問題社員133 キレやすい管理職。

動画解説

 

1. キレやすい管理職が会社経営に与える重大リスク

 キレやすい管理職の問題は、単なる性格の問題ではありません。会社経営者の視点で見れば、組織秩序、業務遂行、法的リスクに直結する重大な経営課題です。

 まず最も分かりやすいのは、コミュニケーションの断絶です。部下が「また怒鳴られるのではないか」と萎縮すれば、必要な報告・相談が滞ります。結果として、問題の早期発見ができず、小さなミスが大きな損失へと拡大する危険があります。

 次に、信頼関係の崩壊です。感情的に怒鳴る、人格を否定するような発言をする、威圧的態度を取るといった行為が常態化すれば、部下との信頼関係は破壊されます。信頼を失った管理職の下では、組織は機能しません。

 さらに深刻なのは、ハラスメントリスクです。キレやすい管理職は、パワーハラスメントに発展する言動を取りやすい傾向があります。一度問題化すれば、社内調査、再発防止措置、損害賠償請求対応など、会社経営者にとって極めて重い負担となります。

 また、職場環境の悪化による離職リスクも見逃せません。「あの上司の下では働けない」という理由で優秀な社員が退職を続ければ、会社にとっての損失は計り知れません。

 そしてもう一つの重大な問題は、統治構造の崩れです。キレやすい管理職が傍若無人に振る舞い、誰も止められない状況が続けば、それは会社経営者の統治責任の問題となります。放置は、組織全体の持続可能性を脅かす経営判断上のミスであると認識すべきです。

2. なぜ辞めさせられないのか|属人化という構造問題

 キレやすい管理職に明らかな問題があるにもかかわらず、会社経営者が強く出られないケースは少なくありません。その最大の理由は、「辞められたら困る」という構造的事情、すなわち業務の属人化です。

 特定の管理職一人に依存する体制は、その人物の退職や対立によって一瞬で崩壊します。この状態自体が重大な経営リスクです。さらに、自分の影響力を維持するために意図的に情報を囲い込み、後継者を育てないといった不適切な行動が見られることもあります。

 会社経営者として最初に行うべきは、感情的な叱責ではなく、依存構造の分析です。「その人物がいなくても業務が回る体制」をどう作るか。この問いから逃げないことが、根本的解決への第一歩となります。

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3. 環境整備が最優先|「辞められたら困る」を解消する方法

 本格的な是正措置に進む前に、「強く出られない構造」を解消する環境整備が必要です。具体的には、業務の可視化、マニュアル整備、担当の複線化などが挙げられます。

 ただし、当該管理職が自らの優位性を守るために非協力的になる、あるいは新しく配置された社員を精神的に追い込むといったリスクもあります。会社経営者は現場任せにせず、主体的に関与して新たに配置した社員を守る姿勢を明確に示さなければなりません。組織の力関係を是正するプロセスこそが、環境整備の本質です。

4. 人望があるキレやすい管理職という最難関ケース

 業績を上げ、一部の部下から慕われている「カリスマ性のあるキレやすい管理職」への対処は、一歩間違えれば会社を分断させる危険があります。

 この局面で感情的に対処するのは最も危険です。日頃から公正な判断を積み重ねて経営者の求心力を高めると同時に、事実関係を客観的に整理し、ハラスメント的言動に不満を持つ潜在的な声を丁寧に把握する必要があります。このタイプへの対処は、単なる労務問題ではなく、組織全体の力学を読み解く経営戦略そのものです。

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5. まずは面談から|逃げない経営判断の重要性

 キレやすい管理職への対応において、面談から逃げることは状況を確実に悪化させます。面談の目的は、何が問題でどの行動を改めてほしいのかを、具体的かつ客観的に伝えることです。

 相手が感情的になっても、経営者は冷静さを貫き、「部下に対して怒鳴る行為をやめる」といった行動レベルでの指示を明確に下すべきです。真正面から向き合う姿勢を示すこと自体が、組織全体に対する強いメッセージとなります。

