労働問題595 労働者が使用者に虚偽の情報を言われ年休を取得できなかったことを理由に損害賠償請求をしてきた場合,どのように検討すれば良いですか。
当該虚偽の年休日数の情報提供がなければ当該労働者が取得したといえる年休日数を実質的に検討することになります。
裁判例には,原告が公務員であり,国賠法上違法かが問題となった事案ではありますが,市が虚偽の情報を告げた行為と①不足する年休日数に相応する賃金相当額との間の因果関係は否定し,②欠勤・病休による給与減額分との間の因果関係を肯定したものがあります。
① 不足する年休日数に相応する賃金相当損害金について
「原告の年休取得状況に照らせば,原告は,1年間で年休を1日ないし4日強しか取得していない年もあるから,上記陳述書によっても,原告に虚偽の年休日数の情報が提供されていなければ,原告が不足日数全部について年休を取得した蓋然性が高いと認めるに足りない。原告は実際に取得した日数以上に年休付与請求を行っていないから,原告の就労義務は消滅していないことにも照らせば,被告の行為と,不足する年休日数に対応する賃金相当損害金との間に因果関係があるとは認められない。」
② 欠勤・病休による給与減額分の損害について
「他方,労基法上原告に付与すべき年休日数の範囲内で欠勤または病休をした部分については,被告による虚偽情報の提供がなければ年休を取得し得たといえるから,欠勤または病欠によって,給与が減額された部分については,被告の行為との間に因果関係が認められる。」
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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