問題社員118 言動が乱暴で勤務態度が悪く指導に従わない。
目次
- 動画解説
- 1. 言動が乱暴で勤務態度が悪い社員が職場に与える深刻な影響
- 2. 問題社員対応で最初に会社経営者が持つべき基本的な考え方
- 3. 証拠集めより優先すべき「行動を改めさせる」という視点
- 4. 初期対応で差がつく注意・指導の進め方
- 5. 面談による注意指導が不可欠な理由と実践ポイント
- 6. 抽象論は逆効果|問題行動は事実ベースで具体的に伝える
- 7. 「自分で考えさせる指導」が通用しないケースへの注意
- 8. 普段のマネジメントと矛盾しない対応の重要性
- 9. 注意指導を行う際の心構えと失敗しやすいポイント
- 10. 書面対応(厳重注意書・顛末書等)の実務的な使い方
- 11. 配置転換・管理職見直しという選択肢
- 12. 懲戒処分・退職・解雇を検討する際の判断基準
動画解説
1. 言動が乱暴で勤務態度が悪い社員が職場に与える深刻な影響
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員が職場に存在すると、会社全体の秩序は想像以上に大きく乱されます。単に「扱いづらい社員がいる」というレベルの問題ではなく、職場環境そのものを悪化させる要因になる点を、会社経営者は正しく認識しておく必要があります。
まず最も分かりやすい影響が、職場の雰囲気の悪化です。乱暴な言動や不誠実な勤務態度は、周囲の社員に常にストレスを与えます。「また何か言われるのではないか」「関わると面倒だ」といった心理が蔓延すると、社員は仕事に集中できず、業務効率は確実に低下します。
さらに問題なのは、こうした社員の態度が周囲に連鎖する点です。直接被害を受けていない社員であっても、「嫌な職場だ」「居心地が悪い」という印象を持ちやすくなります。その結果、優秀で真面目な社員ほど、「なぜ会社は何もしてくれないのか」「この会社に将来はあるのか」と疑問を持ち、転職を考え始めることも珍しくありません。
会社経営者として特に注意すべきなのは、問題社員を放置していると、会社が社員を守らない組織だと評価されてしまう点です。これは単なる印象論ではなく、実際の離職率や採用力の低下として表面化します。職場秩序が弱い会社では、後になって懲戒処分や解雇を行おうとしても、「これまで黙認していたではないか」と反論され、法的にも不利になりがちです。
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員への対応は、当該社員本人の問題にとどまりません。周囲で真面目に働く社員を守り、健全な職場環境を維持することは、会社経営者の重要な責任です。その前提を踏まえたうえで、次章以降では、会社経営者が取るべき具体的な対応について解説していきます。
2. 問題社員対応で最初に会社経営者が持つべき基本的な考え方
言動が乱暴で勤務態度が悪く、指導にも従わない社員が現れた場合、会社経営者がまず持つべきなのは「どう処分するか」という発想ではありません。最初に考えるべきなのは、職場秩序を守り、周囲の社員を守るために、何を優先すべきかという視点です。
この種の問題対応でよく見られる失敗が、「面倒だから様子を見る」「そのうち何とかなるだろう」と初期対応を先送りしてしまうことです。しかし、問題行動を放置することは、事実上の黙認と同じ意味を持ちます。黙認が続けば続くほど、後になって注意や処分を行っても、「なぜ今さらなのか」という反発を招きやすくなり、結果として対応はより困難になります。
会社経営者がまず明確にすべきなのは、問題社員本人を守ることよりも、職場全体の秩序と周囲の社員を守ることが優先されるという基本姿勢です。問題のある社員に配慮しすぎるあまり、真面目に働く社員が不利益を受ける状態は、経営として正しい判断とは言えません。
また、問題社員対応は「一発で解決する特効薬がある」ものではありません。注意指導、配置転換、書面対応、懲戒処分など、段階的な対応を積み重ねていくことが現実的な解決策になります。そのためには、感情的に対応するのではなく、長期的なマネジメントの一環として冷静に取り組む姿勢が不可欠です。