6. 証拠作りより行動改善を優先すべき理由

 記録を残すことは重要ですが、最初から「証拠作り」を目的化すると相手は防御姿勢を強め、対話ではなく対立に陥ります。最優先すべきは問題行動の是正であり、懲戒に至らないことこそが成功であるという認識を持つべきです。

 適切な面談を行い、具体的な注意をした結果として自然に記録が残るという順序が理想的です。改善のための真摯な対応を積み重ねることが、結果として法的にも強固な証拠となります。

7. 厳重注意書・懲戒処分の正しい使い方と失敗例

 面談で改善が見られない場合、厳重注意書の交付や懲戒処分を検討します。ここでの失敗は「何も書面を出さない」ことと「ろくに面談せずいきなり重い処分を出す」ことの両極端です。

 段階的な指導履歴を積み上げ、「争われた場合に説明できるか」という視点を持つことが肝要です。厳重注意書はあくまで最終警告であり、改善を求めるための手段であることを忘れてはなりません。

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8. 管理職から外すという人事判断の実務ポイント

 改善が見られない場合、経営合理性に基づく「管理職からの解任」を検討します。管理職には組織運営能力が求められるため、キレやすい性格が組織を破壊しているのであれば、適格性欠如と判断するのは正当です。

 ただし、賃金変更を伴う降格などは不利益変更としての法的ハードルがあるため、事前の是正指導履歴を明確にし、慎重な戦略設計のもとで実行する必要があります。「個人を守るのではなく、組織を守る」という判断が経営者には求められます。

9. 退職勧奨・解雇を検討すべき場面と法的リスク

 あらゆる措置を講じても改善されない場合、退職勧奨や解雇が視野に入りますが、これは最も法的リスクが高い局面です。退職勧奨は合意を目指すものですが、「強要」にならないよう冷静な対話が必要です。

 解雇を検討する際は、具体的なハラスメント行為の反復、業務への重大な支障、十分な指導機会の提供といった要件を厳格に満たす必要があります。場当たり的な強硬策は混乱を招くだけです。法的戦略を前提に進めることが不可欠です。

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10. 早期対応こそ最大の予防策|会社経営者の責任

 「もっと早く対応していれば」という後悔は実務上非常に多いものです。キレやすい言動は放置すればエスカレートし、職場環境は腐敗していきます。早期に違和感を捉え、面談を行うことこそが、コストを抑え組織を守る最も効果的な方法です。

 会社経営者に求められるのは完璧な判断ではなく、早めに動く決断力です。問題が小さいうちに手を打つ。これこそが、組織の持続可能性を担保する経営者の責任です。

 

弁護士 藤田 進太郎
監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q:業績は非常に良い管理職ですが、性格に難がある場合でも処分できますか?
A: はい、可能です。業務成績が良くても、部下への暴言や威圧的な言動で職場環境を破壊している場合、それは「管理職としての適格性欠如」にあたります。成績と行動面の問題を切り分けて評価し、段階的な指導と処分を行うことが重要です。

Q:キレやすい管理職に注意すると、さらに逆上しそうで怖くて言えません。
A: 感情的な対立を避けるため、2名体制での面談やオンライン面談の活用を検討してください。また、議論ではなく「業務命令」として淡々と事実を指摘し、改善を求める姿勢を貫くことが、会社経営者としての統治責任を果たす第一歩になります。

Q:本人が「自分を辞めさせたら仕事が回らなくなるぞ」と脅してくる場合は?
A: 典型的な属人化のリスクです。その脅しに屈すると改善は望めません。まずは業務の可視化や担当の複線化を極秘に進め、依存度を下げる「環境整備」を優先してください。並行して、法的リスクを最小限に抑えた退職勧奨や処分の準備を弁護士と進めるべきです。

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最終更新日2026/3/8


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