問題社員136 派手な化粧・露出度の高い服装で出社する
目次
動画解説
1. 派手な化粧・露出度の高い服装は問題になるのか|判断の出発点
派手な化粧や露出度の高い服装で出社する社員がいる場合、会社経営者としてまず考えるべきは、「それは法的に問題なのか」という点です。
結論から言えば、単に“派手である”“目立つ”という理由だけでは、直ちに違法・不当と評価できるわけではありません。服装や身だしなみは、一定程度、個人の自由の領域に属します。
しかし、だからといって無制限に認められるわけでもありません。
会社は事業を営む主体であり、業務の円滑な遂行や職場秩序の維持のために、合理的な範囲で服装・身だしなみのルールを定めることができます。問題となるのは、「業務との関連性」です。
例えば、顧客対応業務に従事している場合、極端に露出度が高い服装や過度に派手な化粧が顧客に不快感を与え、取引に支障が生じる可能性があるのであれば、経営上の問題として整理できます。
一方で、外部接触の少ない内勤業務であり、具体的な業務支障が発生していない場合には、単なる価値観の違いに過ぎない可能性もあります。
ここで会社経営者が陥りやすいのは、「自分の感覚」を基準にしてしまうことです。「自分は不快に感じる」「常識に反している」といった主観だけで指導を行うと、紛争リスクが高まります。
判断の出発点は、あくまで業務との関連性と合理性です。
- 業務に具体的な支障が出ているか
- 職場秩序を乱す客観的事情があるか
- 就業規則や服務規律に根拠があるか
これらを冷静に整理する必要があります。
また、企業の業種やブランドイメージも無視できません。高級感や信頼性を重視する業態であれば、身だしなみの統一感は経営上の重要事項となります。その場合、一定の基準を求める合理性は高まります。
重要なのは、「不快だから注意する」のではなく、「経営上必要だから是正を求める」という整理です。
派手な化粧や露出度の高い服装の問題は、感情で処理すると対立を生みます。会社経営者としては、法的合理性と経営合理性の両面から冷静に判断することが出発点になります。
2. 業務遂行への支障がある場合の法的評価
派手な化粧や露出度の高い服装が問題となるかどうかは、最終的には「業務に具体的な支障が生じているか」によって評価が分かれます。
例えば、顧客から複数回にわたり苦情が入っている、取引先から不信感を示されている、社内で明らかな混乱やトラブルが生じているといった事情があれば、それは単なる好みの問題ではなく、経営上の支障として整理できます。
この場合、会社経営者は、業務命令として一定の身だしなみ基準を求めることが可能です。企業には、事業運営上必要な範囲で服務規律を定める権限があるからです。
もっとも、ここで注意すべきは「必要最小限の制限」にとどめることです。過度に抽象的な基準や、合理性を欠く一律禁止は、後に紛争の火種となります。
例えば、「派手な化粧は禁止」という曖昧な表現ではなく、「顧客対応業務に従事する者は、過度な露出や極端な装飾を避け、清潔感と信頼感を損なわない服装とする」といった具体性と目的合理性が重要です。
また、男女で基準を不合理に分けることにも慎重でなければなりません。性別によって極端に異なる規制を設ければ、差別的取扱いと評価される可能性があります。
会社経営者として重要なのは、「会社として何を守りたいのか」を明確にすることです。顧客との信頼関係なのか、ブランドイメージなのか、職場秩序なのか。その目的を整理した上で、合理的な範囲に限定したルールを設ける必要があります。
さらに、業務支障がある場合であっても、いきなり懲戒に進むことは避けるべきです。まずは面談で具体的な問題点を伝え、改善を求めることが原則です。
感情的に「常識がない」と断じるのではなく、「この服装がこの業務にどのような影響を与えているか」を事実ベースで説明する。この姿勢が、法的リスクを抑えながら是正を図るための基本です。
業務遂行への具体的支障があるかどうか。それが、服装問題を経営課題として扱うための分水嶺になります。
3. 企業風土との適合性という経営判断
派手な化粧や露出度の高い服装が、直ちに業務上の具体的支障を生じさせていない場合でも、問題がまったく存在しないとは限りません。ここで会社経営者が向き合うべきなのが、「企業風土との適合性」という視点です。
企業には、それぞれ独自の文化や価値観があります。落ち着いた雰囲気を重視する企業、信頼感や堅実性を前面に出す企業、逆に自由闊達さや個性を尊重する企業もあります。
服装や身だしなみは、その企業文化を象徴する要素の一つです。
仮に業務に直接の支障が出ていなくても、企業の目指す方向性やブランドイメージと明らかに乖離している場合には、経営判断として是正を求める合理性が生じます。
