労働問題465 団体交渉が行き詰まった場合は、団体交渉を打ち切ることができますか。

この記事の結論
1

交渉が進展する見込みがなくなった場合は打ち切りが可能

労使の主張が対立し、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みがなくなったような場合は、団体交渉を打ち切ることができます(池田電機事件最高裁平成4年2月14日第二小法廷判決)。

2

行き詰まりを組合に確認したうえで打ち切ることが望ましい

「交渉が進展する見込みがなくなった」といえるかどうかは問題となり得ます。団体交渉が行き詰まっていることを組合に確認したうえで打ち切るのが、実務上の適切な対応です。

3

打ち切り後は街宣活動や争議行為のリスクがある

団体交渉が打ち切りとなれば、労働組合による街宣活動や争議行為が行われる可能性が高くなることにも留意が必要です。

参考動画

01団体交渉の打ち切りは可能か

 労使の主張が対立し、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みがなくなったような場合は、団体交渉を打ち切ることができるものとされています(池田電機事件最高裁平成4年2月14日第二小法廷判決)。

 団体交渉に応じる義務はありますが、永遠に交渉を続ける義務はありません。使用者として誠実交渉義務を尽くし(464番参照)、それでもなお交渉が行き詰まった場合には、打ち切りが可能です。

02打ち切りが認められる条件

 打ち切りが適法と認められるためには、交渉が進展する見込みがなくなったといえる状況であることが必要です。もっとも、「交渉が進展する見込みがなくなった」といえるかどうかは問題となり得ます。

 例えば、会社側が一度も具体的な回答を行わないまま「行き詰まった」と主張しても、打ち切りは認められません。使用者としての誠実交渉義務を十分に果たしたうえで、双方の主張が平行線をたどり、これ以上の議論を重ねても合意に至る見込みがない場合に、打ち切りが認められます。

 何回の交渉を経れば打ち切りが可能かという明確な基準はありませんが、実質的な議論が尽くされたかどうかが判断のポイントとなります。

03打ち切りの実務的な手順

 通常は、団体交渉が行き詰まっていることを組合に確認したうえで打ち切るのが望ましい対応です。

 具体的には、交渉の場で「双方の主張が平行線であり、これ以上議論を重ねても合意に至る見込みがないと判断している」旨を明確に伝え、組合がなお交渉の余地があると考えるかどうかを確認します。組合側からも「これ以上譲歩の余地はない」という認識が示されれば、行き詰まりの状態が客観的に確認されます。

 打ち切りの経緯や組合の反応は記録しておくことが重要です。後に不当労働行為の申立てが行われた場合に、誠実交渉義務を果たした事実と、行き詰まりの状態を客観的に示す証拠となります。

04打ち切り後のリスクへの備え

 団体交渉が打ち切りとなれば、労働組合による街宣活動や争議行為が行われる可能性が高くなることにも留意が必要です。

 打ち切りを決断する前に、打ち切り後に想定されるリスク(街宣活動、争議行為、不当労働行為の申立て、レピュテーションへの影響など)を弁護士と共に整理し、対応策を検討しておくことが重要です。

 また、打ち切り後に新たな事情が生じた場合(組合側から新しい提案があった場合、事情が変更した場合など)には、再度団体交渉に応じる義務が生じることもあります。「一度打ち切ったから以後一切交渉しない」という対応は適切ではなく、新たな事情に応じて柔軟に判断する必要があります。

経営上のポイント 団体交渉の打ち切りは可能ですが、誠実交渉義務を尽くしていることが前提です。打ち切りの判断とタイミングは、打ち切り後のリスク(街宣活動・争議行為・不当労働行為申立て)を踏まえた経営判断であり、使用者側弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

団体交渉への対応でお悩みの会社経営者の方はご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 何回交渉すれば打ち切りが可能ですか。

A. 明確な回数の基準はありません。判断のポイントは交渉回数ではなく、実質的な議論が尽くされたかどうかです。主要な争点について会社側から具体的な説明・根拠提示・反論を行い、それでもなお主張が平行線を辿る場合に、打ち切りが認められる傾向にあります。

Q2. 打ち切り後に組合から改めて団体交渉を申し入れられた場合、応じる必要はありますか。

A. 新たな事情が生じた場合には応じる必要があります。例えば、組合側から新しい提案があった場合や、従前の交渉の前提となっていた事情が変更した場合などは、改めて交渉に応じるべき場面です。単に前回と全く同じ要求の繰り返しであれば、行き詰まりが継続しているとして拒否できる余地があります。

Q3. 打ち切りを通知する場合、書面で行うべきですか。

A. 書面で行うことが望ましいです。団体交渉の場で口頭で伝えるとともに、打ち切りの経緯や双方の主張の状況を書面で整理して組合に送付しておくと、後の証拠として有用です。弁護士と相談のうえ、打ち切り通知の文面を整理することをお勧めします。

最終更新日:2026年2月25日

労働問題FAQカテゴリ


Return to Top ▲Return to Top ▲