労働問題268 代休を取得させた場合に残業代(休日割増賃金)の支払は必要ですか。

この記事の要点

代休を取得させた場合でも、休日労働をさせた事実は変わらないため、休日割増賃金の支払は必要

代休を与えることで休日割増賃金の支払義務が消えるわけではありません

代休日には賃金が支払われないため、代休を与えた場合は100%部分が填補され、35%部分のみ支払えば足りる

休日労働日の賃金(135%)から代休日の賃金控除(100%)を差し引いた35%が実際の支払額になります

代休を与える場合でも、事前に36協定を締結・届出しておく必要がある

代休の付与は、法定休日に労働させた事実に対応する事後の措置であり、36協定の必要性は変わりません

振替休日(事前の振替)とは異なり、代休(事後の付与)では休日割増賃金の全額支払義務が生じる

267番参照——振替休日では休日割増不要、代休では35%部分の支払が必要という違いがあります

01「代休」とは何か

 代休とは、休日労働をさせた代わりに取得させる休日のことをいいます。法定休日に出勤させた後、別の日を休日として付与することが代休の典型的な形です。

 267番で解説した「振替休日」(事前に休日と労働日を入れ替える制度)とは異なり、代休は休日労働が先に行われ、事後的に別の日を休日として付与するものです。この「事後性」が、振替休日との法的な取り扱いの違いを生む根本的な理由です。

02代休を与えても休日割増賃金の支払義務は免れない

 代休を取得させた場合であっても、休日労働をさせたことに変わりはないため、残業代(休日割増賃金)の支払も必要となります。

 代休とは、あくまで「休日労働の事後的な代償として別の日を休ませる措置」にすぎません。代休を与えることで、法定休日に労働させた事実が変わるわけではありません。したがって、休日割増賃金(35%以上)の支払義務は、代休を与えた場合でも消滅しません。

よくある誤解——代休を与えれば休日割増賃金は不要ではありません

「代休を取らせたのだから休日出勤の分の賃金は払わなくてよい」という運用をしている会社がありますが、これは誤りです。代休の付与は休日割増賃金の支払義務とは別の問題です。代休を与えても、35%部分の割増賃金(または代休を与えない場合は135%全額)の支払義務は残ります。

0336協定の締結・届出の必要性

 代休を取得させる場合であっても、休日労働をさせたことに変わりはないため、事前に36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)の締結・届出をしておく必要があります。

 36協定は、法定休日に労働させる前に締結・届出していなければなりません。代休の付与予定があっても、36協定なしに法定休日に労働させることはできません。休日労働後に代休を付与すれば36協定が不要になるわけではありませんので、注意が必要です。

04代休を与えた場合の賃金計算——35%部分のみでよい理由

 残業代(休日割増賃金)は35%増しになりますので、通常の労働日の賃金の135%に相当する時間単価になるのが通常ですが、代休を取らせた場合は100%部分については填補したことになりますので、35%部分についてのみ支払えば足りることになります。

代休あり・代休なしの賃金計算の違い
代休なしで法定休日に出勤させた場合:
休日出勤分の賃金(100%)+割増賃金(35%)= 合計135%の支払が必要

代休ありで法定休日に出勤させた場合:
休日出勤分の賃金(100%)+割増賃金(35%)= 合計135%が必要
ただし代休日は働いていないため賃金控除(▲100%)が可能
→ 差し引き35%部分のみ追加払いすれば足りる

つまり代休を与えた場合、100%部分は代休日の賃金不支給によって填補され、残る35%部分のみを追加で支払う必要があります。

 この計算は、「就業規則で代休取得日の賃金を支払わない(ノーワーク・ノーペイ)旨が定められている場合」を前提とします。就業規則に代休取得日の賃金に関する定めがない場合や、有給の代休として定めている場合は計算が異なりますので、就業規則の整備が重要です。

05振替休日との比較——混同に注意

項目 振替休日(事前) 代休(事後)
タイミング 事前(出勤前)に休日と労働日を入れ替える 事後(休日労働後)に別の日を休日として付与
元の休日の性質 通常の労働日に変わる 法定休日のまま(休日労働の事実は変わらない)
休日割増賃金 不要(ただし時間外割増が発生する場合あり) 必要——代休なしなら135%、代休ありなら35%部分
36協定の必要性 法定休日労働がなくなるため、振替後の状況次第 必要——休日労働をさせることに変わりなし

 実務上、「代休を与えれば36協定も休日割増賃金も不要」という誤った理解のもとで運用が行われているケースがあります。代休は事後的な措置であり、36協定の必要性・休日割増賃金の支払義務のいずれも免除されません。

06まとめ

 代休を取得させた場合でも、休日労働をさせた事実は変わらないため、事前に36協定の締結・届出をしておく必要があり、休日割増賃金の支払も必要です。休日割増賃金は35%増しになるため通常135%相当が発生しますが、代休を取らせた場合は100%部分が填補されるため、35%部分についてのみ追加支払いをすれば足ります。ただし、代休日の賃金を控除できるかどうかは就業規則の定めによります。

 振替休日(事前の振替)とは異なり、代休(事後の付与)では36協定の必要性・休日割増賃金の支払義務は免れません。代休制度の設計・就業規則の整備・賃金計算の適正化については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。代休・振替休日の設計・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 代休を与えれば休日割増賃金を支払わなくてよいですか。

A. 支払わなくてよいわけではありません。代休を与えても、法定休日に労働させた事実は変わらないため、休日割増賃金の支払義務は残ります。代休を与えた場合は100%部分が填補されるため35%部分のみの追加払いで足りますが、この35%部分の支払は省略できません。

Q2. 代休を与えた場合、割増賃金はどのくらい支払えばよいですか。

A. 就業規則で代休取得日の賃金を不支給とする旨が定められている場合、代休を与えることで100%部分が填補されるため、35%部分のみ追加支払いすれば足ります。代休を与えない場合は135%全額の支払が必要です。

Q3. 代休を与えることなく休日割増賃金だけを支払うことはできますか。

A. できます。代休の付与は義務ではなく、任意の制度です。代休を与えない場合は休日割増賃金の全額(135%相当)を支払う必要があります。法律上は代休の付与義務はなく、割増賃金を支払うことで法的な義務は履行されます。

Q4. 代休と振替休日の賃金上の違いは何ですか。

A. 振替休日(事前の振替)では元の休日が通常の労働日に変わるため、その日の労働は通常の残業と同様に扱われ、休日割増賃金(35%以上)は発生しません(週40時間超の場合は時間外割増が発生)。一方、代休(事後の付与)では元の休日は法定休日のまま変わらないため、休日割増賃金(35%以上)の支払義務が残り、代休を与えた場合は35%部分のみ追加払いが必要です。

最終更新日:2026年5月10日


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