労働問題182 60歳定年後65歳までの雇用確保義務と会社側の対応【会社側弁護士が解説】
60歳定年退職間近の社員が「65歳まで雇用してもらう権利がある」と主張してきた場合、何を根拠にそのような主張ができるのでしょうか。また、会社としてはどのように対応すべきでしょうか。
本ページでは、高年齢者雇用確保措置の義務と実務上の対応について、会社側・使用者側専門の弁護士が解説します。
01高年齢者雇用安定法第9条の定める義務
高年齢者雇用安定法(高年法)9条は、65歳未満の定年の定めをしている会社は、以下のいずれかの高年齢者雇用確保措置を講じなければならないとしています。定年の引上げ・継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)・定年の定めの廃止の3つのいずれかです。
60歳定年の場合は、これらいずれかの高年齢者雇用確保措置を取る必要があります。高年齢者雇用確保措置を取っていない状態では、高年法9条を根拠に65歳までの雇用確保を要求されることがあります。
02継続雇用制度の対象者と労働条件
実務上は「継続雇用制度の導入」(定年後の再雇用)を選択する会社が多いです。継続雇用制度では、社員が希望する場合に定年後も引き続き雇用することとなります。ただし、再雇用後の労働条件は正社員時代と同一である必要はなく、職務内容・勤務形態・賃金等を変更することは可能です。
継続雇用を拒否することが許容される場合もありますが、合理的な理由が必要です。例えば、心身の故障のため業務に耐えられない場合・勤務状況が著しく不良で引き続き従業員として在職させることが困難な場合などが認められることがあります。
03高年齢者雇用確保措置を取っていない場合のリスク
高年齢者雇用確保措置を取っていない場合、ハローワーク(公共職業安定所)の所長から指導・助言を受ける可能性があります。また、社員から高年法9条を根拠に雇用確保を求められた場合に対応が困難になります。
ただし、高年法9条に違反したからといって直ちに社員に65歳までの雇用請求権が発生するわけではないとされており、あくまで公的機関による行政指導の対象となるものとされています。とはいえ、法令違反状態を放置することはリスクがありますので、速やかに高年齢者雇用確保措置を整備することをお勧めします。
04問題社員の再雇用拒否と再雇用条件の設計
問題のある社員の再雇用をやめたい場合・再雇用条件(賃金・職務内容等)を適切に設計したい場合は、弁護士に相談の上で対応方針を決定することをお勧めします。同一労働同一賃金ルール(パートタイム・有期雇用労働法)との関係も考慮する必要があります。高年齢者雇用確保措置の整備・継続雇用制度の設計については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。高年齢者雇用確保措置・継続雇用制度の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 高年齢者雇用確保措置を取っていない場合、社員に65歳まで雇用する法的義務が生じますか。
A. 高年齢者雇用安定法9条違反は行政指導の対象となりますが、違反したからといって社員に直ちに65歳までの雇用請求権が発生するわけではないとされています。ただし、法令違反状態を放置することはリスクを招きますので、速やかに継続雇用制度等の整備を進めることをお勧めします。
Q2. 再雇用後の賃金を大幅に下げて提示したところ社員が拒否しました。どうすればよいですか。
A. 社員が再雇用の提示を拒否した場合、会社が誠実に再雇用の機会を提供しており、その条件が合理的であれば、再雇用しなかったとしても原則として問題ありません。ただし、再雇用条件が著しく不利であるために社員が拒否せざるを得ない状況の場合は問題になる可能性があります。具体的な対応については弁護士に相談することをお勧めします。
Q3. 問題のある社員を再雇用しないことはできますか。
A. 心身の故障のため業務に耐えられない場合・勤務状況が著しく不良で引き続き従業員として在職させることが困難な場合等は、再雇用を拒否することが認められる場合があります。ただし、問題のある社員の再雇用拒否には法的リスクが伴いますので、事前に弁護士に相談して対応方針を決定することをお勧めします。
最終更新日:2026年5月10日