重要なのは、会社経営者自身が「この問題から逃げない」と決めることです。言動が乱暴で勤務態度が悪い社員への対応は、決して気持ちのよい仕事ではありません。しかし、逃げれば逃げるほど問題は拡大し、最終的には会社全体に大きなダメージを与えます。問題社員対応は経営判断の一部であり、会社経営者の責任そのものであるという認識を、まずしっかり持っていただきたいと思います。
3. 証拠集めより優先すべき「行動を改めさせる」という視点
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員が出てきたとき、会社経営者がつい考えてしまいがちなのが、「将来トラブルになったら困るから、証拠を集めておかなければならない」という発想です。この考え方自体が間違っているわけではありませんが、優先順位を誤ると、問題解決から遠ざかってしまう点には注意が必要です。
本来、初期段階で最も重視すべきなのは、問題のある言動や勤務態度を実際に改めさせることです。証拠はあくまで手段であって目的ではありません。にもかかわらず、早い段階から「裁判になったらどうするか」「証拠として使えるかどうか」といった点ばかりを気にしてしまうと、肝心の注意指導が形式的になりがちです。
特に多いのが、問題がかなり深刻化してから慌てて対応を始め、「もうこの人は無理だ」と感じた段階で、初めて証拠集めを重視し始めるケースです。この段階になると、会社経営者の頭の中では「行動を改めさせる」よりも、「辞めてもらうための準備」が中心になってしまい、結果として対応が後手に回ります。
初期対応で意識していただきたいのは、早め・具体的・継続的に注意指導を行い、改善の機会を与えることです。この姿勢で対応していれば、自然とメモや記録が残り、結果的に証拠にもなります。つまり、「行動を改めさせること」を中心に据えた対応は、証拠確保とも矛盾しないのです。
逆に、証拠集めを優先するあまり、面談を避けてメールやチャットだけで注意を済ませたり、実際には深く踏み込まずに「注意した形」だけを整えたりすると、教育効果はほとんど期待できません。その結果、問題行動は改善せず、職場の不満は蓄積し、最終的にはより重い対応を取らざるを得なくなります。
証拠の確保が重要になるのは、注意指導を重ねても改善が見られない場合や、懲戒処分・退職を検討する段階です。初期段階から証拠を中心に考えるのではなく、「まずは行動を改めさせる」という軸をぶらさずに対応することが、結果として会社を守ることにもつながります。
次章では、初期対応で大きな差が出る「注意・指導の具体的な進め方」について解説します。
4. 初期対応で差がつく注意・指導の進め方
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員への対応は、初期対応の質によって、その後の展開が大きく変わります。早い段階で適切な注意・指導ができていれば、問題が深刻化する前に収束するケースも少なくありません。逆に、対応が曖昧だったり先送りされたりすると、問題はほぼ確実にエスカレートします。
まず重要なのは、「一度注意したから終わり」と考えないことです。注意・指導は単発のイベントではなく、行動を改めさせるための継続的なプロセスです。最初の段階では、問題行動を指摘し、改善を求めるというシンプルな対応で構いませんが、その後の行動を必ず確認し、改善が見られない場合は再度指導を行う必要があります。
初期対応でよくある失敗が、「軽く言えば伝わるだろう」「空気を読んで直してくれるだろう」という期待です。言動が乱暴で勤務態度が悪い社員ほど、自分の行動を問題だと認識していないことが多く、遠回しな表現ではほとんど伝わりません。会社経営者が本気で改善を求めていることを、はっきり示す姿勢が不可欠です。
また、注意・指導を行う際には、感情に任せて叱るのではなく、あくまで業務上の問題として冷静に伝えることが重要です。怒りや苛立ちが前面に出ると、「人格否定をされた」「感情的に責められた」と受け取られ、反発を招きやすくなります。目的は罰することではなく、職場秩序を回復し、業務を円滑に進めることである点を忘れてはいけません。
