労働問題1013 出向中における出向元と出向先の権限分配について教えて下さい。

 出向中は,出向元と出向労働者との間の労働契約は保持されたまま,当該労働契約に基づく労務指揮権の全部又は一部が出向元から出向先に移転するものと考えるのが一般的です。つまり,出向は,出向元・出向先双方との二重の労働契約関係を生じさせることになります。
 問題となりやすいのは,出向労働者に対する懲戒権や解雇権を,出向元・出向先どちらが有しているのかという点です。これについては,労働者,出向元,出向先の三者間の合意内容に委ねられているといえます。行政通達(昭和61年6月6日基発333号)では,「在籍型出向の出向労働者については、出向元及び出向先の双方とそれぞれ労働契約関係があるので、出向元及び出向先に対しては、それぞれ労働契約関係が存する限度で労働基準法等の適用がある。すなわち、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取決めによって定められた権限と責任に応じて出向元の使用者又は出向先の使用者が出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負うものである。」としています。したがって,出向中の権利義務関係が争われる場合,個別事案ごとに当事者間で当該権利義務をどのように分配することに合意していたのかを確認していくことになります。
 賃金の支払義務は,通常の出向の場合,一次的には出向先が支払うことがほとんどですが,最終的な支払義務は出向元が負うことになります。
 懲戒解雇を含む解雇権についても,特段の事情がない限り出向元が保持していると考えます。
 労働時間などの就業管理や職場秩序維持に関する権限は,労務提供先として指揮命令権を有している出向先が保持しているのが一般的です。
 安全配慮義務違反や使用者責任に基づく損害賠償責任については,具体的な指揮命令権を有している出向先が負うことが多いですが,出向先の職務について出向元の指揮監督も及んでいる場合には,出向元もこれらの責任を負う場合があります。

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