労働問題12 雇入れから14日以内なら自由に解雇できる?―会社経営者が誤解しやすい解雇の落とし穴

1. 「14日以内なら自由に解雇できる」という誤解

 雇入れから14日以内であれば、会社は自由に労働者を解雇できると考えている会社経営者は少なくありません。しかし、この理解は誤りであり、実務上は大きなリスクを伴います。

 この誤解は、労働基準法21条が、一定の労働者について解雇予告義務が適用されない旨を定めていることから生じています。同条は、「試の使用期間中の者」について、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には解雇予告義務が適用されると規定していますが、あくまで解雇予告義務の有無を定めた条文にすぎません。

 会社経営者として理解しておくべきなのは、解雇予告義務が免除される場合であっても、解雇そのものが常に有効となるわけではないという点です。14日以内という期間のみを理由に、安易に解雇できると判断することは、後の紛争につながりかねません。

2. 労基法21条の正しい位置付け

 労働基準法21条は、一定の労働者について解雇予告義務が適用されない場合を定めた規定です。同条は、「試の使用期間中の者」について、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には解雇予告義務が適用されると規定しています。

 ここで注意すべきなのは、労基法21条はあくまで「解雇予告義務の有無」を定めているにすぎず、解雇の有効性そのものを定めた条文ではないという点です。すなわち、同条により解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要とされる場合であっても、解雇が常に適法・有効になるわけではありません。

 会社経営者の中には、「解雇予告が不要=自由に解雇できる」と誤解されている方も見受けられますが、解雇の有効性については、別途、労働契約法の規定や裁判例に基づく判断が必要となります。この点を正しく理解していないと、解雇予告義務は免れても、解雇自体が無効と判断されるリスクがあることに留意すべきです。

3. 14日以内であっても解雇が無効となる場合

 雇入れから14日以内の労働者であっても、解雇が常に有効となるわけではありません。解雇に客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない場合には、解雇権の濫用として解雇は無効となります。

 この点は、労働契約法16条により明確にされています。同条は、解雇について、その有効性を判断する一般的な基準を定めており、雇用期間の長短によって適用が左右されるものではありません。そのため、雇入れ直後であっても、解雇理由の内容や程度が不十分であれば、解雇は認められません。

 会社経営者としては、「まだ入社して間もないから」という理由だけで解雇を正当化できるわけではないことを理解しておく必要があります。業務遂行能力や勤務態度を理由とする場合であっても、その評価が客観的に裏付けられているかが重要な判断要素となります。

4. 法律上、特に解雇が制限されるケース

 雇入れから14日以内であっても、法律により解雇が明確に制限されている場合があります。これらのケースでは、解雇予告義務の有無にかかわらず、解雇自体が無効となる点に注意が必要です。

 代表的なものとして、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30日間の解雇が挙げられます。また、女性労働者の妊娠や出産、産前産後休業等を理由とする解雇も法律上禁止されています。

 さらに、労働基準法違反を監督機関に申告したことを理由とする解雇、性別を理由とする解雇、不当労働行為としての不利益取扱いに当たる解雇、公益通報を行ったことを理由とする解雇なども、無効と判断されます。

 これらの制限は、雇用期間の長短を問わず適用されます。会社経営者としては、「雇入れ直後であるから問題ない」と考えることなく、解雇理由が法令に抵触していないかを慎重に確認することが不可欠です。

5. 雇入れ直後の解雇に潜む実務上のリスク

 雇入れから14日以内の解雇は、解雇予告義務が免除される場合があることから、会社経営者にとって対応が容易に思われがちです。しかし、実務上はむしろリスクが高い場面といえます。

 雇用期間が短い場合、勤務状況や能力不足、問題行動についての客観的な証拠が十分に蓄積されていないことが多く、解雇に客観的合理性があることを立証することが困難になりがちです。そのため、よほど明白な解雇理由がない限り、解雇権濫用として無効と判断されるリスクがあります。

 また、労働審判や訴訟に発展した場合、早期に和解や調停が成立すれば和解金額は比較的低額に抑えられる傾向にありますが、紛争が長期化し判決に至った場合には、想定外に高額の賃金支払を命じられることもあります。会社経営者としては、雇入れ直後の解雇ほど慎重な判断が求められることを理解しておく必要があります。

6. 会社経営者が取るべき慎重な対応

 雇入れから14日以内であっても、解雇が常に認められるわけではない以上、会社経営者としては慎重な対応が不可欠です。特に、感情的な判断や場当たり的な対応は、後の紛争を招く原因となります。

 まず、問題となっている行為や能力不足について、事実関係を整理し、客観的な資料や記録を残すことが重要です。雇用期間が短い場合であっても、指導内容や改善の機会を与えた事実を記録しておくことで、解雇の合理性を説明しやすくなります。

 また、解雇以外の選択肢として、配置転換や試用期間の延長、契約期間満了による対応が可能かどうかを検討することも有効です。安易に解雇を選択するのではなく、法的リスクを踏まえた上で最適な対応を選ぶことが、会社経営者にとって重要な実務判断といえるでしょう。

 

最終更新日2026/2/7

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