さらに、初期段階から「改善しない場合は、次の段階の対応があり得る」ということを示しておくことも大切です。いきなり懲戒処分を示唆する必要はありませんが、「この状態が続くと、会社として正式な対応を取らざるを得ない」というメッセージを伝えておくことで、指導の重みが伝わりやすくなります。
初期対応とは、単に注意することではなく、会社としての姿勢を示す行為でもあります。ここで中途半端な対応をすると、「この会社は本気で対応しない」という誤った学習をさせてしまいます。そうならないよう、初期の段階から一貫した姿勢で注意・指導を行うことが、会社経営者に求められる重要なポイントです。
次章では、注意・指導の効果を高めるために欠かせない「面談による指導」について、具体的に解説します。
5. 面談による注意指導が不可欠な理由と実践ポイント
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員への注意指導において、面談による直接の指導は極めて重要です。メールやチャット、社内ツールだけで済ませてしまうと、会社経営者が本気で改善を求めているというメッセージは、ほとんど伝わりません。
文字だけのやり取りは、情報量が圧倒的に少なく、ニュアンスや深刻さが伝わりにくいという弱点があります。形式上は「注意した」形が残っても、本人にとっては「軽く言われただけ」「大した話ではない」と受け止められてしまうケースが非常に多いのです。その結果、行動が改まらず、同じ問題が繰り返されます。
面談の場を設けること自体が、すでに強いメッセージになります。会議室など、業務から切り離された空間で、改まった形で話をすることで、本人は「これは本気の注意だ」と認識します。自席での軽い声掛けや、すれ違いざまの注意とは、重みがまったく異なります。
面談では、会社経営者が一方的に話すだけでなく、相手の反応や表情、声のトーンなども確認できます。これにより、どこまで理解しているのか、反発しているのか、改善の余地があるのかといった情報を把握でき、次の対応を判断する材料にもなります。教育的な観点から見ても、面談は最も効果の高い方法です。
最近では、距離やスケジュールの都合で対面が難しい場合、オンライン面談を活用することも有効です。画面越しであっても、表情や声の調子は把握できますし、会社として正式な場を設けているという点は十分に伝わります。重要なのは、「直接話す」ことを避けない姿勢です。
一方で、面談を避け、証拠を残す目的だけでメールや文書に頼る対応は、教育効果が低いだけでなく、「逃げている」「本気ではない」と受け取られるリスクもあります。面談での注意指導と、必要に応じた書面対応は、役割が異なるものとして使い分けるべきです。
面談による注意指導は、手間も精神的な負担もかかります。しかし、ここを避けて通ると、問題は必ず長期化します。職場秩序を守るために、面談から逃げないことが、会社経営者に求められる重要な実務対応です。
6. 抽象論は逆効果|問題行動は事実ベースで具体的に伝える
面談で注意指導を行う際、会社経営者が最も気をつけるべきなのが、抽象的な表現に逃げないことです。「言動が乱暴だ」「勤務態度が悪い」といった言い方は、一見もっともらしく聞こえますが、実際の指導としては不十分な場合が多くあります。
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員の多くは、自分の行動を問題だと明確に認識していません。本人の感覚では「いつも通り仕事をしているだけ」「そこまで言われるほどのことはしていない」と受け止めているケースが少なくないのです。そのため、抽象的な指摘をしても、「会社経営者が自分を嫌っているから言っているだけではないか」と受け取られ、反発や無視につながりやすくなります。
注意指導で本当に必要なのは、具体的な事実をテーマに話すことです。いつ、どこで、誰に対して、どのような言動をしたのか、その結果、職場や業務にどのような影響が出たのかを、5W1Hを意識して明確に伝えてください。こうすることで、本人は初めて「何が問題なのか」を理解しやすくなります。
また、事実に基づいた指導は、会社経営者自身を守ることにもつながります。後になって「そんなことは言われていない」「何が問題か分からなかった」と争われた場合でも、具体的な事実を示して指導していれば、会社側の対応は合理的だったと評価されやすくなります。
