労働問題25 解雇権濫用かどうかの判断要素とは?6つの考慮事情と注意指導の重要性を会社側弁護士が解説
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解雇権濫用の判断は6つの要素を総合考慮する。単一の事情だけで結論は出ない ①企業の種類・規模②職務内容・採用理由③勤務不良の程度④回数・改善可能性⑤会社の注意指導の有無⑥他労働者との均衡、の6要素を総合的に検討します(労働事件審理ノート参照)。これらのいずれかが弱ければ解雇権濫用と判断されるリスクが高まります。 |
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6要素のうち最も会社側がコントロールできるのが⑤会社の注意指導。記録化が実務上の最重要課題 段階的な注意・警告・反省の機会付与の記録がなければ、他の要素がそろっていても解雇権濫用と判断される可能性が高くなります。日常の人事管理として注意指導を記録化することが解雇トラブル予防の核心です。 |
目次
01解雇権濫用判断の基本的枠組み
普通解雇(狭義)の有効性が争われる場面では、当該労働契約を終了させなければならないほど勤務成績・勤務態度等が不良で、職務を行う能力や適格性を欠いているかが問題となります。
解雇権濫用かどうかの判断基準は、労働契約法第16条に定める「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」です。この基準を、裁判所は単一の事情だけで判断するのではなく、複数の考慮要素を総合検討することによって評価します。労働事件審理ノート(裁判官が解雇事件の審理において参照する実務書)では、この総合考慮の枠組みが示されており、実務上の重要な指針となっています。
会社経営者として重要なのは、「1つの強力な理由があれば解雇できる」という単純な発想ではなく、複数の要素を複合的に満たしているかを検証する姿勢です。
026つの考慮要素の全体像
普通解雇(狭義)における解雇権濫用の判断では、以下の6つの要素が総合的に考慮されます(労働事件審理ノート参照)。
② 職務内容、労働者の採用理由(職務に要求される能力・勤務態度がどの程度か)
③ 勤務成績・勤務態度の不良の程度(企業の業務遂行に支障を生じ、解雇しなければならないほどに高いかどうか)
④ その回数(1回の過誤か、繰り返すものか)、改善の余地があるか
⑤ 会社の指導があったか(注意・警告をしたり、反省の機会を与えたりしたか)
⑥ 他の労働者との取扱いに不均衡はないか
これらは相互に関連しており、一つ一つを独立した基準として扱うのではなく、事案全体の状況を踏まえた総合判断がなされます。ただし、⑤の注意指導の有無は、会社側がもっとも直接的にコントロールできる要素であり、実務上特に重要な意味を持ちます。
03①②:企業の種類・規模と職務内容・採用理由
①企業の種類・規模は、当該解雇の相当性を評価する文脈を決定づける要素です。大企業と中小企業では、社内での業務振り分けや代替要員の確保可能性が異なります。大企業では配置転換や職務変更などの余地が広く、これを尽くさずに解雇した場合には相当性を欠くと判断されやすくなります。一方、小規模な企業では代替措置の余地が限られることもあり、この点が解雇の相当性判断に影響することがあります。
②職務内容・採用理由は、当該労働者に要求される能力・勤務態度の水準を設定する要素です。特定の専門能力を前提に採用された中途採用者と、ポテンシャル採用の新卒者とでは、能力不足の評価が異なります。高度な専門性を約束して採用したにもかかわらず、その能力を発揮できない場合には、解雇の合理的理由として認められやすくなります。逆に、汎用的な業務を担当する一般職員の場合には、より丁寧な指導と改善機会の付与が求められます。
04③④:勤務不良の程度・回数と改善可能性
③勤務成績・勤務態度の不良の程度は、解雇の客観的合理性を直接支える中心的な要素です。「企業の業務遂行に支障を生じ、解雇しなければならないほどに高いかどうか」が問われます。単に「期待を下回る」程度では足りず、業務に具体的な支障が生じていることを、客観的な証拠によって示す必要があります。抽象的な評価や主観的な不満では、この要素を満たすことはできません。
④回数・改善の余地は、解雇の必要性・不可避性を判断する要素です。1回限りの過誤と、繰り返し発生する問題行動とでは、解雇の相当性評価が大きく異なります。また、改善の余地があるかどうかも重要です。指導後に一時的に改善が見られたにもかかわらず再び問題行動が生じた場合と、全く改善の姿勢が見られない場合とでは、解雇の相当性判断が異なります。過去の改善状況と再発状況を時系列で整理できることが重要です。
05⑤:会社の注意指導の有無(最重要要素)
6つの要素の中で、会社経営者が実務上最も意識すべきなのが⑤会社の注意・指導の有無です。「注意・警告をしたり、反省の機会を与えたりしたか」が問われます。
解雇は最終手段です。いきなり解雇に踏み切ることは、「より軽い措置を尽くさなかった」として相当性を欠くと評価されます。少なくとも、口頭での注意・指導から始まり、書面による警告、改善計画の提示、期限を設けた改善要請という段階的な対応を経ていることが必要です。
06⑥:他の労働者との取扱いの均衡
⑥他の労働者との取扱いの均衡は、解雇という処分の相当性を検証する比較的な視点です。同様の問題行動や勤務状況を抱える他の労働者に対してどのような処遇をしてきたかが問われます。
例えば、同程度の勤務成績不良や業務命令違反があった他の社員に対して注意・指導にとどめていたにもかかわらず、特定の社員だけ解雇した場合、処分の均衡を欠くとして解雇権濫用と評価されるリスクがあります。また、過去に類似のケースで懲戒処分にとどめた事案があれば、それとの均衡も問題になります。
会社経営者として重要なのは、社内の処分実績を一定のルールに基づいて記録・管理しておくことです。恣意的な人事処分の積み重ねは、後に均衡性の観点から問題を指摘されるリスクを高めます。
07会社経営者が取るべき実務対応
6つの判断要素を踏まえると、会社経営者が日常の人事管理において取るべき対応が明確になります。
最も重要なのは、問題が発生した時点からの記録の積み重ねです。①②については採用時の職務要件・期待能力を明文化した文書を保管すること、③④については業績評価記録・面談記録を時系列で作成すること、⑤については注意書・警告書・始末書・指導記録を書面で残すこと、⑥については類似事案の処分記録を一覧化しておくことが有効です。
解雇を決断する前には、この6つの要素を自社の状況に照らして検証し、弱い部分があれば改善措置を先に講じることが重要です。「今すぐ解雇できる準備が整っているか」ではなく、「裁判所の審査に耐えられるか」を基準に判断する姿勢が求められます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年6月28日