労働問題425 労働審判は「3回」もない?会社経営者が知るべき期日回数の真実と第1回の重要性

この記事の結論

「原則3回以内」という制度設計ですが、実務上はそれよりも遥かに早く結論が出ます。

  • 第1回が「本番」である:
    全体の約3分の1が初回で決着します。裁判所はこの1回でほぼすべての心証を固めるため、初回で出せなかった証拠は価値を失うと考えた方が賢明です。
  • 第2回は「最終確認」:
    累計で3分の2以上が第2回までに終結します。ここでは新たな争いをするのではなく、初回に出た解決案を飲むかどうかの「経営判断」のみが問われます。
  • 「3回」はあくまで上限:
    3回フルに開催されるのは極めて複雑な事案のみです。「あと2回ある」という先送りの姿勢は、裁判官に準備不足や不誠実な印象を与え、致命的な不利を招きます。

💡 経営上のポイント:

労働審判の期日は、いわば「一発勝負」の連続です。特に第1回期日までに、事実上の最終判断を下すつもりで証拠を揃え、和解のラインを決めておかなければなりません。スピード感のない対応は、それ自体が経営上のリスクとなります。

1. 労働審判手続における期日の位置づけ

 労働審判手続において、期日は単なる形式的な審理の場ではなく、事件の帰趨を左右する極めて重要な局面です。特に第1回期日は、事実上の山場となることが多く、ここでのやり取りがその後の解決方向を大きく左右します。

 会社経営者にとって重要なのは、労働審判が段階的に何度も主張を積み重ねていく手続ではないという点です。期日は限られた回数しか予定されておらず、初期段階から結論を見据えた対応が求められます。

 そのため、労働審判における期日の位置づけを正しく理解し、特に初回期日に向けて十分な準備を整えておくことが、会社経営者にとって最も重要な実務対応の一つとなります。

2. 第1回期日までに終結するケース

 労働審判手続では、第1回期日までに相当数の事件が終結しています。実務上は、全体のおよそ3分の1近い労働審判事件が、第1回期日で調停成立や取下げなどにより解決しているとされています。

 会社経営者として押さえておくべき点は、第1回期日が単なる顔合わせの場ではなく、実質的な解決の場となることが多いという事実です。この段階で、裁判所から一定の心証が示され、現実的な解決案が提示されることも少なくありません。

 第1回期日で解決に至るかどうかは、事前準備の質に大きく左右されます。事実関係や証拠が整理されていない状態で臨めば、会社側に不利な印象を与え、その後の展開にも影響を及ぼすおそれがあります。会社経営者としては、第1回期日を「最初で最大の山場」と捉える姿勢が重要です。

3. 第2回期日までに終結するケース

 労働審判手続においては、第2回期日までに解決する事件が非常に多く、第1回期日で終結した事件と合わせると、全体の3分の2を超える労働審判事件がこの段階までに終結しています。

 会社経営者にとって重要なのは、第2回期日が「最終調整の場」となることが多いという点です。第1回期日で示された裁判所の心証や問題点を踏まえ、当事者双方が現実的な落としどころを探る局面となります。

 第2回期日に向けては、新たな主張を重ねるというよりも、既に提示された争点を整理し、受け入れ可能な解決案を検討する姿勢が求められます。会社経営者としては、第2回期日までで解決する可能性が高いことを前提に、早い段階から経営判断を伴う検討を進めておくことが重要です。

4. 「原則3回以内」の正しい理解

 労働審判手続は、原則として3回以内の期日で審理を終了する制度とされています。ただし、これは「通常は3回期日が開かれる」という意味ではありません。あくまで、制度上の上限を示したものであり、実務上はそれよりも少ない回数で終結する事件が多数を占めています。

 会社経営者が誤解しやすい点として、「最大3回あるから、段階的に対応すればよい」と考えてしまうことがあります。しかし実際には、第1回または第2回期日で結論が出ることが前提で審理が進められており、3回目の期日が開かれるのは例外的なケースです。

