話に着信があるなどの場合でない限りは、拘束の程度が低く、原則、労働時間には該当しないと考えられます。

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