営業社員への歩合給、タクシードライバーの出来高給、製造現場の請負制賃金など、「成果に応じた賃金制度」を採用している会社では、残業代(割増賃金)の計算方法が月給制とは異なります。制度の性質を正確に理解せずに運用すると、多額の未払い残業代請求を受けるリスクがあります。

 本記事では、労基法施行規則19条1項6号に規定される「出来高払制その他請負制によって定められた賃金」の定義と、割増賃金との関係を使用者側専門の弁護士が解説します。

01「出来高払制その他請負制によって定められた賃金」の定義

 労基法施行規則19条1項6号における「出来高払制その他請負制によって定められた賃金」とは、労働時間ではなく、労働者が実際に行った労働給付の結果や仕事の成果に応じて額が決まる賃金を指します。

 具体的には、以下のような賃金制度がこれに該当します。

・出来高払制(歩合給制):製造した物の量・価格、締結した契約件数・契約高・売上額など、一定の成果指標に応じた比率で額が決まる賃金。営業社員の歩合給やタクシードライバーの出来高給が典型例です。

・請負制賃金:特定の仕事の完成に対して支払われる賃金。建設現場の一人親方的な働き方の賃金などが例として挙げられますが、労働者性が認められる場合は労基法の適用を受けます。

02出来高払制に該当しない賃金形態との区別

 出来高払制との混同が生じやすい賃金形態として、年俸制があります。年俸制は、年間の労働を目標達成度等で評価して翌年度の支給額を決定する制度ですが、これは「成果に応じた賃金」ではなく「事前に確定した年額賃金を分割して支払う制度」です。そのため、年俸制は出来高払制には該当しません。

 また、業績連動型の賞与も、支給額の決定が事後的な評価によるものではあっても、毎月の賃金計算期間ごとに額が決まるわけではないため、通常は出来高払制には該当しないと解されています。

 出来高払制に該当するか否かによって割増賃金の計算方法が異なるため、自社の賃金形態がどちらに当たるかを正確に把握しておくことが重要です。

03出来高払制における割増賃金の計算方法

 出来高払制の場合、割増賃金の基礎となる時間単価は「当該賃金計算期間の賃金総額÷当該賃金計算期間の総労働時間数」で算出します。

 時間外・休日労働に対する割増賃金の追加支払は、通常の労働時間分がすでに賃金総額に含まれているとみなされるため、割増部分(0.25倍・0.35倍)のみの追加支払で足ります。これは月給制(1.25倍・1.35倍)との大きな違いです。

 深夜労働については出来高払制でも0.25倍の追加支払が必要です。具体的な計算例と注意点については、出来高払制の割増賃金計算方法のページで詳しく解説しています。

04出来高払制導入時に会社が注意すべきポイント

 出来高払制(歩合給制)を採用する際、会社側として特に注意すべき点は以下の通りです。

 まず、出来高払制であっても残業代の支払義務が免除されるわけではありません。毎月の賃金計算期間における賃金総額と総労働時間を正確に把握し、割増部分を追加支払する体制を整えることが必要です。

 次に、月給制と出来高払制を組み合わせた賃金体系(例:基本給+歩合給)を採用している場合は、それぞれの部分について別々に割増賃金を計算し合算する必要があります。計算の複雑さが増すため、給与規程への明記と正確な勤怠管理が不可欠です。

 また、勤務の実態が「出来高払制」でありながら「業務委託契約」として処理しているケースでは、労働者性を争われた場合に遡及して多額の残業代を請求されるリスクがあります。契約形態と実態の乖離には十分な注意が必要です。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

05よくある質問

Q1. 営業社員の歩合給は出来高払制に該当しますか?
A. はい、契約件数・契約高・売上額に応じて額が決まる歩合給は、出来高払制の典型例です。この場合、残業代の計算には労基法施行規則19条1項6号が適用され、基礎賃金は「月の歩合給総額÷月の総労働時間数」で算出します。

Q2. 基本給+歩合給の場合、残業代の計算はどうなりますか?
A. 基本給部分は月給制の計算方法(月給÷月の所定労働時間数)で、歩合給部分は出来高払制の計算方法(歩合給総額÷総労働時間数)でそれぞれ時間単価を算出し、合算した金額に割増率を掛けて残業代を計算します。

Q3. 年俸制は出来高払制に当たらないとのことですが、残業代の計算はどうなりますか?
A. 年俸制は月給制と同様に扱われ、年俸額を年間所定労働時間数で除した金額が基礎賃金となります。時間外労働には1.25倍(月60時間超は1.50倍)、休日労働には1.35倍の割増賃金の支払が必要です。

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最終更新日:2026年5月10日