さらに重要なのは、問題行動を指摘するだけで終わらせないことです。その行動がなぜ問題なのか、そして本来どのような行動を取るべきだったのか、何をしてはいけなかったのかを具体的に伝えることで、改善の方向性が明確になります。「気をつけてください」「改めてください」といった曖昧な表現だけでは、行動は変わりません。
抽象論に終始した注意指導は、教育効果が低いだけでなく、「会社経営者は本気で向き合っていない」という誤ったメッセージを与えてしまうこともあります。場合によっては、「はっきり言えないなら大した問題ではない」と受け取られ、問題行動が悪化することすらあります。
問題行動に向き合う際は、勇気が必要です。しかし、事実を正確に伝え、耳の痛い内容であっても逃げずに指摘する姿勢こそが、問題社員対応の成否を分ける重要なポイントになります。
7. 「自分で考えさせる指導」が通用しないケースへの注意
問題社員対応において、「本人に考えさせることが成長につながる」「自分の頭で気づかせた方が行動が変わる」という考え方を耳にすることがあります。一般論としては正しい場面もありますが、言動が乱暴で勤務態度が悪く、指導にも従わない社員に対しては、この方法が通用しないケースが多い点には注意が必要です。
そもそも、自分で考えて適切な答えを出せるだけの能力や意欲があるのであれば、ここまで深刻な問題社員にはなっていないことがほとんどです。半年や1年かけてコーチングや対話を続けても行動がまったく改善しないのであれば、それは「方法が間違っている」可能性を疑うべき段階です。
このタイプの社員に対して「どう思う?」「どうすれば良かったと思う?」と問いかけても、的外れな回答が返ってきたり、自分に都合の良い理屈を並べ立てたりすることが少なくありません。その結果、会社経営者だけが時間と労力を消耗し、職場の状況は何も変わらないという事態に陥りがちです。
問題行動への対応として最低限必要なのは、何が問題だったのかを、事実に基づいてはっきり伝えることです。そのうえで、「その場面ではこう対応すべきだった」「今後はこの行動を取ることを求める」といった形で、具体的な行動基準を示す必要があります。ここを曖昧にしたまま「考えさせる」だけでは、改善は期待できません。
一方で、比較的軽微な問題であり、これまでの勤務態度や能力に大きな問題がない社員であれば、指摘したうえで考えさせるアプローチが有効な場合もあります。重要なのは、相手を見極めることです。すべての社員に同じ指導方法を当てはめるのではなく、その社員の行動パターンや理解力に応じて対応を変える必要があります。
「自分で考えさせる指導」は万能ではありません。むしろ、深刻な問題社員対応において安易に用いると、対応が長期化し、周囲の社員が犠牲になるリスクがあります。会社経営者としては、一般論に引きずられず、現実に即した実務的な対応を選択することが求められます。
8. 普段のマネジメントと矛盾しない対応の重要性
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員に対して注意指導を行う際、意外と見落とされがちなのが、普段のマネジメントとの整合性です。これが取れていないと、どれだけ正論を述べても、本人の納得を得ることは難しくなります。
典型的な失敗例は、問題行動を長期間黙認してきたにもかかわらず、ある日突然、厳しい注意や処分を行うケースです。会社経営者としては「限界だった」「今回の件はさすがに看過できない」と感じていたとしても、本人からすれば「今まで何も言われなかったのに、なぜ急に厳しくなるのか」と受け止められがちです。このような対応は、反発を招くだけでなく、後のトラブルの火種にもなります。
特に注意すべきなのは、人事評価との矛盾です。勤務態度や言動に重大な問題があるにもかかわらず、人事評価では「普通」やそれ以上の評価を付けていた場合、後になって「実は問題社員だった」と主張しても説得力に欠けます。評価と指導内容が一致していない状態では、会社側の対応が不合理と判断されるリスクも高まります。
