労働問題307 企画業務型裁量労働制の対象社員に対し、残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要がありますか。

この記事の要点

企画業務型裁量労働制は「労働時間をみなす制度」であり、残業代の支払を完全に免除する制度ではない

専門業務型裁量労働制(304番)と同様に、休憩・休日・割増賃金等の労基法規定は原則どおり適用されます

企画業務型裁量労働制は専門業務型と異なり、労使委員会の5分の4以上の多数決議と届出によって成立する——要件が非常に厳格

労使協定ではなく「労使委員会の決議」が必要な点が大きな違いです

みなし時間が法定労働時間を超える場合や法定休日に労働させる場合には、36協定の締結・届出と時間外・休日割増賃金の支払が必要

専門業務型と全く同じ取り扱いです(304番参照)

深夜(22時〜5時)に労働させた場合には、みなし時間の設定にかかわらず、深夜割増賃金の支払が必要

これも専門業務型と同様の取り扱いです

01企画業務型裁量労働制の概要(労基法38条の4)——専門業務型との違い

 企画業務型裁量労働制(労基法38条の4)は、287番で解説した裁量労働制の一種で、専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)と同様に、実労働時間と関係なく決議で定められた時間労働したものとみなす制度です。ただし、企画業務型と専門業務型では、成立するための手続き要件が大きく異なります。

比較項目 専門業務型(304番〜306番) 企画業務型
根拠条文 労基法38条の3 労基法38条の4
成立要件 労使協定の締結・届出 労使委員会の設置+委員の5分の4以上の多数決議+届出
対象業務 省令で定める19業務に限定 事業の運営に関する企画・立案・調査・分析業務
要件の難度 比較的手続きが簡明 労使委員会の設置・運営が必要であり、要件が厳格

 企画業務型裁量労働制の対象業務は「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」であり、その業務の性質上遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があり、使用者が具体的な指示をしないこととする業務です。また、対象労働者も「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」に限定されます。

02みなし時間と実労働時間の関係——労働時間把握義務の免除

 使用者は労働者の労働時間を把握し、把握した時間に応じて算定した賃金を支払う義務を負うのが原則ですが、企画業務型裁量労働制の適用により、労働時間把握義務を免除されることになります(平成13年4月6日基発339号)。

 本制度は、みなし労働時間の決定を労使自治に委ねるものである以上、企画業務型裁量労働制の適用要件を充足する限り、みなし労働時間と実労働時間が乖離している場合であっても、みなし労働時間労働したものとみなされることになります。この点は専門業務型裁量労働制(304番)と同様の取り扱いです。

03企画業務型裁量労働制は残業代を免除する制度ではない

 本制度は、労働時間をみなす制度であり、労働時間に関する労基法の規制の適用を除外する制度ではありませんので、休憩(労基法34条)、休日(同法35条)、時間外及び休日の労働(同法36条)、時間外、休日及び深夜の割増賃金(同法37条)などの規定は原則どおり適用されます。

 「企画業務型裁量労働制を導入したから残業代は一切不要」という考えは誤りであり、専門業務型裁量労働制(304番)と全く同様の取り扱いです。

労基法の規定 適用の有無 根拠条文
休憩(6時間超→45分・8時間超→1時間) 原則どおり適用 労基法34条
休日(週1回以上) 原則どおり適用 労基法35条
時間外・休日労働(36協定の締結・届出) みなし時間が法定時間超・法定休日労働の場合は必要 労基法36条
時間外・休日割増賃金(25%・35%以上) みなし時間が法定時間超・法定休日労働の場合は必要 労基法37条1項
深夜割増賃金(25%以上) 深夜に労働させた場合は常に必要 労基法37条4項

04みなし時間が法定労働時間を超える場合の残業代と36協定

 みなし時間が法定労働時間(労基法32条:1日8時間・週40時間)を超える場合や法定休日に労働させる場合には、時間外・休日労働に関する労使協定の締結・届出(同法36条:36協定)や時間外・休日割増賃金の支払(同法37条1項)が必要となります。

 「企画業務型裁量労働制を導入したから36協定も残業代も不要になる」という理解は誤りです。36協定の締結・届出の必要性については、企画業務型であっても専門業務型(304番)と同様です。

05休日・深夜労働の割増賃金

 深夜(22時〜5時)に労働させた場合には、深夜割増賃金の支払(同法37条4項)が必要となります。また、法定休日に労働させた場合は休日割増賃金(35%以上)の支払が必要です。いずれも、みなし時間の設定内容にかかわらず発生します。

 企画業務型裁量労働制においても、専門業務型(304番)と同様に、使用者の労働時間把握義務は免除されますが、深夜・休日割増賃金の支払義務は免除されません。深夜・休日に業務を行う可能性がある場合の管理については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

06まとめ

 企画業務型裁量労働制は「労働時間をみなす制度」であり「残業代を免除する制度」ではありません。専門業務型裁量労働制(304番)と同様に、休憩・休日・時間外休日労働・割増賃金に関する労基法の規定は原則どおり適用されます。みなし時間が法定労働時間を超える場合や法定休日に労働させる場合には36協定の締結・届出と時間外・休日割増賃金の支払が必要であり、深夜に労働させた場合は深夜割増賃金の支払が必要です。企画業務型裁量労働制の適正な導入・運用については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。企画業務型裁量労働制の導入・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 企画業務型裁量労働制の対象者には残業代を支払わなくてよいですか。

A. 完全に支払わなくてよいわけではありません。企画業務型裁量労働制は「労働時間をみなす制度」であり「残業代を免除する制度」ではありません。みなし時間が法定労働時間を超える場合や法定休日に労働させる場合には時間外・休日割増賃金の支払が必要であり、深夜に労働させた場合は深夜割増賃金の支払が必要です。

Q2. 企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制の違いは何ですか。

A. 最大の違いは成立要件です。専門業務型は「労使協定の締結・届出」によって成立しますが、企画業務型は「労使委員会の設置+委員の5分の4以上の多数による決議+届出」という厳格な要件が必要です。また、対象業務も異なり、企画業務型の対象は「事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析業務」です。残業代に関する取り扱いは両者とも同様です。

Q3. 企画業務型裁量労働制の対象者が深夜に働いた場合も割増賃金は必要ですか。

A. 必要です。深夜(22時〜5時)に労働させた場合には、みなし時間の設定内容にかかわらず、深夜割増賃金(25%以上)の支払義務が生じます(労基法37条4項)。「企画業務型裁量労働制を適用しているから深夜割増賃金も不要」という理解は誤りです。

Q4. 企画業務型裁量労働制と36協定の関係を教えてください。

A. みなし時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合や法定休日に労働させる場合には、36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)の締結・届出が必要です(労基法36条)。企画業務型裁量労働制を導入したとしても36協定が不要になるわけではありません。この点は専門業務型(304番)と同様です。

最終更新日:2026年5月10日


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