ただし、この「企業風土」という概念は極めて曖昧です。会社経営者の個人的好みと混同してはなりません。
重要なのは、
- 会社としてどのような価値観を掲げているのか
- 対外的にどのような印象を持たれたいのか
- それが社内で共有されているか
という点です。
企業理念や行動指針に基づいた説明ができるのであれば、単なる主観ではなく、経営方針に基づく要請として整理できます。
一方で、明確な基準や理念がなく、「なんとなく気に入らない」というレベルで指導を行うと、説得力を欠きます。本人から「なぜ問題なのか」と問われたときに、合理的説明ができなければ、対立は深まります。
会社経営者としては、服装の問題を通じて、自社の文化や価値観を言語化する機会と捉えるべきです。
企業風土を理由に指導するのであれば、その風土が客観的に存在していることが前提です。曖昧な空気感ではなく、理念やルールとして明確化されているかが重要になります。
服装の問題は小さく見えて、実は企業の方向性を映し出す鏡です。会社経営者がどのような組織を作りたいのか。その意思が問われているのです。
4. 早期面談の重要性|我慢と爆発が最悪のパターン
派手な化粧や露出度の高い服装が気になる場合、会社経営者が最も避けるべきなのは「何も言わずに我慢し続ける」ことです。
実務上よくあるのは、最初は違和感を覚えながらも、「細かいことを言うと角が立つのではないか」「本人の自由だから」と考え、指摘を先送りにするケースです。しかし、違和感は消えません。時間が経つほど、感情が蓄積していきます。
そしてある日、別の問題をきっかけに不満が爆発します。
それまで何も言われていなかった本人にとっては、突然強い叱責を受ける形になり、「なぜ今さら」「どうして急にそんなに強く言うのか」という不信感を生みます。これが紛争の火種になります。
会社経営者として重要なのは、違和感を覚えた段階で、冷静に面談を行うことです。
面談の目的は、叱責ではありません。会社としての基準や考え方を共有することです。問題が小さいうちに伝えれば、感情的対立に発展する可能性は低くなります。
特に服装の問題は、人格や価値観に直結しやすいテーマです。放置した上で一気に強く出ると、「自分の生き方を否定された」と受け止められかねません。
会社経営者は、完璧なタイミングを待つ必要はありません。「少し気になる」と感じた段階で動くことが重要です。もちろん、感情が高ぶっている状態での面談は避けるべきですが、冷静に伝えられるタイミングを逃さないことが大切です。
我慢し続けるか、突然爆発するか。この二択が最悪です。
小さな違和感のうちに、冷静に、礼儀を尽くして伝える。それが、服装問題を大きなトラブルに発展させないための、会社経営者としての基本姿勢です。
5. 礼儀正しく率直に伝える実務ポイント
服装や化粧の問題を指摘する際、会社経営者が最も注意すべきなのは「伝え方」です。内容以上に、言い方を誤ることで関係性が悪化し、不要な紛争に発展することがあります。
まず大前提として、人格や価値観を否定しないことが重要です。
「常識がない」「社会人としてどうかと思う」といった表現は、感情的対立を招くだけでなく、ハラスメントと評価される危険もあります。あくまで問題は“服装が業務や企業風土に与える影響”であり、本人の人格ではありません。
伝える際には、主観ではなく事実を基礎にします。
例えば、「顧客から違和感を指摘する声があった」「社内で戸惑いが出ている」「当社は信頼感を重視している」といった具体的事情を示し、その上で会社としての基準を説明します。
重要なのは、「あなたが悪い」という構図にしないことです。
「当社としてはこのような基準を大切にしている」「この業務においてはこの程度の身だしなみが必要だと考えている」という形で、会社の立場として整理します。
また、一方的に通告するのではなく、本人の意図や考えを聞く姿勢も大切です。本人なりの理由や背景がある場合もあります。事情を把握せずに結論だけを押し付けると、反発を招きやすくなります。
さらに、改善を求める場合には、具体的にどの点をどう変えてほしいのかを明確にします。「もう少し控えめに」という曖昧な表現ではなく、「露出の高い服装は避けてほしい」「業務中はナチュラルメイクにしてほしい」といった具体性が必要です。
会社経営者としての姿勢は、「威圧」ではなく「説明」です。
冷静で礼儀正しい態度を保ちながらも、伝えるべきことは率直に伝える。このバランスが取れていれば、不要な対立を避けつつ是正を図ることができます。
服装の問題は感情的になりやすいテーマです。しかし、冷静に、事実と経営方針に基づいて伝えれば、十分に解決可能な問題です。