また、管理職に任せきりにしている場合でも、会社経営者は「現場でどのようなマネジメントが行われているのか」を把握しておく必要があります。管理職が問題行動を放置していたり、逆に場当たり的な注意を繰り返していたりすると、組織全体の統制が取れなくなります。
普段から一貫したマネジメントを行い、小さな問題の段階で注意し、改善を求める。この積み重ねがあってこそ、後の厳重注意や懲戒処分にも合理性が生まれます。日常のマネジメントと問題社員対応は切り離されたものではなく、地続きの関係にあるという意識が重要です。
会社経営者が「普段は放置、問題が大きくなったら一気に厳しくする」という姿勢を取ってしまうと、結果的に会社が不利な立場に追い込まれます。そうならないためにも、日常のマネジメント段階から、将来の問題対応を見据えた一貫性を保つことが求められます。
9. 注意指導を行う際の心構えと失敗しやすいポイント
言動が乱暴で勤務態度が悪い社員に対する注意指導は、会社経営者にとって精神的な負担が大きい対応です。そのため、心構えが整っていないまま臨むと、かえって状況を悪化させてしまうことがあります。ここでは、注意指導を行う際に特に意識していただきたいポイントを整理します。
まず最も大切なのは、逃げない姿勢です。注意指導は経営判断の一部であり、会社経営者の仕事そのものです。「面倒だから後回しにする」「誰かに任せきりにする」という姿勢は、問題を確実に拡大させます。職場秩序を守るために、会社経営者自身が正面から向き合う覚悟が必要です。
次に重要なのは、過剰反応をしないことです。感情が高ぶった状態で注意すると、言わなくてよいことまで口にしてしまいがちです。人格否定や過去の出来事の蒸し返しは、指導の目的から外れ、対立を深める原因になります。注意指導は「叱る場」ではなく、「業務上の問題を是正する場」であるという位置づけを忘れてはいけません。
よくある失敗として、「準備不足のまま面談に臨む」ことが挙げられます。事実関係が曖昧なまま指導すると、相手に反論されて言い返せず、結果として「大したことを言われなかった」という印象を与えてしまいます。事実を整理し、伝える内容を事前にまとめておくことは、最低限必要な準備です。
また、注意指導に慣れていない場合、実際の場面で言葉が出てこないことも珍しくありません。知識として理解していることと、実践できることは別物です。そのため、可能であれば事前にシミュレーションや練習を行うことも有効です。客観的な立場で「役割を演じる」意識を持つと、感情的になりにくくなります。
さらに、注意指導の場で「いい人でいよう」としすぎるのも問題です。耳の痛いことを伝えなければならない場面で遠慮してしまうと、指導の効果は著しく低下します。伝えるべきことは、明確に、はっきりと伝えるという姿勢が不可欠です。
注意指導は一度で終わるとは限りません。だからこそ、感情に流されず、冷静で一貫した対応を積み重ねることが重要です。
10. 書面対応(厳重注意書・顛末書等)の実務的な使い方
口頭での注意指導を行っても改善が見られない場合や、行為の内容が比較的重い場合には、書面による対応を検討することになります。書面対応は、単なる「証拠作り」ではなく、指導の重みを本人に自覚させるための実務手段として位置づけることが重要です。
書面対応としてよく用いられるのが、厳重注意書、顛末書、事情説明書などです。初期段階からいきなり懲戒処分を行うのではなく、「口頭注意 → 書面による注意」という段階を踏むことで、会社としての対応に一貫性と合理性が生まれます。
厳重注意書を作成する際のポイントは、事実を具体的に記載することです。いつ、どこで、誰に対して、どのような言動や行動があったのか、その何が問題なのかを明確に示します。あわせて、「本来取るべきだった行動」や「今後求められる改善点」を記載すると、教育的効果が高まります。
一方、顛末書や事情説明書を提出させる場合は、目的を明確にしておくことが大切です。単なる事情確認なのか、反省を求めるのかによって、文書の位置づけは変わります。特に「始末書」という名称を使うと、本人が「すでに懲戒処分を受けた」と誤解するケースもあるため、名称の選び方には注意が必要です。