 そのため、「原則3回以内」という制度趣旨を正しく理解し、期日が少ないことを前提とした準備と判断が不可欠です。回数に余裕がある制度ではないことを認識することが、会社経営者にとって重要な実務感覚となります。

5. 会社経営者が想定すべき実務対応

 労働審判手続では、期日の回数が少ないことを前提に、会社経営者自身が早期に判断を下す場面が多く訪れます。特に、第1回・第2回期日で解決するケースが大半である以上、初動段階から結論を見据えた対応が不可欠です。

 会社経営者としては、「次の期日で考えればよい」という姿勢ではなく、最初の期日までに事実関係、証拠、会社としての方針を整理しておく必要があります。そのうえで、調停による解決を選択するのか、審判による判断を受けるのかについても、現実的に検討しておくことが重要です。

 労働審判の期日は限られており、対応を先送りにする余裕はありません。期日回数の実態を正しく理解し、短期間で適切な経営判断を行うことが、会社経営者にとって最大のリスク管理につながります。

 

監修

弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表

東京大学法学部卒業 / 2003年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)

専門実績 労働審判制度の運用と実務

最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員や、日本弁護士連合会 労働法制委員会 事務局次長を歴任。労働審判制度の運用に深く関わり、現在も経営法曹会議会員として経団連労働法フォーラムの報告担当を務めるなど、一貫して経営者側の労働実務に携わっています。

経営者の皆様へ

私自身、2006年に事務所を開設し、経営者として「給料を支払う側」の責任を負う立場となって初めて、その重圧と孤独を実感いたしました。理屈のみの解決ではなく、会社を理不尽なトラブルから守り、経営者の皆様が本業に専念できるよう、精神的なストレスからの解放を第一に考えて職務に当たっています。

参考動画

 

労働審判対応について網羅的に知りたい方へ

 本FAQでは、労働審判に関する個別の論点や実務上のポイントを解説していますが、

 労働審判の全体像や会社側としての対応戦略を体系的に理解したい方は、下記ページもあわせてご覧ください。

▶ 労働審判の会社側対応を網羅的に解説した特設ページ

この同ページでは、
・労働審判の基本的な流れ
・第1回期日の重要性
・会社側が準備すべき事項
・和解戦略の考え方
・訴訟移行を見据えた対応方針
など、会社経営者の視点から、労働審判対応の全体像を体系的に整理しています。

「労働審判を申し立てられたが、まず何から手を付けるべきか分からない」
「全体像を押さえたうえで戦略的に対応したい」
という場合に特に有益な内容となっています。

 

よくある質問(FAQ)

Q:第1回期日は、具体的にどのようなことが行われるのでしょうか? A: 単なる手続の確認ではありません。裁判官と審判員から、提出した書面の内容について鋭い質問(面接)がなされ、その直後に裁判所としての「心証(どちらが優勢か)」と「解決案」が提示されます。まさに「その場で審理し、その場で案が出る」スピード感です。

Q:相手方の嘘が第1回で発覚しなかった場合、第2回で挽回できますか? A: 非常に困難です。第1回が終わった時点で裁判所の心証は固まってしまうことが多いため、相手の主張を崩すための証拠は、第1回期日の前に提出する答弁書にすべて添付しておく必要があります。

Q:どうしても都合がつかない場合、回数を増やしたり、期間を延ばしたりできますか? A: 労働審判法により「迅速な解決」が義務付けられているため、合理的な理由(主要な証人の病気など)がない限り、回数を増やしたり期日を延期したりすることは認められません。

 

労働審判に関するFAQ

 

最終更新日2026/2/25

労働問題FAQカテゴリ


弁護士法人四谷麹町法律事務所

〒102-0083 東京都千代田区麹町6丁目2番6
PMO麹町2階

Copyright ©問題社員、労働審判、残業代トラブルの対応、経営労働相談|弁護士法人四谷麹町法律事務所 All Rights Reserved.
Return to Top ▲Return to Top ▲