会社経営者の言葉は重みを持ちます。その重みを、威圧ではなく説得に使うことが、実務上の重要なポイントです。
6. 本人の言い分を聞く意義と仕事との関連性の確認
服装や化粧の問題について是正を求める場合であっても、会社経営者として一方的に結論を押し付けることは得策ではありません。必ず、本人の言い分を聞く機会を設けるべきです。
なぜその服装を選んでいるのか。どのような意図や考えがあるのか。場合によっては、業務上の理由や自己表現としての強い意味づけがあることもあります。
例えば、営業職で「印象に残ること」を戦略として考えている場合や、特定の業界慣習に基づいている場合もあります。本人の説明を聞かずに否定すれば、「理解されない」という不満が蓄積します。
また、本人の主張が合理的である場合もあります。会社側が漠然と「合わない」と感じているだけで、実際には顧客層や業界特性と整合しているケースもあり得ます。
ここで重要なのは、「仕事との関連性」に立ち返ることです。
その服装が業務遂行にどのような影響を与えているのか、顧客との信頼関係にどのような作用を及ぼしているのか、企業のブランドや風土とどの程度乖離しているのか、これらを具体的に検討することが、経営判断として不可欠です。
本人の意見を聞くことは、単なる形式ではありません。後に厳重注意や懲戒を検討する場合でも、「弁明の機会を与えた」という事実は極めて重要です。
感情的な対立を避け、法的リスクを抑え、納得感を高めるためにも、対話のプロセスは省略できません。
会社経営者は、最終的な判断者です。しかし、判断の前提となる情報を十分に収集しなければ、合理的な結論には到達できません。
服装の問題は主観が入りやすいテーマだからこそ、まずは丁寧に聞く。その姿勢が、冷静で説得力のある経営判断につながります。
7. 改善が見られない場合の厳重注意書の活用
面談を行い、会社としての基準を説明し、改善を求めたにもかかわらず、服装や化粧の問題が是正されない場合には、次の段階として厳重注意書の交付を検討することになります。
もっとも、ここで重要なのは「いきなり処分に進まない」ことです。
厳重注意書は、制裁そのものではなく、最終警告としての意味合いを持たせるべきです。これまでどのような指導を行い、何が問題であり、どの点をどのように改善してほしいのかを、具体的に明記します。
抽象的に「服装が不適切」と書くだけでは不十分です。
どのような服装が問題とされているのか、業務にどのような影響が生じているのか、会社として求める基準は何か、これらを明確に記載する必要があります。
また、感情的な表現や価値判断を含めてはいけません。「常識を欠く」「社会人失格」といった文言は、紛争時に会社側の不利な材料となる可能性があります。
厳重注意書は、あくまで業務運営上の必要性に基づく指導であることを明確にする文書です。
さらに重要なのは、厳重注意書を交付する前に、本人に弁明の機会を与えることです。すでに面談を行っていても、書面化する段階では改めて意見を確認する姿勢が望ましいといえます。
会社経営者として意識すべきなのは、「争われた場合に説明できるか」という視点です。これまでの指導経緯と書面内容が整合しているか、段階的対応を踏んでいるかが問われます。
厳重注意書を交付したにもかかわらず改善が見られない場合には、懲戒処分の検討に進む可能性もあります。しかし、その前提として、厳重注意というワンクッションを置くことは、法的リスクを抑える上でも重要です。
服装の問題は軽微に見えますが、対応を誤れば「思想・表現の自由を侵害された」といった主張に発展することもあります。
だからこそ、冷静に、段階を踏んで、記録を残しながら進めることが必要です。
厳重注意書は感情の発露ではなく、経営判断の文書化です。その位置付けを誤らないことが、次の局面への備えとなります。
8. 懲戒処分・解雇の可否と「客観的合理的理由」
厳重注意書を交付しても改善が見られない場合、会社経営者としては懲戒処分や、場合によっては解雇の可否を検討する局面に入ります。しかし、ここは最も慎重さが求められる段階です。
まず前提として、服装や化粧の問題のみで直ちに重い懲戒処分や解雇が有効と認められるケースは多くありません。
懲戒処分が有効と評価されるためには、
- 就業規則上の根拠があること
- 問題行為が規律違反に該当すること
- 処分の重さが相当であること
が必要になります。
単に「会社の雰囲気に合わない」という理由だけでは足りません。業務上の合理的必要性と結びついていることが不可欠です。
例えば、顧客からの苦情が繰り返されている、服務規律に明確に違反している、厳重注意後も明確な業務命令に従わない、といった事情があれば、一定の懲戒処分が検討対象になります。