書面対応のメリットは、本人に対する心理的な効果だけではありません。後になって紛争になった場合、会社がどのような認識で、どのような指導を行ってきたかを示す資料としても機能します。もっとも、内容が抽象的であったり、事実関係が曖昧であったりすると、証拠としての価値は限定的になります。
なお、書面を交付する場合でも、いきなり渡すのではなく、事前または同時に面談で説明することが望ましい対応です。文書だけを渡すと、「一方的に押し付けられた」と感じさせ、反発を強めるおそれがあります。
11. 配置転換・管理職見直しという選択肢
注意指導や書面対応を行っても、言動が乱暴で勤務態度が悪い状態が続く場合、配置転換や役割の見直しを検討することも、会社経営者にとって重要な選択肢になります。必ずしも「直すか、辞めてもらうか」の二択だけではありません。
まず考えたいのが、現在の業務内容が本人の特性に合っているかという視点です。チームワークが強く求められる業務や、社内外との調整・対人対応が多い業務では、言動が乱暴な社員がいるだけで摩擦が生じやすくなります。一方で、対人接触が比較的少ない業務や、個人作業が中心の業務であれば、問題が表面化しにくくなるケースもあります。
配置転換を検討する際に特に重要なのは、異動先の上司の適性です。問題社員への対応が苦手な管理職の下に配置してしまうと、問題が再燃・拡大する可能性があります。逆に、対人調整能力が高く、注意指導を適切に行える上司のもとであれば、一定程度落ち着くケースも見られます。
また、問題社員が管理職である場合には、管理職としての適格性そのものを見直す必要があります。部下に対して乱暴な言動を取ったり、勤務態度が悪かったりする人物は、管理職として組織に悪影響を与えやすく、部下の離職リスクを高めます。その場合、管理職から外し、一般職に戻すことも現実的な対応です。
配置転換や役職見直しは、あくまで職場秩序を守るための経営判断です。本人の感情への配慮だけを優先すると、周囲の社員が不利益を被る結果になりかねません。合理的な理由と説明ができる状態で実施することが、後のトラブル防止にもつながります。
次章では、それでも改善が見られない場合に避けて通れない、懲戒処分・退職・解雇の判断基準について解説します。
12. 懲戒処分・退職・解雇を検討する際の判断基準
注意指導、書面対応、配置転換などの対応を重ねてもなお、言動が乱暴で勤務態度が悪く、指導にも従わない場合、懲戒処分や退職、場合によっては解雇を検討せざるを得ない段階に入ります。ここで重要なのは、「感情」ではなく「合理性」に基づいて判断することです。
懲戒処分の基本は、段階的・継続的な対応です。比較的軽い問題であれば譴責や戒告といった軽めの処分から始め、改善が見られなければ重い処分へと進めていくのが原則です。中小企業では対応が遅れがちですが、問題がエスカレートしてからでは、かえって厳しい処分が取りにくくなります。
退職を検討する場面では、特に「指導に従わない」という点が重要になります。言動や勤務態度に問題があっても、注意指導を受け入れ、改善の姿勢を見せているのであれば、直ちに退職や解雇に進むべきではありません。一方で、明確な指導にもかかわらず反発を繰り返し、職場秩序を乱し続ける場合には、組織として限界を迎えていると判断されやすくなります。
解雇については、解雇予告や解雇予告手当を支払えば足りるという誤解が少なくありません。解雇には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要であり、この点を満たさなければ無効と判断されるリスクがあります。注意指導や懲戒処分の積み重ねが重要になるのは、このためです。
また、労働基準監督署への相談と、裁判での勝敗は別問題です。法令違反の有無と、民事紛争での評価は異なるため、最終的な判断を行う前には、会社側の立場で助言できる弁護士への相談が不可欠です。
言動が乱暴で勤務態度が悪く、指導に従わない社員への対応は、会社経営者にとって避けたいテーマかもしれません。しかし、周囲の社員を守り、職場秩序を維持することは、会社経営者の責任です。段階を踏んだ適切な対応を行うことで、会社を守り、健全な組織運営につなげていくことができます。
最終更新日2026/2/