それでも、いきなり重い処分に進むことは危険です。戒告、譴責、減給といった段階的対応を踏まずに解雇へ進めば、「処分が過重である」と判断されるリスクが高まります。
解雇となれば、さらにハードルは上がります。
解雇が有効と評価されるためには、「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。服装問題が業務運営に重大な支障を与えているかどうかが、中心的な判断材料となります。
実務上、服装のみを理由とする解雇が認められる場面は限定的です。むしろ問題は、服装に関する明確な業務命令に繰り返し違反しているという「指示不遵守」の側面にあります。
会社経営者としては、「不快だから辞めてもらう」という発想は完全に排除しなければなりません。
あくまで、
- 業務上の合理性
- 明確な基準の存在
- 段階的な是正措置
- 弁明機会の付与
といった手順を踏んだかどうかが問われます。
服装の問題は感情的になりやすいテーマですが、処分段階に入れば、感情は一切通用しません。
懲戒や解雇は、最終手段です。そこに至るまでに、どれだけ丁寧なプロセスを積み重ねたかが、結果を左右します。
会社経営者としては、「処分できるか」ではなく、「争われた場合に耐えられるか」という視点で判断することが不可欠です。
9. 自社判断の危険性と外部専門家活用の必要性
服装や化粧の問題は、一見すると小さなトラブルに見えます。しかし、対応を誤れば「人格否定」「差別的取扱い」「不当な懲戒」といった主張に発展する可能性があります。
特に会社経営者が陥りやすいのは、「これくらい当然だろう」という自社基準だけで判断してしまうことです。
業界の慣習、自社の文化、顧客層との関係性などを踏まえているつもりでも、それが法的に合理的と評価されるかどうかは別問題です。自社では常識でも、外部から見れば過度な制限と受け取られることもあります。
また、服装や身だしなみは、性別や価値観と密接に関連します。そのため、わずかな表現の違いが「差別」と主張されることもあります。特に男女で異なる基準を設ける場合には、慎重な整理が不可欠です。
第三者の視点を入れることで、感情的な判断を防ぎ、文書表現の適切性や処分の相当性を事前に確認できます。結果として、紛争リスクを大幅に下げることが可能になります。
特に注意すべきなのは、「小さな問題だから大丈夫だろう」と軽視することです。服装問題が、SNS拡散や内部通報をきっかけに、予想外の大きなトラブルに発展する例も存在します。
会社経営者は、最終責任者です。だからこそ、判断を独りで抱え込まず、必要に応じて専門家の意見を取り入れる姿勢が重要になります。
自社判断はスピード感がある一方で、視野が狭くなりがちです。冷静な外部視点を取り入れることは、経営の弱さではなく、むしろ合理的なリスク管理です。
服装の問題は感情論に流されやすいテーマだからこそ、客観性を確保する仕組みを持つことが、会社経営者に求められる実務対応といえます。
10. 最終的に問われるのは会社経営者の職場観
派手な化粧や露出度の高い服装の問題は、最終的には「どのような職場を作りたいのか」という問いに行き着きます。
自由を尊重する職場を目指すのか、統一感を重視するのか。個性を前面に出す文化なのか、信頼感や安定感を優先するのか。その方向性を決めるのは、会社経営者です。
重要なのは、感情やその場の空気で判断しないことです。
ある社員の服装が気に入らないという個人的感覚と、会社としての基準は切り分けなければなりません。基準を作るのであれば、それは一貫性があり、全社員に適用されるものである必要があります。
また、厳しく規制すれば規律は保たれるかもしれませんが、自由度は下がります。逆に自由を広く認めれば、多様性は高まりますが、統一感は薄れます。どちらを選ぶかは、経営戦略と企業理念に関わる問題です。
服装問題は、会社の価値観を明文化する機会でもあります。どのような身だしなみを求めるのか、その理由は何か。それを言語化し、共有することで、不要な摩擦を減らすことができます。
最終的に問われるのは、「会社として何を大切にするのか」という経営判断です。
服装の問題は小さく見えますが、その対応には会社経営者の哲学が表れます。自由と規律のバランスをどう取るのか。組織としてどの方向に進むのか。
その軸が定まっていれば、個別の問題に振り回されることはありません。
会社経営者として、自社の職場観を明確に持ち、その基準に基づいて一貫した判断を行うこと。それが、服装トラブルを最小限に抑え、安定した組織運営を実現するための本質的な対応なのです。
最終更新日2026/2/21

